逃亡する殺人画家を追いかけて…夏のシチリア古都アート&グルメ旅
ananweb / 2018年8月18日 18時30分
いつもは国内のアート情報をご紹介している『女子的アートナビ』、今回は夏の番外編! デンジャラスな男が大好きなライター・田代が、西洋美術史上もっともワイルドといわれる画家、カラヴァッジョの足跡をたどり、シチリア島に行ってきました!
■ カラヴァッジョが逃亡したシチリアへ
【女子的アートナビ】番外編
カラヴァッジョ(本名:ミケランジェロ・メリージ 1571~1610)は美術史に名を残す天才画家。でも、本当にデンジャラスな男で、けんかや暴力は日常茶飯事、はては殺人までおかして逃亡する……という何ともハチャメチャな人生を送った人です。
そして、彼が残した作品も半端ない凄さ。神々しさと荒々しさが渾然一体となり、見ていると自然に涙が流れてしまう感動的な絵もあります。彼の魅力にすっかりハマってしまった私は、数年前からカラヴァッジョの足跡をたどる旅を開始。2018年の夏は、彼が殺人や傷害事件を起こしたあとに逃亡したシチリアまで行ってきました。
■ 逃亡ルートは?
カラヴァッジョはローマで殺人をおかして死刑宣告を受けたあとナポリ、マルタ島へと逃亡。さらにマルタでも事件を起こし投獄されますが、脱走してシチリア島のシラクーザ→メッシーナ→パレルモへと逃げていきます。マルタ騎士団の刺客に狙われながら再びナポリに行き、恩赦を求めてローマへ戻る途中で亡くなった……といわれています。
■ まずはメッシーナへ!
今回私が訪れたのは、彼の作品が現存するメッシーナとシラクーザ。まずはシチリア島への玄関口として栄えた港町、メッシーナへ行きました。
カラヴァッジョ作品が展示されているのは、メッシーナ州立共同美術館。メッシーナ駅からトラムに乗車し、終点のMuseo(美術館)駅で降りて徒歩数分で美術館に到着します。
美術館の外観です。ここに所蔵されているカラヴァッジョ絵画は《ラザロの復活》と《羊飼いの礼拝》の2点。美術館の至宝なので、これらの作品だけ特別な空間に展示されています。
■ カラヴァッジョ作品に会えた!
こちらが特別展示室。大作が2点も並んでいます!《ラザロの復活》(写真左)は、死んで4日たったラザロがイエス・キリストの呼びかけで生き返るという場面を表した絵。画家はモデルとなる遺体を掘り起こして描いたといわれています。写真では伝わりづらいですが、本物はラザロの描写が実にリアル。人間が腐敗した臭いまで漂ってきそうな凄みがありました。
いっぽう《羊飼いの礼拝》(写真右)には出産直後の聖母と幼子イエスが描かれているのですが、こちらの絵にも明るさはありません。カラヴァッジョがメッシーナに滞在したのは1608~1609年の間。亡くなったのは1610年なので、どちらも最晩年に描かれたものです。命を狙われながら逃亡を続けるカラヴァッジョの重い気持ちが絵に表れているようでした。
※写真はメッシーナ州立共同美術館の許諾を得て掲載。無断複製は禁止されています。
Su concessione della Regione Siciliana, Assessorato dei Beni Culturali e della Identità siciliana - Dipartimento dei Beni Culturali e della Identità siciliana- Polo Regionale di Messina per i Siti Culturali - Museo interdisciplinare di Messina
ちなみに、メッシーナの見どころはドゥオーモ(大聖堂)とその近くにあるオリオンの噴水。もともとメッシーナは歴史ある港湾都市でしたが、1908年の大地震や第二次世界大戦の空襲などにより歴史的建造物が多く失われてしまったそうです。
■ 元カレのいたシラクーザへ
続いて訪れたのは、古都シラクーザ。メッシーナから列車に乗って3時間ほどで着きます。カラヴァッジョがこの町に逃げてきた理由のひとつは、舎弟で元カレともいわれている画家仲間、マリオ・ミンニーティが住んでいたから。
このマリオ君はシラクーザ出身で、ローマでカラヴァッジョと一緒に暮らしていたこともあるイケメン画家。カラヴァッジョは彼をモデルにした作品も残しています。
ただマリオ君はローマでは活躍できず、地元に戻って画家として活動していたところにカラヴァッジョが逃げ込んできました。1608年の後半から数カ月間、逃亡者はこの地に滞在していたそうです。
元カレを匿い、絵の仕事もあっせんした優しいマリオ君のおかげで、シラクーザにはカラヴァッジョの大作《聖ルチアの埋葬》が残っています。
現在その作品はシラクーザの中心地、オルティージャ島のドゥオーモ広場に建つサンタ・ルチア・アッラ・バディア教会(写真上)で見ることができます。(教会内の写真撮影はNGでした)
こちらは観光名所のひとつ、サン・ジョヴァンニのカタコンベ(地下墓地)に隣接する地下礼拝堂の入り口。カラヴァッジョは、この礼拝堂を参考に《聖ルチアの埋葬》の背景の一部を描いたといわれています。
ちなみに、シラクーザは古代ギリシアの植民都市として繁栄したこともある古代都市。紀元前5世紀ごろに建造されたギリシア劇場など見どころも多く、世界遺産にも登録されています。
名所のひとつ、ネアポリス考古学公園の石切り場には、カラヴァッジョが名づけたといわれる「ディオニュシオスの耳」(写真上)もあり、多くの貴重な遺跡を見ながら天才画家の足跡をたどれます。
■ シチリア料理も半端なかった!
最後に、シチリアで味わった超絶品の海の幸をご紹介! 今回は海に面したメッシーナとシラクーザを旅したので、どこでも新鮮な魚介類を食べられたのですが、なかでも感動的だったレストランがシラクーザ・オルティージャ島の海沿いにある『ラ・カンブーサ』さんです。
シラクーザ在住の日本人女性、秋草奈緒子さんが経営するお店で、とれたての魚介を使ったシチリア料理や和食もいただけます。
ムール貝などがたっぷり入った海鮮パスタやウニ山盛りのパスタ、大きなエビを丸ごと食べられる料理など、おいしいものだらけ。日本語で料理の説明もしていただけて、分量の調整などもご提案くださるので、好きなものをいろいろ食べられました。
そして、レストランの席からは美しい海辺のサンセットも見られます!
日没後の景色にもうっとり♡ 夢のようにステキなディナーを楽しめました。
■ シチリアロスに…
はじめて訪れたシチリア島ですが、イタリア本土とはまた違う異国情緒たっぷりの雰囲気で、時間がゆったりと流れていました。島の人たちはみな優しくておおらか。電車やバスが時間どおりに来なくても、誰もイライラしていません。
私が通っている都内のイタリア語教室では、シチリアに行った人はみな帰国すると “シチリアロス” に陥ると話していましたが、今まさにその状態。カラヴァッジョ目的で訪れたのですが、アート以外にも魅力的なもの・おいしいものがたくさんあり、恋しくてたまりません。ぜひ一度 “シチリアロス” を経験してみませんか?
■
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