「ドイツにとどまりたい」 メルケル氏と自撮りで話題になったシリア人男性
AFPBB News / 2024年12月13日 15時34分
2015年9月10日にドイツのアンゲラ・メルケル首相(当時)と自撮りした写真を見せる元シリア難民のアナス・モダマニさん。首都ベルリンの自宅アパートで(2021年9月1日撮影)。(c)John MACDOUGALL/AFP
【AFP=時事】ドイツで約10年前、当時のアンゲラ・メルケル首相との自撮り写真が話題となったシリア難民の男性がいた。今では仕事を持ち、ドイツのパスポートを取得し、婚約者もいるアナス・モダマニさん(27)は、内戦で荒廃した祖国に戻るつもりはない。
シリアでバッシャール・アサド政権が崩壊したのを受け、欧州の右派政治家たちは、シリア人に「帰国しろ」と要求している。だが、モダマニさんの物語は、受け入れ国に根を下ろした多くのシリア難民の典型といえる。
「私はベルリン市民だ。ここでの生活がある」。モダマニさんは18歳だった2015年、今では欧州最大のシリア難民コミュニティーがあるベルリンにたどり着いた。スーパーのアルバイトで稼いだお金で語学を身につけ、現在は公共放送ドイチェ・ウェレでフリーランスのビデオジャーナリストとして働いている。
同棲しているエンジニアの婚約者はウクライナ人で、2022年2月のロシアによる全面侵攻開始の数か月前、ドイツに来ていた。
「素晴らしいアパートがあり、とても美しい女性もいる。ここには必要なものがすべてそろっている」とモダマニさん。
モダマニさんがシリアを後にした理由は「アサド政権のために兵役を果たしたくなかった」からだ。シリアでは「恐ろしいことを経験した」ため戻りたくないと言う。
「友人を亡くした」「アサド政権のせいで亡くなった親族もいる」
「私とは違い、ドイツのパスポートを持っていない友人たちが心配だ」とモダマニさん。「内戦は終わったが、状況は不確かで、展開を見守る必要がある」
今では「シリアよりもベルリンに友人が多い」が、両親ときょうだいはまだシリアに住んでいる。実家は首都ダマスカスから車で約30分ほどの距離にある。
アサド氏が失脚して以降、イスラエルがアサド政権の軍事資産を標的とした空爆を行っていることも心配だと話す。「最近電話した時、母は地下貯蔵室に隠れていた」
■「歴史の一部」
モダマニさんはベルリンに無事定住しているが、他のシリア難民の運命は不確かな状況にある。ドイツ当局が今週、シリア人の難民認定申請の審査を凍結すると決めたからだ。
話題となったメルケル氏との自撮り以来、モダマニさんはシリア難民コミュニティーで有名人となった。5万人以上のフォロワーを持つ動画投稿アプリ「ティックトック」を使って、「シリアから来た人々の声」になりたいと言う。
メルケル氏との自撮りは当時、内戦で荒廃したシリアから逃れた約100万人を受け入れるベルリンの象徴となった。
しかし、この写真は同時に、イスラム過激派によるテロ攻撃と彼を関連付ける偽情報に悪用され、悪い意味でも注目を集めることになった。2017年には、そうした写真の削除を求めてフェイスブックを訴えたが、敗訴した。
モダマニさんとメルケル氏は自撮り以降会っていないが、前首相はその出来事を今も覚えている。
メルケル氏は先月出版された回顧録で、この写真が引き起こした騒動に驚いたと述べ、ドイツの移民政策の象徴として、支持派と批判派の両方が写真を利用したと述べた。
「この写真の友好的な顔を見て、シリアの人々が大挙して国外脱出することにつながると考える人がいるだなんて、今でも理解できない」とメルケル氏はつづった。
モダマニさんは、メルケル氏の回顧録に自分の写真が載ったことが誇らしい。「私の写真は永遠に歴史の一部になるだろう」
【翻訳編集】AFPBB News
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