毎日5分だけでもOK…納得! 僧侶や尼が「若く見える」理由 #18
ananweb / 2020年1月10日 19時40分
コスメやエステ、最先端の美容皮膚科技術で見た目を若く見せる方法もお役立ちですが、心身ともに若返りの能力そのものをアップさせる術もあります。しかも無料! それはずばり、瞑想です。なぜ瞑想がアンチエイジングに効く? その鍵となるのは、染色体を守るキャップのテロメアです。テロメアと瞑想、永遠の若さとの関係を研究データとともに解説します。
取材、文・土居彩 看板写真・Yumiko Sushitani
【マック・マインドフルネス時代の瞑想探し。「魂ナビ」が欲しい!】vol. 18
わたしがアメリカの禅センターで暮らしていたころ、いっさい化粧をしていませんでした。別に禁止されていたわけではありませんが、誰もしていないのでひとり化粧しても変な感じだったからです。化粧もエステも無いかわりに、当時は1時間の坐禅を毎日3回、合計3時間瞑想していました。瞑想三昧の日々が5か月です。総勢13人ぐらいのレジデントと一緒に瞑想したり作務をしたりという毎日。そこへワークショップやリトリートに参加するために3日間や1週間のスパンで世界中からたくさんの人がビジターとして訪ねてきましたが、みんな口を揃えて言うんです。
「あなたたちはなぜ、そんなに若く見えるの?」と。
僧院生活ですし、特に若く見せようとしていたわけでもないのに、周囲があっと驚くような若さが手に入っていたというのは興味深いことです。よくよく考えてみれば、わたしの知っているお坊さん尼さん、瞑想を日課にしている人たちはみんな驚くほど肌がキレイ。最先端の技術を駆使したコスメやエステの力で見た目年齢を下げるアプローチはアンチエイジングに効果的でしょう。それに加えて毎日の生活のなかで、心身ともに若返り能力を復活させる瞑想も取り入れてみてはいかがでしょう。余分なお金はかかりません。
■ 瞑想が若返りに効くワケ。
そこで、なぜ瞑想がアンチエイジングに効くの? という疑問を持たれるかと思います。 その鍵を握るのはテロメアです。テロメアとは、染色体の端を守るキャップのようなもの。染色体が擦り切れないように保護するものです。その様子はダブルチップの綿棒をイメージしてみてください。ありがたくない例えですが、その耳垢を取る箇所がテロメアです。
ところでわたしたちの体は60兆個の細胞からできています。例えば皮膚を作る細胞は、日焼けをしたあとに新しい肌を生み出したり、ケガした傷口を修復するときに分裂しますがそのたびにテロメアは短くなります。そしてある程度短くなると細胞老化と呼ばれる状態になります。細胞老化になると細胞分裂はストップ。これが細胞の寿命です。つまりテロメアが短くなることが老化の原因のひとつ。加齢とともに肌のターンオーバーが遅くなってシワやシミができてしまう原因も、ここにあると考えられています。
■ 瞑想者はテロメアが長い。
さてヨーロッパの科学者たちが20人の長く禅瞑想(坐禅)を行ってきた人たちと、20人の同様に健康で瞑想をしない人たちのテロメアの長さを比較しました。すると瞑想者たちのほうがテロメアが長いという結果が。そして科学者たちはさらに分析します。瞑想で育まれたであろう、どういった心の状態がテロメアの長さに関係するのかを。そこでわかったのは、嫌な感情や経験を回避せずにありのまま受け容れられる心、そして自分に優しくできる心があるほどテロメアが長かったということです(1)。
こういった若返りの力を呼び覚ます心の状態。それがなぜ瞑想で育くまれるのでしょうか。その理由は、瞑想では体の感覚を使いながら自分の内側で実際に起こっていることに気づき、思いやりの心で見つめながらそれを手放すことが体験のなかで行えるからです。
わたしの体験でこんなことがありました。禅センターの集中瞑想期間、接心でのことです。プレジデントの隣の席に坐ることになったので、「いいところを見せなくちゃ」と欲が出ました。ところが朝食前の瞑想では腹の虫の大演奏。さらには寒暖差アレルギーによる鼻水が滝のように流れてしまうというありさま。「恥ずかしい! こんなはずではなかったのに」と体験に抵抗しようとするほど、嫌な気分が増すばかりで全然坐禅にも集中できません。
■ 心と体の真の若さを手に入れる瞑想のコツ。
そこでプレジデントに正直に打ち明けました。すると彼は「素晴らしい。その体験をありのまま感じてみなさい。嫌な気分も『そうか』と感じて、ずっと握ろうとしないで手放したらいい」と助言してくれました。それから肩の力を抜いて、勝とうとかうまくやろうという気持ちを手放すように心がけました。
となると瞑想中に体験するのはこんなものです。お腹が鳴る。恥ずかしい。体が熱くなる。一番熱いのは頬だな。熱い。熱い。熱のピークを迎える。やがてその熱は消える。そういった一連の流れを「そうか」と観察していきます。それになんの肉づけもしません。そして吐く息とともに手放すと、また次の体験がライブでやってきます。このエンドレスです(笑)。これを繰り返すことで、実際の体験とより親密な関係が築けるようになってきます。最終的に手放しているにも関わらず、もっと深く体験と関われるなんて不思議ですよね。これは日常生活に当てはめることができます。
なにも毎日3時間も坐禅をする必要はありません。日常生活でこうした心の観察を行うだけでも瞑想的な効果があります。さて心と体のアンチエイジング、テロメア・ケアのためにまずは1日5分、坐ってみませんか。0円で、毎日、今すぐできますよ!
■ 土居彩
編集者。東京の薪割り暮らしを綴るブログ『東京マキワリ日記、ときどき山伏つき。』。株式会社マガジンハウスに14年間勤め、anan編集部、Hanako編集部にて編集者として、広告部ではファッション誌Ginzaのマーケティング&広告営業を務める。’15年8月〜’17年5月、カリフォルニア大学バークレー校心理学部にてダチャー・ケトナー博士の研究室で学ぶ。’18年9月〜’19年1月、7月、ニュー・メキシコ州サンタフェにあるウパヤ禅センターに暮らしながら、ジョアン・ハリファックス師に師事。現在は、書道家・平和活動家、禅研究家の棚橋一晃氏の著書『Painting Peace(平和を描く)』(シャンバラ社)を翻訳中。
参考
(1)Alda, M. et. al (2016). Zen meditation, Length of Telomeres, and the Role of Experiential Avoidance and Compassion. Mindfulness , 7, 651–659 DOI 10.1007/s12671-016-0500-5
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