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『SATC』の名場面が蘇る…世界最高峰の図書館が見せる驚きの実態とは?

ananweb / 2019年5月18日 12時30分

『SATC』の名場面が蘇る…世界最高峰の図書館が見せる驚きの実態とは?

誰もが憧れる大都会にして、大人気の観光地といえばニューヨーク。そんな世界随一の街で、市民たちの生活を陰ながら支えている場所があることを知っていますか? 今回はその一部始終が映し出されている話題のドキュメンタリーをご紹介します。オススメの作品とは……。
■ 注目作『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』!


【映画、ときどき私】 vol. 231

世界でもっとも有名な図書館のひとつであるニューヨーク公共図書館。92の図書館ネットワークからなる本館と分館は、まさに世界最大級の「知の殿堂」と呼ぶにふさわしいところ。

市民のみならず、数々の芸術家たちを育ててきたが、本の所蔵だけでなく、デジタル社会の普及や就職活動のサポートなど、図書館という枠を超えた幅広い活動を展開している。しかし、その裏ではスタッフたちの惜しみない努力が積み重ねられていた……。

みなさんのなかには、「大ヒットドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』でキャリーが結婚式を挙げようとした場所」と言えばわかる人もいるかもしれませんが、ここは人気の観光スポットとしても知られているところです。

そんなニューヨーク公共図書館の実情と知られざる魅力に迫っているのが本作ですが、図書館という概念を覆される驚きと発見で満ちています。そこで今回は、舞台裏のさらに裏側を知るこちらの方にお話を伺ってきました。その方とは……。

■ ドキュメンタリーの巨匠フレデリック・ワイズマン監督!

2016年にはアカデミー名誉賞を受賞し、89歳のいまなお現役で第一線を走り続けているワイズマン監督。本作は監督にとって41作目の作品となりますが、これまで傑作ドキュメンタリーを数々誕生させてきた原動力やオススメの本などについて語っていただきました。

―図書館とは「ただ本が置いてある場所」という印象でしたが、ニューヨーク公共図書館は社会や地域と密接に繋がっており、その幅広い活動には驚かされました。監督も撮影するなかで印象に残っていることはありますか?


監督
 実は私も同じように驚かされたよ。というのも、撮影を始める前はニューヨーク公共図書館の活動がこれほどまでに幅広く、多様であることを私自身も知らなかったからなんだ。

幼稚園生から高校生までの子どもたちやシニア向け、さらにはビジネスのプロ向けなど、提供されているのは何千ものプログラム。図書館が本やアーカイブの保管以外に、さまざまな人種、年齢、ジェンダーに向けてこれだけのサービスをしているというのは、本当に驚きだったよ。まさに巨大な大学のような場所であり、コミュニティセンターとも言えるんじゃないかな。

―監督はこれまでの作品でも、構成を決めるのは編集の最後の段階ということですが、素材もかなり膨大に集まったと思うので、そのなかで苦労されたことがあれば、教えてください。


監督
 今回撮影して集まった素材は約150時間。それを3時間25分に編集しているけれど、長い尺の作品だけに、入れたくて入れられなかったものはないよ。私は撮影させてくれた人に対しての義理を感じているから、なるべくたくさん入れたいと思うほうなんだ。

それに、彼らの仕事を正直に誠実に映し出すことができる作品を作りたかったからね。結果的に、その複雑さと多様性を映しているシークエンスはすべて取り込むことに成功したと思っているよ。

■ 規制もなくあらゆるものを撮影できた

―撮影では、監督が録音も担当し、カメラマンさんと2~3人という少人数の体制でいつも行われているそうですが、撮影中に大変だったことは?


監督
 唯一の困難といえば、ラジオがつけっぱなしになって音が邪魔するとかかな(笑)。あとは照明が足りないとか技術的なことくらいだよ。

―作品では幹部の白熱したミーティングやお金の話をしているところもすべて映されていましたが、「映さないで欲しい」と言われたことはなかったですか?


監督
 それは一切なかったよ。すごく素晴らしいことに、図書館の代表はすべてにおいて透明性を確保したいと考えるタイプの人なんだ。

だから、現場で起きるあらゆることを撮影させてもらえたし、何の規制もなかったよ。それだけでなく、映画が完成するまで、関係者がチェックするようなこともまったくなかったんだ。

―撮影期間は12週間とのことですが、1日どのくらい撮影していましたか?


監督
 撮影時間は日によっても上下するけれど、平均してだいたい2~3時間ほど。ただ、図書館が開いている限りはそこにいたから、毎回10~12時間は図書館に滞在していたよ。

―監督も図書館は大好きな場所でよく利用されていたということですが、いまは本離れが進んでいるので、もしananweb読者に向けて読んでおいたほうがいい文献などがあれば教えてください。


監督
 私が好きなのは、19世紀のアメリカの小説。たとえば、ハーマン・メルヴィルやナサニエル・ホーソーン、ヘンリー・ジェイムズといったところだけど、なかでもオススメは1857年に出版された『詐欺師』。メルヴィルの小説で、『白鯨』ほど有名ではない作品ではあるけれど、現代のアメリカの生活を知りたいと思うならば、これを読んでおくべきだね。

なぜなら、主人公がまるでドナルド・トランプそのもののようなキャラクターなんだ! 非常に笑える作品だし、アメリカの典型的な男が描かれているから、ぜひ読んで欲しいなと思うよ。

■ デジタルでもアナログでも結局は人間がしていること

―図書館や本にはアナログなイメージがありますが、劇中ではデジタル化を進めるにあたってのやりとりも見られました。監督もアナログ編集からデジタル編集へと移行されたということで、この問題についてどのように感じていますか?


