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西島秀俊「魔法みたいなものにかかる」 カンヌ4冠作品、現場での不思議体験

ananweb / 2021年8月22日 23時10分

西島秀俊「魔法みたいなものにかかる」 カンヌ4冠作品、現場での不思議体験

『偶然と想像』(今冬公開予定)がベルリン国際映画祭審査員グランプリ(銀熊賞)を受賞し、いま世界が、最も注目を寄せている濱口竜介監督が村上春樹の短編集『女のいない男たち』収録の同名短編小説を映画化。7月のカンヌ国際映画祭で、邦画初となる脚本賞をはじめ4冠に輝いた『ドライブ・マイ・カー』で主人公を演じる西島秀俊さんは、濱口作品に魅入られた一人だ。

この撮影中は、とにかくテキストまみれでした(笑)。

「出演している俳優さんが他の作品では見たことのない演技をしているので、演じる側の感情を大事にする演出方法をかなり研究されている方だなと。そして、脚本の力、映像の力が作品を重ねるごとに強くなっているように感じます。『寝ても覚めても』に関しては監督としての総合力が素晴らしく、いま世界で起きていることがちゃんと映り込んでいる。凄まじい才能が日本に現れたなと」

村上春樹の小説と濱口監督の映像は、どんな共鳴を見せたのだろう。

「どんなに完璧な夫婦でも、人間としてわかり合えている二人でも、どうしてもわからない部分はある。そういう原作の核にあるものが、濱口さんの視点と重なっているなと。濱口作品は、登場人物にも観客にも“この人はこういう人”として見えている姿が何かの瞬間に一気に変貌する。人は底知れないものだというリアリティが根底にあるから、観る者をドキドキさせるんでしょうね」

役者自身の中で起きる嘘のない感情がカメラに記録される濱口作品においては、感情を乗せずに脚本を読み上げる稽古、“本読み”が鍵となる。

「このキャラクターだったらどう答えるかという質問を自分たちで考えたり、脚本にはないシーンを仮定してやったりもしましたが、この撮影中は、とにかくテキストまみれでした(笑)。空き時間は全部本読みで、録音をホテルに帰って聴く。感情を込めないという意味で、句読点のひとつまで間を厳密に潰していく。そのプロセスのなかで、共演者の方々の声を聴いているとだんだん気持ちよくなってきて、彼らのことが好きになるというか。だから、本読みが楽しくて。その時間をみんなが待っているくらい、豊かな作業でした」

その作業を何度も繰り返した後に自由に演じると、そこに説明のできない何かが確実に生まれる。

「あのプロセスはいまだによくわからないんですけど、本番で初めて相手の感情が目の前に表れると、初めて見る人が出てきたみたいで感動的で、びっくりする。頭に相手の台詞が完全に入っていると余計なことを考えずに済むという理屈を超えた、不思議な作用があって。ちょっと魔法みたいなものにかかるんです」

人間が根底に抱える、わかり合えなさ。その先を、コロナの前後をまたぎ撮影された本作はどう描くのか。

「以前と以後で人生が完全に断絶した出来事が実際に起きていましたが、絶望の先に行くために必要なのは、やっぱり言葉なんじゃないかな。だから登場人物は話し合う。濱口さんもそれができるのかを考えながら、それでも乗り越えてほしいという希望を持って撮っていたと思います」

『ドライブ・マイ・カー』 写舞台俳優で演出家の家福悠介は、妻がある秘密を残したまま他界してから、喪失感を抱えながら生きている。2年後、演劇祭のために向かった広島で、寡黙な専属ドライバーみさきと出会う。8月20日より全国公開。©2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

にしじま・ひでとし 1971年3月29日生まれ、東京都出身。’94年、『居酒屋ゆうれい』で映画初出演。声優を務めた『劇場版オトッペ パパ・ドント・クライ』が10月15日、映画『劇場版 きのう何食べた?』が11月3日公開予定。

※『anan』2021年8月25日号より。写真・小川久志 スタイリスト・カワサキタカフミ ヘア&メイク・亀田 雅 インタビュー、文・小川知子

(by anan編集部)

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