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国民民主党は「遠心力」演出をやめて 衆院選まで時間はもうない、すぐにかじを切れ

47NEWS / 2021年9月24日 7時0分

長崎市で街頭演説する国民民主党の玉木雄一郎代表=7月22日

 自民党総裁選ばかりに関心が集まっている永田町。その一方野党は、間近に迫った次期衆院選に向け、地味ながらも足場を固めつつある。立憲民主党など野党4党は9月8日、野党共闘を呼び掛けている団体「市民連合」との間で、衆院選に向けた共通政策に合意した。メディアは「自民党総裁選に埋没」などとやゆしているが、衆院選が近づく中、バランスを取る必要性が出てきたのだろう。総裁選報道に合わせ、立憲民主党が個別に発表している基本政策がセットで取り上げられるなど、野党の露出は確実に増えている。何だかんだ言っても、政界もマスコミも総裁選を控え、徐々に「選挙モード」に入りつつある、と言っていい。

 そんな野党全体に対する筆者の懸念は、実は「埋没」ではない。選挙間近の今もなお、国民民主党が野党共闘から距離を置く姿勢を、積極的に言い続けていることである。

 野党各党が、違いを脇に置き、最大公約数を見つけて一つの「構え」を作りながら、巨大与党に立ち向かおうしている。筆者はそれを支持している。国民民主党の態度は、あえて言えば、少々大人げない。野党の一角として自公政権と戦う姿勢に、今もウソがないと言うなら、もう腹を決めて、「遠心力の演出」ではなく「求心力の創出」にかじを切るべきだ。(ジャーナリスト=尾中香尚里)


次期衆院選に向けた事実上の共通政策に合意し、ポーズをとる(左から)社民党の福島党首、共産党の志位委員長、立憲民主党の枝野代表、れいわ新選組の山本代表=9月8日、国会

 ▽足並みの乱れを「演出」

 「われわれは非現実的な訴えではなく、現実的な政策で政治を変えたい」。政策合意が行われた同じ8日、国民民主党の榛葉賀津也幹事長は記者会見でこう語った。「非現実的」というネガティブな言葉をあえて使い、野党4党の政策合意に批判的なスタンスを強調したのだ。

 政策がどうしても違うなら、無理に政策合意に加わる必要はない。「わが党は参加しない」と表明し、一方で候補者調整など、協力できるところで協力すればいいのではないか。

 それなのにわざわざ、野党間の「足並みの乱れ」を、自ら演出する意味が分からない。国民民主党のこうした言動は、野党全体の士気を少なからず削いでいる。そして、同党自身の政党支持率は1%前後に低迷しており、支持を増やすことには、全くつながっていない。

 つまりこれらの言動は、政治的にほとんどプラスの意味を持たないのである。なぜ国民民主党は「自分たちは野党共闘とは違う」ことを、必要以上に強調し続けるのか。これは、衆院選の構図に関わる問題だけに、踏まえておく必要があると考える。

 ▽路線対立から二つの政党に

 筆者は、国民民主党が「政権選択選挙の準決勝に敗れた」ことを、未だに受け入れられないためだと考えている。4年前の前回衆院選を振り返ってみたい。小池百合子東京都知事に振り回された「希望の党」騒動で、それまでの野党第1党・民進党は崩壊した。紆余曲折を経て、立憲民主党と国民民主党という小さな二つの野党が誕生し、野党内の主導権争いを演じることになった。

 二つの政党は、民進党、そしてその前身の民主党内にあった「野党が取るべき路線の違い」をそのまま体現していた。ざっくり言えば、立憲民主党が「共産党までを包含し、自公政権と理念や目指す社会像の対立軸を構築する」、国民民主党が「非自民・非共産の改革中道政党として、自公政権と個別政策の良しあしを競う」とまとめてもいいかもしれない。

 2012年に民主党が下野した後、野党は結局、このいずれの路線を取るべきかで争い続けてきた。

 永田町で長く取材していた立場から言えば、後者の方が正直、強かった。民進党として最後となった2017年9月の民進党代表選では、枝野幸男氏が前者、前原誠司氏が後者を代表する形で戦い前原氏が勝利している。国会議員票は前原氏が166ポイント、枝野氏102ポイントで、国政選挙の内定者票は前原氏84ポイント、枝野氏42ポイント。地方議員票は前原氏115ポイント、枝野氏94ポイント。党員・サポーター票は前原氏137ポイント、枝野氏94ポイントだった。


民進党の代表選を終え登壇した(左から)蓮舫前代表、前原誠司新代表、枝野幸男氏=2017年9月1日、東京都内

 両候補に、前述の路線を代表する意識があったかははっきり分からないが、応援団の顔ぶれを見れば争点は間違いなくここにあった。

 その直後「希望の党」騒動が勃発した。前原氏ら民進党の大半の議員が合流した希望の党が「非自民・非共産」路線、希望の党から「排除」された枝野氏が結党した立憲民主党が「共産党まで包含した野党共闘」の立場で選挙を戦うことになった。選挙でこうした路線が明確に提示されたとは言いがたい面もあるが、共産党が希望の党の候補者がいる選挙区に積極的に対立候補を擁立する一方、立憲民主党の候補者がいる選挙区で自主的に候補者を取り下げたことが、こうした路線対立の存在を改めてうかがわせた。選挙結果は立憲民主党が野党第1党となった。民進党代表選とは逆の結果が出たのである。希望の党は、いろいろあったが、最後は国民民主党となった。