監督
 私はアナログの編集やフィルムを使うのが大好きだったから、デジタルに変えてよくなったということはあまりないかな。作業的に少し早くできるというくらいで、作業内容としてはそれほど変わらないんだ。

なぜなら、どんなツールや機材を使おうが、アナログでもデジタルでも、編集というのは人間の頭のなかでしていることだからね。

―アナログのほうがお好きということは、やはり本を読むときは電子書籍ではなく、実際に本を手にするほうですか?


監督
 そうだね、私は自分の手のなかに本を持つのが好きなんだ。自宅の書斎には5000冊もの本が置いてあるくらいだからね。読みたい本がある場合はすぐに買うようにしているんだけど、本を集めることが好きなんだ。もちろん、集めるだけではなくて、ちゃんと読んでもいるけどね(笑)。

■ 89歳でも現役でいられる秘訣とは?

―数年前のインタビューでは朝は5時半頃に起きて、自転車エクササイズをしてから、10時間以上の撮影をするとおっしゃっていましたが、それだけハードな生活を続けられる秘訣を教えてください。


監督
 健康である限りは、ただやるしかないよね(笑)。健康でなければ頭も働かないけど、逆に健康さえあれば一日中働いていても大丈夫なんだ。

―その心と体の健康はどのようにして維持しているのですか?


監督
 いま話にあったように、私は毎朝40~50分くらい自転車に乗って、腹筋などの筋トレをしているんだ。

―すばらしいことですね。ちなみに、どのくらい続けているんですか?


監督
 そうだね……、400年くらいはやっているよ(笑)!

―さすが監督です(笑)。いつまでもお元気でいらっしゃる理由がよくわかりますが、これまで50年以上にわたって、ほぼ1年に1本のペースで作品を制作されているのは驚異的でもあると思います。監督を駆り立てている原動力となっているものはなんでしょうか?


監督
 僕にもわからないけど、この仕事のおかげで悲観的にならないで済んでいるというのは、やっぱり自分の仕事が好きだということなのかな。私は自分の100%を作品に力をつぎ込むタイプで、そういう方法でしか映画作りに取り組まないんだ。自分なりの仕事の仕方や忙しくしていることが好きなんだろうね。

―そのなかで、映画監督としてのやりがいを感じる瞬間はどんなときですか?


監督
 それは、「1年間で自分ができる限りの努力を尽くし、最大限に仕事をやり遂げた」と自分に対する満足感を得られたとき。そして、それを世に放つ瞬間だね。

■ スタッフのレベルの高さには驚かされた

―ちなみに、作品では図書館で働いている一人ひとりが責任と情熱とプライドを持って仕事されている姿が印象的でしたが、彼らの仕事ぶりから触発されたことはありましたか? 


監督
 私も同じところに一番感動したけれど、献身的で、知性を兼ね備えたスタッフのレベルの高さには驚かされたよ。しかも、彼らは本当に人を助けたいと心から思っている人たちなんだ。

だからこそ、誰に対しても平等に向き合って、重要なサービスを提供しているんだけど、私が深く感心したのはそういう彼らの姿。そして、ニューヨーク公共図書館というのは、「アメリカが持つ最高の精神を代表している存在なんだ」と改めて感じたよ。

―すでに次の作品も発表されていますが、そのほかにも新たに取り組まれている題材はありますか?


監督
 いまはないけれど、秋ごろに1つ動き出すかもしれないかな。ちなみに、その前は舞台を演出する予定になっているから、いまはその準備をしているところなんだ。

―それでは最後に、これから観るananweb読者へ向けてメッセージをお願いします。


監督
 まず伝えたいのは、「映画を観て、自分で判断して欲しい」ということ。決して、商業的な意味だけで観て欲しいと言っているわけではないんだよ(笑)。なぜなら、ひと言では語り切れないから映画を作ったわけで、だからこそ観てもらうしかないよね。

■ アメリカを支える“精神の源”を知る!

図書館の持つ可能性や重要性に気づかされるだけでなく、仕事への向き合い方、そして文化の大切さを教えてくれる本作。まるで何冊もの本を読んだあとのように、学ぶことが多い作品であり、ニューヨークにいるかのような臨場感と感動を味わえる珠玉のドキュメンタリーです。

■ 心に響く予告編はこちら!



■ 作品情報

『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』
5月18日(土)、岩波ホールほか全国順次公開
配給:ミモザフィルムズ/ムヴィオラ
© 2017 EX LIBRIS Films LLC – All Rights Reserved
監督写真 © John Ewing

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