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“自公対決”騒ぎ、背景に「無効率15%」の衝撃 公明「聖域」に激震、維新も主戦論浮上

47NEWS / 2021年10月17日 10時0分

投票箱に投じられる有権者の一票

 「自公の協力で進めているところに、さまざまな影響が出かねないと思います」。10月7日、公明党の山口那津男代表は記者会見で、言葉を選びつつ、だがはっきりとした声で不快感を示した。当選9回を重ねる同党のベテラン、佐藤茂樹衆院議員の地元大阪3区(大阪市南部)に、自民党大阪府連所属の柳本顕元市議が無所属で出馬する意向を表明したからだ。

 “与党対決”となれば関係悪化は必至。自民党本部が調整に乗り出し、柳本氏は比例代表近畿ブロックから出馬する形で決着したが、異例の事態に両党には激震が走った。さらに、これまで公明に配慮して候補者擁立を見送ってきた日本維新の会にも主戦論がくすぶり始めた。公明が議席を守り抜いてきた「聖域」で一体何が起きているのか。(共同通信=山本大樹、大野雅仁)


自民党大阪府連所属の柳本顕元大阪市議

 ▽「応援したい候補いない」と無効票続出

 自公両党はお互いの候補者が競合しないよう、長年、衆院選の小選挙区ではすみ分けを図ってきた。31日投開票の衆院選で自民は全国289選挙区のうち約280選挙区に候補者を立てる。公明が擁立するのは自民と重ならない9選挙区。そのうちの四つが大阪の3、5、6、16区だ。自民はこれらの選挙区を譲るかわりに、自前の候補が出馬する選挙区では、公明からその支持母体・創価学会の組織力をフル活用した支援を受けてきた。

 なぜ柳本氏は大阪3区で名乗りを上げたのか。理由の一つは公明が議席を持つ選挙区の「無効率」の高さにある。

 無効率はその選挙区の投票総数のうち、立候補者以外の氏名が記載された票や白票など、「無効」と判断される票の割合を指す。公明の候補者が出馬する選挙区では、自民が擁立を見送るため、有権者の選択肢は狭まる。公明と野党候補の一騎打ちになることもあり、保守層の中には「応援したい候補者がいない」という人も多い。結果的に白票などが増え、無効率が高くなるというわけだ。

 中でも大阪3区は特に無効率が高い。過去の選挙を振り返ると、2017年の衆院選は10.2%、14年は15.3%、12年は10.8%。無効率の全国平均が2~3%であることを考えると突出した数字だ。投票者数でみると、毎回2万人前後の票が「無効」扱いとなっている。

 柳本氏はこれまで、3区の自民支持層では独自候補の擁立を求める声が5割を占めると主張し「有権者の受け皿がない。不満が渦巻いている」と訴えてきた。今回、自身が立候補すれば、無効票を投じてきた有権者に選択肢を示すことができるというのが大義名分だった。

 ▽都構想で方針転換、自民に恨み節

 柳本氏の思いとは別の事情で、大阪府連にも公明に対する不満が鬱積(うっせき)していた。それは「大阪都構想」を巡る公明府本部との関係悪化だ。

 人口280万の大阪市を廃止し複数の特別区に再編する都構想は、大阪で広く支持を集める維新の看板政策であり、設立以来の悲願だった。

 15年5月、大阪市民を対象に実施された1度目の住民投票では、自公両党に加えて当時の民主党や共産党も反対に回り、僅差で否決された。だが19年春の統一地方選で、日本維新の会の地元組織「大阪維新の会」が大勝したことで都構想も息を吹き返す。大阪維新は府知事、大阪市長の両ポストに加え、府議会で単独過半数、市議会でも第1党の座を確保した。維新に力を見せつけられ、都構想反対から賛成にかじを切ったのが公明だ。


都構想の推進で合意し、握手する公明党の佐藤茂樹衆院議員(右)と日本維新の会の松井一郎代表=2019年5月

 公明府本部代表を務めていた佐藤氏は19年5月、日本維新代表の松井一郎大阪市長と一緒に記者会見し、都構想推進で合意したと発表した。公明の狙いは、都構想賛成と引き換えに、衆議院で議席を持つ府内4選挙区に、維新から刺客を立てられないようにすることだった。

 この方針転換に、それまで反対派で共同戦線を張ってきた自民府連は強く反発した。住民投票の告示前後からは、双方が激しく対立して批判合戦となり、その断絶は20年11月に2度目の住民投票で都構想が再否決された後もなお尾を引く。

 自民府連のある幹部はこの夏、佐藤氏から衆院選での支援を頼まれた際に「『応援はできない』とはっきり断った」と明かす。別の自民関係者は柳本氏の出馬騒動について「国政では連立与党だが、大阪では対立している。大阪3区はその象徴だ」と理解を示す。

 ▽高まる主戦論も「公認権は党本部」

 住民投票の結果は、公明と維新の関係にも微妙な変化をもたらした。都構想実現の目がついえた今、維新幹部からは「公明への貸し借りはなくなった。今回の衆院選は見送ったとしても、その次から公明に選挙区を譲る理由はない」と主戦論を唱える声が上がる。

 9月上旬、一部報道で公明関係者が維新に批判的な発言をしたと報じられた際は、松井代表も怒りをあらわにした。記者団の取材に「われわれが公明にしがみついているわけではない。信頼は構築できていると思っていたが、向こうがいらんと思っているなら、手を切る」と言い放った。公明府本部の幹部は慌てて松井氏に謝罪し、火消しに追われた。


大阪維新の会の横山英幸幹事長

 各党の思惑によって水面下ですみ分けを図り、投票先の選択肢を奪う手法には納得できない有権者も多いのではないか。維新と自民の地元幹部に改めて問うた。大阪維新幹事長の横山英幸府議は「候補者を出してほしいという声はどこにでもある」としつつ「都構想の他にも進めないといけない政策はたくさんある。それをスピーディーに進めるためにどうすればよいかが重要だ。議席数や行政運営の兼ね合いで、公明との選挙協力を判断していけばいい」と話した。

 自民府連幹事長の多賀谷俊史大阪市議は、柳本氏の動きとは別の問題だと前置きした上で「候補者を出さないという判断は、支持者に全く理解されない。風当たりも厳しくなり、組織がどんどん弱体化している」と指摘する。自公連携のひずみが大阪に集中しているとして「制度疲労を起こしている選挙協力体制は見直すべきだ」と述べた。

 両者とも、内部で主戦論が高まりつつあることは認めるが「国政選挙の公認権は党本部にある」として、独自候補擁立の検討はしていない。支持層の不満は解消されないままだ。


自民党大阪府連の多賀谷俊史幹事長

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