SNSの「いい話」には要注意! ネット上のプロパガンダとは?
ananweb / 2018年8月19日 17時0分
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「ナチスのプロパガンダ」です。
■ いまも使われるプロパガンダ手法。自覚が必要です。
今夏、ナチス関連の映画『ゲッべルスと私』や『ヒトラーを欺いた黄色い星』が公開されました。ヒトラー率いるナチス・ドイツの独裁体制が始まったのが85年前。ヒトラーはプロパガンダの名手で、ゲッべルスを宣伝大臣に任命し、ラジオや映画、新聞を駆使し、自分が魅力的なリーダーであることを知らしめました。
「プロパガンダ」とは大衆宣伝のこと。知らず知らずのうちに、ある主義や思想を大衆に浸透させてしまうことです。プロパガンダ自体には、良いも悪いもありません。しかしナチス・ドイツは、間違った選民意識をドイツ国民に植え付け、ユダヤ人廃絶に加担・黙認させました。欧州中のユダヤ人を強制収容所に送り強制労働をさせ、女性や子供までガス室に送り、約600万人を虐殺したのです。80年も前のヨーロッパの悲劇が現在の日本と何の関係が? と思われるかもしれません。しかし現代でも、「いつの間にか世の中が偏った空気に包まれる」ということは起きているのです。
例えば、先日のサッカーW杯。「観ない奴は非国民」という熱狂の声があがり、「観ない自由はある」という反論派との論争が起きました。でも、ない問題をあたかもあるように見せ、人々を分断するメディアにまんまと乗せられたともいえます。メディアは番組や記事に注目を集めるため、反論が出ることを見越した上で、わざと過激な見出しをつけて対立を煽ります。これは、仮想敵を作り、美しいドイツを守るためにはユダヤ人を排除せねばならないという極端な理論を押し通したナチスと同じ、プロパガンダ手法です。
問題は情報を受け取る私たちの側にもあります。メディアの煽りには乗らない、という冷静な姿勢が大事。煽られるのは怒りや不安だけでなく、SNSでよく見る「いい話」や「感動的な話」も実は危険です。ネット社会では、誰がどんな目的で私たちの「精神」に働きかけ、プロパガンダを仕掛けているかわかりません。心が揺さぶられたときには立ち止まり、頭の半分で「誰かが私の心に何かを刺した」と警戒心を持ってください。いつの間にか体制に反論できなくなった、ナチス・ドイツの教訓を忘れてはなりません。
堀潤 ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。新刊『堀潤の伝える人になろう講座』(朝日新聞出版)が好評発売中。
※『anan』2018年8月15・22日号より。写真・中島慶子 題字&イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)
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