兄は精神障害者…境遇を隠し異性との関わりを断った妹に訪れた奇跡 #22
ananweb / 2018年8月5日 19時0分
“私の兄は、障害者”。見て見ぬ振りして、直視できない現実を避けるように生きてきた、妹目線の連載です。自分の境遇を知られたくない思いから、恋愛どころか男性が苦手になっていったアラサー手前のこと。突然のプロポーズを受け動揺を隠せない私がいました。
文・心音(ここね)
【兄は障害者】vol.22
■ 「君を妻にしたい」——。
その男性は出会ってすぐ私に好意を寄せてくれましたが、私は心を開くことはできませんでした。それなのに彼は、突然「君を妻にしたい」とプロポーズしてきたのです。初めは、冗談だと思っていました。出会って早々、まだデートの回数もままならないのに、なぜ急に……? 私のことを何も知らないのに、何を根拠に言っているのか理解できませんでした。おまけに、男性が苦手な私にとって、交際を飛び越えていきなり “結婚” はどう考えても難しい。とはいっても、どうにかしてこの男性不信から逃れたいと答えを探していたのは本当なのですが……。
彼の言動は超ストレート。「君は、彼女じゃない。一生のパートナー、妻だと思う」と、本来なら少しずつ意識するであろう “妻” スタートで私のことを考えてくれたのです。
■ 毎日届く「人生プラン」に、驚きを隠せなかった
その本気さが一番伝わってきたのは、毎日届く長文のメッセージでした。コミュニケーションや気持ちの共有を一番大切にしてくれるのですが、LINEのような短い文章を伝えるツールではなく、パソコンのメールアドレスに「これからの私たちについて」「今後の人生のプラン」「僕の今までの生き方」「心音の好きなところ」など、自分の人生観や仕事のこと、今までの恋愛について、私のどこが好きなのか、そして私たち二人でどんな人生を歩みたいのか。時には、PDFで自己紹介を添付してくれたり、過去にしていた仕事の様子や将来のビジョンをまとめた資料を送ってくれたり……。
ここまで、自己開示をしてくれる人がいるんだと思うくらい、包み隠さずに自分のことを話してくれたのです。自分の話をするより、人の話を聞くことで相手は安心するといわれることがありますが、私は逆だと思っています。人の話を聞くより、自分の本音を相手に包み隠さず話すことは、相槌を打つよりエネルギーを必要としますし、話したくないことまで自分を開示することは時として辛いからです。
彼は、良い情報だけではなく、自分の人生においての失敗や挫折もたくさん教えてくれました。本当に大切に思っている人にしか話さないような、“辛い経験” をまだ出会ったばかりの私に話し続けてくれました。出張で会えない時でも、毎日長文を送り続けてくれるその行動。「今日はもう帰る」と冷たくあしらっても、「なぜひとりになろうとするの?」と言いながら手を取ってくれたその優しさ——。少しずつ「私を理解してくれるのは、この人かもしれない」という気持ちが出てくるものの、それでも不安はいっぱいありました。
曇り顔を察したのか、彼は、私が不安に思っていることや心の内で感じていることを、話してほしいと言ってきたのです。
■ 私以上に、私の家族を大切にしてくれた彼
おそらく、中途半端に気持ちを探られたり、曖昧なアピールをされたりしていたら、絶対に言わなかったと思います。しかし、あまりにも真剣だということが伝わってきたので、私自身も心を開かなければ彼に申し訳ないと感じ、正直に思っていることをすべて話したのです。「一生支え合えるパートナーができるか不安」「私には、障害を持つ兄がいる」「男性を心から信用することができない」……など、包み隠さずそのまま話しました。
そして後日、またいつものように朝起きたら長文のメッセージが届いていたのですが、内容に驚きました。
「この前は、たくさん話してくれてありがとう。家族のことだけど、お兄さんはどんな状況なの? コミュニケーションは取れますか? 手話はできますか? 車椅子ですか? ……それとも、ベッドから動けない状態ですか?」
そして、障害者施設のことや斡旋サポートのページなど参考になりそうなリンクが貼られていました。彼なりに兄のことを考えてくれたメッセージだったのです。
■ 引っかかっていた心のわだかまりが溶けた瞬間
このメッセージを見た時、心臓の奥を強く握られたような痛みと共に感じたことは、「ああ、血の繋がっている私よりも、兄に対して真剣に考えてくれている」という現実を直視する彼の強さです。
そのメッセージは「私には、障害を持つ兄がいる」ということだけを頼りに情報を探してきてくれた内容で、“手話” や、下半身が不自由な人のための “車椅子” など、精神障害ではなく身体障害についてだったのですが、それでも時間をかけて調べてきてくれたことに胸がいっぱいになりました。
気づけば誰にも言うこともなく、心にしまいこんでいた感情——。兄のことを避けるようにしていたことを、血の繋がっていない彼に教えてもらうとは……。恥ずかしさと情けなさと、そして彼の大きな愛が混じり合って、スーッと心の詰まりが溶けていったのです。
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