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話題作『いつだってやめられる』監督が描く高学歴低収入の現実とは?

ananweb / 2018年5月23日 16時30分

実力はあるのに認めてもらえなかったり、思い描いていた人生と違う生活を送っていたり……働く女子なら一度はそんな思いを経験したことありますよね? そこで、積もり積もったストレスを一気に発散できる話題の映画をご紹介します。それは……。
■ イタリア発の痛快コメディ『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』!


【映画、ときどき私】 vol. 165

大学を追われた神経生物学者のピエトロは、同じく不遇な扱いを受けていた仲間の学者たちと合法ドラッグを製造。一時は大金を手にするものの、逮捕されて服役することになってしまう。

そんななか、世間では新しいドラッグが次々とまん延。手に負えなくなった警察は犯罪履歴を帳消しにすることを条件に捜査への協力を彼らに依頼するのだった。国内外にバラバラになった研究者仲間が集結し、事件解決へと乗り出すのだが……。

本作は、2014年にイタリアで大ヒットした人気シリーズの2作目。とはいえ、1作目を観ていない人でも、問題なく楽しめるようになっているのが、この作品の素晴らしいところ。そこで、さらなる魅力についてこちらの方にお話を聞いてきました。それは……。

■ 才能あふれるシドニー・シビリア監督!

この作品で監督・原案・脚本を務めて一躍脚光を浴びたシビリア監督ですが、本シリーズはなんと自身初の長編映画。今回は、そんな思い入れの強い本作の撮影秘話や自身の経験についても語ってもらいました。

■ まずはイタリアのみならず、世界中で高く評価されたことについてどう感じていますか?


監督
 僕としては、海外でも評判がよかったのは意外なことだったよ。というのも、イタリア特有のシチュエーションを描いたつもりでいたし、そもそもイタリアでもそんなに成功しないんじゃないかなと思っていたくらいだったから(笑)。

だから、あらゆる国で人気となって驚いているけれど、実はユニバーサルな映画だったんだということに改めて気づいて、誇りにも感じているよ。

■ では、もともとはどういう映画を目指していたのですか?


監督
 自分の制作意図としては、「ただ笑える映画を作りたかった」ということだけ。しかも、当時住んでいた家の近くに大学があったから、「自分の近所で起きていることを語ろうじゃないか」くらいの気持ちだったんだ。それがこれほどまでに受け入れられたのはうれしいことだよ。

■ 「ただ笑える映画」といいつつも、風刺コメディでもあるので、国によっては観客の反応も違ったのでは?


監督
 そうだね、特に主人公たちがナチスの車両を走らせるシーンは、自分たちとしても「ちょっとやりすぎかな?」と思ったこともあったよ(笑)。でも、「いいからやってみよう!」と挑戦的なところもあったんだ。

あとは、僕の大好きな『インディ・ジョーンズ』のなかでも同じようにナチスの車両に乗っているシーンがあったから、パロディという意味も込められているんだよ。しかも、運転しているのは同じ考古学者だしね。最初は観客も戸惑うかなと思ったんだけど、実際はみんなすごく笑ってくれたよ。

ちなみに、そのシーンではなんと1939年にナチスが実際に使っていた車両を使っているんだ。『インディ・ジョーンズ』ではセットだったけど、僕たちのは本物だから、そういう意味ではこの作品のほうがすごいでしょ(笑)! 

■ 本物のナチスの車両を使用していたとは驚きですが、それでは撮影もかなり苦労したのでは?


監督
 とにかく古い車両だから、3秒ごとに止まっちゃうし、後ろから押さないと発進すらしないような車だったから大変だったけど、俳優たちはすごく上手に運転してくれていたよ。

ただ、隊列を組んで走っているシーンを撮影していたとき、1テイク撮ったら元の位置に戻らないといけなかったんだけど、普通に公道で撮影していたから、戻るときに一般の車に交じって走っていたんだ。そうすると、信号待ちのときに周りのドライバーたちに不審な顔で見られたこともあったよ。だって、俳優たちはナチスの服を着て運転していたからね(笑)。

しかも、主役のエドアルド・レオはイタリアでは有名だから、それを目撃した人に「エドアルド、お前はナチなのか?」というようなコメントをSNSに書かれてしまったりもしたんだ。それにしても、すごくシュールな場面だったよ(笑)。

もともとは「主席の学者がゴミ収集員をしている」という記事を目にしたことや、イタリア人の研究者たちが次々と海外に稼ぎを求める “国の頭脳流出問題” がこの作品を作ったきっかけだったという監督。

■ ご自身も映像分野でのキャリアを積みながらアルバイトで生計を立てていたそうですが、何をしていたのですか?


