涙が止まらない! 佐藤健×阿部寛の映画『護られなかった者たちへ』の魅力
ananweb / 2021年10月11日 22時10分
中山七里の同名小説を豪華キャストで映画化した『護(まも)られなかった者たちへ』。その見どころとは。
事件の陰の人間模様に、涙が止まらない。
連続殺人を通して日本の現実を浮かび上がらせる社会派サスペンスだと思っていたら、それだけではとどまらない濃厚な人間ドラマだった。殺人事件が入り口の作品で、こんなに泣いたことはないんじゃないかな。
中山七里の同名小説を、瀬々敬久監督が佐藤健と阿部寛という豪華な顔合わせで描く本作の舞台は、東日本大震災から10年を経た仙台。全身を縛られたまま餓死させられた遺体が発見されたことから物語は幕を開ける。殺されたのは、人格者だったという保健福祉センターの課長。宮城県警の刑事・笘篠(とましの)誠一郎(阿部寛)が、部下の蓮田智彦(林遣都)と共に捜査にあたるなか、第二の殺人事件が発生。別の事件の刑期を終えて出所してきたばかりの利根泰久(佐藤健)が、捜査線上に浮上する。
その捜査と並行して描かれるのが、10年前の震災直後のそれぞれの姿。笘篠は連絡が取れなくなった妻子を捜して、あちこちの避難所を懸命に訪ね歩く。避難所に身を寄せていた利根は、いつも何かを思い詰めた顔をしているものの、避難所で出会った高齢の女性・遠島けい(倍賞美津子)と小学生のカンちゃん(石井心咲)と次第に家族のような絆で結ばれていく。
いや、もう、この人間模様がたまらなくいい。社会派な題材に連続殺人事件を絡めたサスペンス仕立てになっていることに惹かれて観に行ったのに、正直、誰が犯人かを考えるのを放棄したくなるほど。過酷な現実を生きる人たちの優しさも痛みも丁寧に描かれた世界に、引き込まれてしまうのだから。たまたま避難所で出会った笘篠とカンちゃんが、おたがいがどこの誰かも知らぬまま交わすやりとりに、大切な人がもういないという同じ悲しみを抱える者同士のいたわりが滲んでいたり、利根やけいさんへの想いといい、カンちゃんの存在が静かに胸を揺さぶってくる。
と同時に、笘篠が捜査のために被害者の部下・円山幹子(清原果耶)の仕事に同行するうちに浮かび上がるのが、不正受給などの生活保護の実態。本当に支援を必要とする人に制度を利用してもらいたいと願う円山のひたむきさに、生真面目な雰囲気の清原がハマっている一方で、事件の被害者を演じるのが、誠実な役柄が似合う永山瑛太や緒方直人という大物実力派揃いというキャスティングの意外性も効いている。えっ、この人たちが殺されるんですか!? という驚きが、ものごとの善悪は簡単に白黒つけられるものじゃないことを象徴しているかのよう。
事件が突きつける行政や社会のシステムが機能不全に陥った現実にも、自分の力ではどうにもならない現実を懸命に生きる人たちの想いにも、止めどなく涙が溢れてくる。そして、なぜ、避難所の利根がいつも思い詰めた眼をしていたのか、その理由がわかるラストにもまた涙が止まらなくなる。けれども、この作品が深く胸に刻まれるのは、怒りや悲しみを抱えて生きる人々を描きながらも、人の強さや優しさを信じさせてくれて、未来への光を見せてくれるから。「死んでいい人なんていないんだ」。ある人が口にするその言葉が、『護られなかった者たちへ』というタイトルに込められたいくつもの意味とあいまって、ひと際、胸に突き刺ささるはず。
監督・脚本/瀬々敬久 脚本/林民夫 原作/中山七里 出演/佐藤健、阿部寛、清原果耶、林遣都、永山瑛太、緒形直人、岩松了、波岡一喜、奥貫薫、井之脇海、宇野祥平、石井心咲、吉岡秀隆、倍賞美津子ほか 全国公開中。©2021映画「護られなかった者たちへ」製作委員会
※『anan』2021年10月13日号より。文・杉谷伸子
(by anan編集部)
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