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悲惨な飲酒事故を防ぐためには 呼気のアルコール検知しエンジンロック

47NEWS / 2021年10月14日 7時0分

アルコール・インターロックを使って呼気検査する運転手(福岡倉庫提供)

 飲酒運転による悲しい事故はもう繰り返してほしくない、どうしたらゼロにできるだろうか―。そんな問題意識から取材を始めたところ、運転手の呼気からアルコールを検出すると車のエンジンがかからなくなる装置「アルコール・インターロック」の存在を知った。普及は欧米諸国が先行し、国内でも導入する事業者が出ている。飲酒した運転手が大型トラックで児童5人をはねた千葉県八街市の死傷事故など後を絶たない交通犯罪を受け、普及に向けた国の動きも活発化している。(共同通信=永井なずな)

 ▽「当たり前という感覚に」

 福岡市の運送会社「福岡倉庫」は2014年、同社のトラックに装置を導入した。きっかけは、協力会社の乗務員が業務中に飲酒した不祥事だった。同社の北島龍也取締役陸運部長は「飲酒事故を一度でも起こせば社会的な信頼が一気に崩れてしまう。そうなれば真面目に乗務する社員の生活も守れなくなるという危機感からだった」と振り返る。

 エンジンをかけるには検査に毎回1~2分が必要で、他社車両に比べ発進が遅くなる点など当初は社員に戸惑いもあったが、「使い続けるうち、これが当たり前という感覚が社員に浸透していった」(北島さん)。現在は福岡事業所で使用する全てのトラックに装置を搭載。飲酒運転を絶対しないという強いアピールになり、顧客の信頼につながっている実感もあるという。

 アルコール・インターロックは、運転手が吹き込んだ呼気からアルコール濃度を計測し、設定した値を超えた場合にはエンジンを始動できなくする装置だ。国土交通省によると、米国や英国、カナダやフィンランドなどが、飲酒運転の違反者に対して搭載を義務付けたり、免許停止処分を受けた人に装置付きの車に限り運転を認めたりしている。同省の担当者は「全車両への設置義務付けは費用面のハードルが高く、違反者への導入が現実的な選択肢となるだろう。海外事例を参考に、国内の普及に向けた検討を進めたい」と話す。

 ▽1台15万円

 アルコール検知機器類を製造する「東海電子」(静岡県富士市)は2009年に「アルコール・インターロック」を発売した。顧客の大半は運送会社だが、アルコール依存症の家族のために購入する個人客もいるという。価格は1台15万円程度で、約2700台をこれまで販売してきた。八街市の事故後は問い合わせが増加しているという。同社の杉本哲也社長は「費用はかかっても、『命を守れるなら必要な出費』という意識が少しずつではあるが広がりつつある」と受け止める。


「アルコール・インターロック」を搭載したトラックの運転席(福岡倉庫提供)

 災害時や救急車両が通る際など車を緊急に動かす状況を想定し、ロックを解除できる非常用スイッチも設置。エンジン始動後の飲酒や「替え玉」検査といった抜け道を防ぐため、運転手を不定期に撮影するカメラ付きの機器も開発した。杉本さんは「飲酒事故のニュースを聞くたびつらい気持ちになる。情報発信や機器の改良といったメーカーの立場からできることを続けたい」と語る。

 ▽「ばれなければ…」

 八街市の事故では、下校中の児童の列にトラックが衝突。飲酒運転したとして運転手の梅沢洋被告(60)が逮捕され、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)罪で起訴された。被告の呼気からは基準値を超えるアルコールが検出され、トラックの車内からは当日に飲んだとみられる焼酎の空き容器も見つかった。


初公判に臨む梅沢洋被告(イラスト・勝山展年)

 10月6日、千葉地裁で開かれた初公判で梅沢被告は起訴内容を認めた。公判で検察側は「4~5年前から(被告に)会うと酒の臭いがしていたが深酒かと思っていた」とする運送会社の取引先関係者の証言を引用。「酒の臭いがするが大丈夫か」と梅沢被告の勤務先に相談していたことも明らかにした。飲酒運転の常習性や、やめさせるきっかけが見過ごされた疑いが浮かび上がった。

 記者は警察担当として事故発生時から取材してきた。何の落ち度もないのに突然未来を絶たれた幼い命、心身共に大けがを負った子どもたちの将来、成長を見守ってきた保護者や学校の先生達の無念さ―。被害者やその家族、関係者の方々の心境を想像すると、取材する記者として冷静さを保てなかった。悲惨な事故をこれ以上起こさないために、飲酒運転をできなくする社会の仕組みが必要だと痛切に感じる。


飲酒運転の大型トラックが突っ込み、児童5人が死傷した事故現場付近。道路脇にはガードパイプが設置された=千葉県八街市

 飲酒運転の検問経験がある警察官は「ばれなければよいと思ってやっている常習者はまだ多い。摘発されても『運が悪かった』と反省の色が見えない人もいる」と打ち明ける。事故の捜査に関わった千葉県警の幹部は「厳罰化や取り締まりだけでは、違反をなくせない現状が悔しい。飲酒運転の撲滅をスローガンで終わらせないためにも、確実に効果の出る機器が広まってほしい」と話した。

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