監督
 僕はずっと短編を作っていたんだけど、その当時の本職はどちらかというとアルバイト。だからこそ、劇中では貧しさをリアルに語ることができたんじゃないかな(笑)!

で、何をしていたかというと、16歳から20歳までは夏のバカンス中に旅行者が長期滞在する場所でショーやゲームのスタッフ。そのあとはロンドンに行って、ファーストフード店でレジ係もしていたよ。ただ、そのときは「こちらでお召し上がりですか、それともお持ち帰りですか?」と「ほかにご注文は?」と「お食事をお楽しみください」と、この3フレーズしか発していなかったけどね(笑)。それから、ミラノのマーケティング業界でも働いていたよ。

■ では、それらを辞めて映画の仕事に専念できるようになったのはいつ頃ですか?


監督
 短編映画を作っている頃は全然収入がなかったから、僕にとっての収入源はそれらの仕事だったけど、2010年に『いつだってやめられる』の1作目の脚本を書く契約をしたことで、ほかの仕事を辞めることができたんだ。

ただ、将来は何が起こるかわからないから、またロンドンに戻って例の3つのフレーズをまた言うかもしれないという覚悟ではいるよ(笑)。

■ とはいえ、これだけ映画が大ヒットしたので、経済的にはかなり余裕ができたのでは?


監督
 いやいや、そんなことはないよ! それに、すごく有名なイタリアの脚本家の言葉で、「映画の危機というのは、脚本家や監督が公共の交通手段で移動しなくなったことから始まった」というのがあるんだ。

つまり、映画に関わる者というのは、つねに庶民のなかにいなければいけないのに、お金ができて自家用車に乗るようになれば、映画の衰退が始まってしまうということ。だから、僕も生活は変えていないよ! それに、そもそも僕の見た目はお金持ちには見えないよね(笑)?

■ 今回は監督自身の経験だけでなく、専門的な内容も含まれていましたが、脚本を作るうえで難しかったところは?


監督
 映画というのは、どうしても個人的なものを反映してしまうものだけど、今回は科学的や学術的なところは専門家に話を聞いたり、大学に行ったりして、かなりリサーチを重ねたんだ。

ただ、リサーチは本当に楽しかったよ。というのも、こういうきっかけでもなければ一生知ることがないような世界に足を踏み入れて、知識を得たので、この映画を通じて、冒険をしているような気分にもなったよ。

この作品が描いている社会問題を代表するように、イタリアはヨーロッパのなかでも若者の就職難や失業率が高く、15年ほど前に私がイタリアに留学していたときにも、同じような問題について聞いたこともあるほど。

■ リサーチを通じてさまざまな事実を知ったと思いますが、これらの問題を改善するために必要なこととは?


監督
 もしわかっていたら言えるけど、正直僕にもわからないよ。でも、いまはアナログ世代とデジタル世代が混在している状態で過渡期だと思うから、突破口になるような希望があるとすれば、やっぱり新しい世代が変化を担うことになるんじゃないかな。

僕は政治家ではないから、解決策を与えることはできないけど、映画監督としては問題にカメラを向けることが役割。まあ、もし政治家だったらもっとお金持ちになっていたと思うけどね(笑)。とにかく、映画こそが僕からのメッセージです!

■ 抱腹絶倒の逆襲劇が幕を開ける!

思い通りにいかないことが多いのも人生であり、ときには予想だにしない方向へと進んでしまうこともあるかもしれないけれど、そこで大逆転できるかどうかは自分次第。

どん底に落ちても、頭脳をフル回転すれば、まだまだ人生のチャンスは手にすることができるはず。落ちこぼれインテリたちが繰り広げる “史上最大の敗者復活戦” は、一度見だしたらやめられない!?

■ アドレナリンを放出させる予告編はこちら!



■ 作品情報

『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』
5月26日(土)、Bunkamuraル・シネマ他全国順次ロードショー
配給:シンカ
©2017 groenlandia srl /fandango srl

取材協力:ギャラリー册

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