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マツコさんはアウトで高倉健さんはOK? 国民の美意識に介入する中国、強まる芸能界たたき

47NEWS / 2021年11月15日 7時0分

中国の男性アイドルグループ。メンバーの一部は「女っぽい」などと批判を受けた=2020年10月、中国広東省広州市(共同)

 「マツコ・デラックスさんはアウトでしょうね」。日本通の中国人の知人は、日本の芸能人が今の中国に進出しようとすれば、ほとんどが追い返されると予想した。中国共産党が人々の美意識に介入する姿勢を強めているためだ。党・政府系メディアは厚化粧の女性や女性っぽい男性芸能人を「病的」と攻撃。日本や韓国などの海外スターに憧れる風潮に苦言を呈し、党の意向に沿った「正しい美醜感覚の確立」を主張している。美的センスまで上から押しつける発想に、反発が広がる。(共同通信=大熊雄一郎)

 ▽ジャニーズは米国の手先?

 9月下旬、中国指導部の本音を代弁することが多い党機関紙、人民日報系の環球時報にアイドルグループSMAPの元メンバー、木村拓哉さんの写真が掲載された。読み進めると、ネット上の都市伝説のような話を大まじめに伝えていた。  「日本の女性っぽい男性文化は、米国が後押し?」と題する記事は、第2次大戦後、米国が日本を徹底的に屈服させるため、日本人の思想や文化を「改造」する措置を取ったと強調。そのキーマンがジャニーズ事務所社長だった故ジャニー喜多川さんだと主張している。 


木村拓哉さんの写真を掲載した2021年9月22日付の環球時報

 ジャニーさんが米国生まれだと強調し、中央情報局(CIA)との関わりを示唆。SMAPなどのアイドルは米国の文化を浸透させる「洗脳」の手段だと独自の解説を展開し、米国が日本に植え付けた美意識は韓国など東アジア各国に広がっていったと記している。

 記事は日韓のスターやアイドルを「美」の基準とする中国の芸能界や若者にくぎを刺す狙いがあるとみられる。一方で俳優の高倉健さんは「気骨のある男だ」と好意的に言及していた。

 中性的な男性がとにかく許せないようだ。


高倉健さん(中央)

 ▽「吐き気がする」

 党の指導下にある光明日報は8月以降「新時代に求められる健康的な美意識」をテーマに連載を始め、名門大の学者や文芸界の重鎮らが代わる代わる「美」について評論を掲載した。

 「女性っぽい男性現象のきっかけは娯楽番組と映画作品だ。日韓のスターのイケメンが中国の芸能人の模倣対象となった」

 「かつてテレビに映る中華の男子はしゃきっとしてたくましいものだった。ところが日韓文化の影響を受け、眉や目をいじり、女性のようになよなよしたものとなってしまった」

 「抗日戦争の主演男優までが女性のような化粧をしている」

 「整形した顔は反感を抱かせる。笑顔と笑い声が合っておらず、吐き気がする」

 「愚かで底の浅い低俗な偽文芸を唾棄すべきだ!」

 評論者たちは文化が堕落したとして激しく攻撃。素顔が分からなくなるほどの厚化粧や、男性同士の恋愛を描くボーイズラブも批判し、美意識が乱れると社会主義の価値観に悪影響を及ぼすと主張した。

 


マツコ・デラックスさん

こうした認識は習近平指導部でも共有されているとみられ、メディアを管理する国家ラジオテレビ総局は9月、「低俗で下品な」娯楽作品を排除するとして「女性っぽい男性などいびつな美的センスの根絶」を指示した。慌ててひげを生やすなどしてイメージチェンジを図る男性芸能人が増えたという。

 ▽文革世代

 それでは党が考える「正しい美醜感覚」とはどのようなものだろうか。

 光明日報の連載はマルクスの言葉を引用し「労働が美を創造する」と強調。「文芸作品の中で労働の美徳をもり立て、奮闘する人生を褒めたたえよ」と説く。

 建国の指導者、毛沢東ら党創設メンバーの青年時代を描いたドラマなどを列挙し、「これこそが中国青年のあるべき姿」と主張。党の意向を体現する「英雄」を描き、若者の美意識を育てるべきだと訴えている。

 連載を執筆した主な評論者15人の年齢を調べてみると、判明した10人全員が中国を大混乱に陥れた政治運動「文化大革命」(1966~76年)を経験した世代だった。文化大革命では、毛に忠誠を誓う若者「紅衛兵」が毛沢東語録を振りかざし、知識人や富裕層を「反革命」と断罪して暴行を加えた。

 10人が紅衛兵だったかどうかは分からないが、この時代に若者だった人たちが次世代の美意識の確立を試みていることになる。同世代の習国家主席の保守的な考えが影響しているのは間違いなさそうだ。

 ▽広がる反発 


習近平氏

 党が美意識への介入を強めたきっかけは、習指導部が貧富の格差解消を目指して掲げた「共同富裕」にある。富裕層の象徴として芸能人が攻撃対象となり、業界がファンの消費をあおるために「ゆがんだ美意識」を植え付けているとの論調が目立つようになった。

 ただ、党のこうした主張には反発が広がっている。短文投稿サイト、微博(ウェイボ)では「美的センスまで管理するのか」「清朝時代に戻ったようだ」「全ての人の美意識を受け入れる感覚こそ健康的な美意識だと思う」などと批判が相次いでいる。

 中国一流の総合歴史博物館「河南博物館」(河南省鄭州市)は、7~10世紀の唐時代について、女性が男性の格好をするなどし、人々が性別の区別なく活躍していたと紹介。自由で開放的な社会が豊かな文化を生んだと解説している。

 中国共産党は、世界から「愛される」(習氏)中国のイメージづくりを目指している。しかし、独善的に美の基準を押しつけ、はみ出した者を排除する今回のようなやり方で、日本などの近隣国を引き付けた唐時代の全盛期の輝きを取り戻せるかは不明だ。

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