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教員らの性暴力から子どもを守るために必要なこと 専門家2人に聞く

47NEWS / 2021年9月13日 7時0分

インタビューに答える慶応大教授の佐久間亜紀さん

 学校の教職員らによる性暴力から子どもを守るにはどうすればいいのか。わいせつ行為をした教員を再び教壇に立たせないようにできる新法が5月に成立するなど議論が活発化している。保育士やスポーツクラブ指導者ら子どもに関わる職業全般に規制対象を広げようとする動きもある。子どもが安心して過ごせる場所をどう確保するのか。教育と加害者臨床の専門家それぞれに聞いた。(共同通信=三浦ともみ)

 ▽被害防ぐ土台作りを/佐久間亜紀・慶応大教授(教育学)

 ―わいせつ教員対策の新法が成立しました。評価できる点を教えてください。

 教員による子どもへの性暴力を重大な問題と捉え、「児童生徒の権利を著しく害する」と明記したことは評価できます。ただ、加害者側を規制するだけでは不十分で、子どもへの教育が必須だと考えています。

 新法はこの点について、教員による性暴力が許されないことを児童生徒に周知徹底すると規定しています。「されてはいけないこと」を教えることはとても大切ですが、注意も必要です。(教員が)「加害者」になり得るという側面だけを伝えると、大人への不信感が強まり、子どもが困った時や苦しんだ時にSOSを出せなくなる恐れがあります。

 ―では、どんな教え方が良いのでしょうか。

 まずは子どもが「私の心と体は大切なもの」と思えることが重要です。そのためには発達段階に応じた性教育が求められます。妊娠や出産といった体の仕組みだけでなく、諸外国のように、ジェンダーや性の多様性なども含め、性に関する内容を包括的に学ぶのが望ましいでしょう。

 ―日本の学校の性教育を巡る現状はどうですか。

 教育現場では、約20年にわたって性教育がタブー視されてきました。2003年に東京都立七生養護学校(現・七生特別支援学校)の授業が、政治家に「過激」「わいせつ」などと批判され、知的障害の子どもの性被害をなくそうと熱心に取り組んでいた教員が処分されたからです。

 後に最高裁で取り消されたものの、現場で性を扱うことが敬遠され、性教育の萎縮につながりました。学習指導要領の内容を充実させるなど、教員が安心して教えられる枠組みが必要だと考えています。

 ―子ども時代に十分な性教育を受けられないまま教員になった世代もいます。

 性の知識が不十分な教員は多いです。研修などで取り組んでほしいのですが、業務量の増大と人手不足による多忙化で疲弊しているのが現実。教員自身が学ぶ時間を確保するため、労働環境の改善は急務です。

 子どもが安心して過ごせる学校を作るのは教員の大切な役目です。被害をなくすためには、土台作りから進めなくてはいけません。

   ×   ×

 さくま・あき 1968年生まれ。専門は教育学。東京学芸大准教授などを経て現職。慶応大教職課程センター所属。

 

 ▽接触絶つのが大原則/ソーシャルワーカーの斉藤章佳さん


インタビューに答えるソーシャルワーカーの斉藤章佳さん

 ―これまで、子どもに性加害した教員に接してきましたね。

 加害者臨床の専門家として、子どもへの性的加害を繰り返す「小児性愛障害」と診断された150人以上に関わってきました。加害者の特徴はさまざまですが、教員に絞って分析すると「良い先生」だった例が目立ちます。

 児童生徒や保護者から人気があり、同僚の評価も高い。過去に大きく報道されたある事件では、被害者の同級生の母親から「とても優秀な先生だった。何かの間違いでは」と相談されたことがあります。ただ、そうだからこそ、被害を受けた子どもは「誰も信じてくれないだろう」と考え、訴えるのをあきらめてしまいます。

 ―学校という環境だからこそ実態が見えづらくなるということでしょうか。

 加害者側は教員という絶対的に優位な立場を利用し、子どもに巧妙に口止めしたり、手なずけてコントロールしたりします。また、放課後の教室などは児童生徒と1対1になることができ、死角が多いことも被害を生みやすい要因です。

 こうしたことが絡み合い、被害者が複数になった事件もありました。文部科学省や教育委員会は「学校は性暴力が起きやすい」という前提で対策を進めるべきです。

 ―子どもに対する性加害者への対処について、政府や超党派の議連などでも議論が始まっています。

 常習性や衝動性の高い加害者もいます。子どもとの接触が「引き金」となるため、再発防止には接触を絶つことが大原則です。わいせつ教員対策の新法は、わいせつ行為で懲戒免職となった教員の免許再取得を制限していますが、これだけでは不十分。保育士や塾講師といった、子どもに関わる職業全般について、性犯罪歴照会制度の創設などの規制を強化すべきです。

 一方で、加害者を社会全体から排除するのは行き過ぎです。子どもからは遠ざけますが、加害者自身が行動を変えるために専門的な治療を受け、弱さを共有できる場所をつくることが必要です。更生のための受け皿の整備を同時に検討してほしいです。

   ×   ×

 さいとう・あきよし 1979年生まれ。精神保健福祉士、社会福祉士。大船榎本クリニック精神保健福祉部長。

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