 ▽主導権争いはすでに決着

 民進党代表選からひとまとめで考えれば、党所属議員や党員らの間では後者、つまり「非自民・非共産」が多数を占めたが、衆院選で「民意」が注入された結果、前者の「目指す社会像の対立軸を構築」の方が支持されたことになる。

 1回だけならたまたまそういう結果になったとも言えるが、その後2019年の統一地方選と参院選で、立憲民主党が徐々に議席を伸ばす一方、国民民主党は伸び悩んだ。翌20年の東京都知事選では、立憲民主党と共産、社民の両党が推薦した宇都宮健児氏が、当選した小池百合子氏に次ぐ2位につける一方、国民民主党は、支援する候補すら決められず、自主投票となった。

 そして20年9月、国民民主党の所属議員の大半が立憲民主党に合流し、新たな「立憲民主党」が結党した。結党時の参加議員は衆参合わせて150人だった。現在の国民民主党は、玉木雄一郎代表ら党の独自性を重視する議員15人が、合流組とたもとを分かつ形で、新たに結党した政党だ。


立憲民主党との合流を巡り、国民民主党の臨時執行役員会で「分党」を行う方針を決め、記者会見する玉木雄一郎代表=2020年8月11日午後、東京・永田町

 ここに、次期衆院選で政権奪取に挑む「野党の顔」が、立憲民主党の枝野代表となることが明確になった。前述した「準決勝」とは、ここまでの野党の長い主導権争いを指す。

 選挙という「民意」の積み重ねによって、両党の主導権争いは、事実上決着がついたと、筆者は考える。

 ▽共産党とのつきあいに時代の変化

 単に、議員数で大きな差がついたという話だけではない。国民民主党はことあるごとに「共産党と組むと保守票が逃げる」「日本維新の会も含めた大きな野党の塊を作るべきだ」と繰り返してきた。しかし、立憲民主党を中核とした野党の共闘態勢ができるようになって以降、ここ1年は主要な与野党対決の選挙では、野党が勝利するケースが続出している。

 最も分かりやすいのが8月の横浜市長選だろう。立憲民主党が推薦した山中竹春氏を、共産党や社民党が支援して事実上の野党統一候補として戦い、勝利した選挙だ。連合神奈川も山中氏を推薦したが、国民民主党はこの選挙でも自主投票だった。


2020年6月、記者会見する横浜港運協会の藤木幸夫会長(当時)=横浜市

 この選挙で話題となったのが、菅義偉首相や、その側近で山中氏の対立候補であった小此木八郎氏と極めて近かった横浜経済界の重鎮・藤木幸夫氏が山中氏の支援に回ったことだ。統合型リゾート(IR)誘致をめぐる地域事情があったとは言え、藤木氏と共産党が同じ候補を支援する構図は、新聞社時代に神奈川県内で勤務した経験がある筆者にとっては、驚き以外の何ものでもなかった。

 横浜市長選の結果は、自民党と結びつきの強い存在であっても「勝てる可能性」が強まれば、共産党の推す候補を支援することがあり得ると、強烈に世に知らしめた。かつては「保守票が逃げた」ことがあったかもしれないが、構図次第では横浜市長選のようなことが起こり得る。時代は変わってきたのだ。

 ▽「切り捨てる」から「持ち寄る」へ

 国民民主党が右でも左でもない、いわゆる「中道」層の支持を得るために力を尽くすことは、確かに必要だろう。だが、そのために「『非』共産」といった、何かを否定するような姿勢を強調するのはいかがなものだろうか。

 何かを切り捨てることで支持を得ようとするやり方は、もう古いと思う。例えば政権交代という一つの目標のために、それぞれが自身の力を「持ち寄る」形の方が、はるかに前向きなメッセージとして有権者に伝わるはずだ。そもそも結党当時、立憲民主党以上に「野党の大きな塊」を志向し、高らかに掲げていたのは、国民民主党ではなかったか。

 もちろん、当時も共産党のことは考慮されていなかっただろう。筆者もさすがに共産党と一つの「塊」になることなど求めない。しかし、別々の政党として違いを認めた上で、つかず離れずのまま、大きな野党の「構え」を作って衆院選に臨むことが、国民民主党にとって損になるとも思えない。


記者会見で新ポスターを発表した国民民主党の玉木雄一郎代表=9月15日、国会

 「切り捨てる」から「持ち寄る」へ。玉木氏ら国民民主党執行部には、結党時の初心に返り、改めて政権奪取に向けた戦略を練り直すことを求めたい。野党の「仲間」をくさすのではなく、前向きの言葉を発してほしい。衆院選までもう時間はないのだから。

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