検察庁法改正案の危険性とは…知っておきたい“検察”の役割
ananweb / 2020年7月16日 19時30分
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「検察」です。
■ 権力を持つからこそ、独立した存在であるべき。
著名人も含め多くの反対の声がTwitter上にあがった「検察庁法改正案」は、今国会では廃案となりました。定年延長が問題になっていた黒川弘務東京高等検察庁検事長は、緊急事態宣言のさなかに新聞社記者らと賭け麻雀をしていたことが発覚し、5月に辞職しました。
検察官とは、検事と副検事を指します。法律違反を犯した人を逮捕するのが警察官。逮捕された人が、本当に罪を犯したのか、裁判にかけるに値するかを調べるのが検察官。法律に照らし合わせて刑を定めるのが裁判官です。日本では、犯人を起訴できるのは検察官のみ。日本の裁判は無罪率が低いといわれますが、それは、検察が裁判に勝てると踏んだものしか起訴しないからです。性犯罪のように、密室で行われて証拠をそろえるのが難しいものは起訴されないことが多い。伊藤詩織さんの例がまさにそうです。刑事訴訟で争うことができず、民事訴訟を起こし、ようやく一審で勝訴できました。
かつて、郵便不正事件で厚生労働省の元局長の村木厚子さんが無実の罪に問われ、長期間拘留された事件もありました。検察が事前に用意したストーリーに沿って裁かれていくというのは、とても怖いことですよね。それくらい検察官の権限はすごく大きいんです。
その検察庁の人事を、時の政府が強く握るというのはやはり危険です。そうなれば検察官は自分の生活や出世のために、政権に擦り寄る可能性があります。また政府が敵とみなした人を、検察が簡単に起訴することもできるようになってしまいます。それらを憂慮し、多くの人が反対を述べ、改正案は見送られました。一方で、国家権力にも相対してメスを入れることもできる存在なので、検察はやはり独立した存在でなければいけません。正義の検察が暴走しないよう、私たち国民は常に監視しておく必要があります。実際の監視役はメディアが担うべきでしょう。それなのに、雀卓を囲み、検察と新聞記者がずぶずぶの関係だったというのは残念でなりません。一緒に食事をしようが麻雀をしようが、正義に反することが起きたときには、ペンの力で刺してほしかったと思います。
堀 潤 ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。3月に監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開された。
※『anan』2020年7月22日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)
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