【連載:シネマ守銭奴】『これは映画ではない』の見どころ(銭どころ)

AOLニュース / 2012年9月26日 17時0分

【連載:シネマ守銭奴】『これは映画ではない』の見どころ(銭どころ)

"This Is Not a Film"(これは映画ではない)
なんとも珍妙なタイトルの映画ですが、けして某ハリウッド大作の「日本よ、これが映画だ」に対抗した作品ではなく、かと言ってほんとに映画じゃないのかというと、これが実に熱い魂がこもった映画なのでした。

「監督に敬意という名の銭を払うべし! 10,000円」
本作の監督ジャファール・パナヒさんは、世界的評価も高いイランの名匠なのですが、反体制的な活動を理由に、国から20年間映画を撮る事を禁じられてる人です。映画監督なのに「映画を撮ったら逮捕しちゃうぞ!」と言われてるわけですからなんとも酷な話で、お寿司屋さんがお寿司を握ったら逮捕されるようなもんです。

そんな「映画撮ったら即逮捕」状態のパナヒ監督が、「撮るのがだめなら、読めばいいじゃない」と、本来撮影するはずだった脚本を、カメラの前で監督自身が「読む」ことで映画を再現しようとします。部屋の絨毯の上をテープで区切り「ここがリビング」「ここがお風呂」とロケ地に見立てながら脚本を読み上げる監督。傍から見ると、顔の濃いおっさんが、部屋で一人おままごとに興じているように見えなくもないです。が、ここまでしてでも自分の作品を伝えようとする監督の創作への熱意に、ひたすら頭が下がる思いです。そして、興奮気味に脚本を読んでいた監督がふと口をつぐみ、苦悩と焦燥の入り交じった顔でぽつり言います「読むだけで済むならなぜ映画なんか撮る」。このなんともやりきれない一言が胸に刺さりました。

自分は絵描きのはしくれにいる人間ですが、創作や表現する上で、自分がいかに自由で恵まれた環境で活動できているかを知れただけでもこの映画を観た価値があったなあと思います。

「意外とほっこり。そしてイグアナ萌え! 500円」
映画禁止中の監督が「これ映画じゃねえし」と言いつつも事実上映画を撮っているわけで、非常に危険な状況なわけですが、映画の端々でのんきというか、ほっこりムードが漂っています。中でも監督が飼っているイグアナのイギちゃんは、苦悩する監督とは対照的に、じつに悠々と部屋をのし歩いていて萌えました。この映画における自由の象徴みたいな存在です。

あと蛇足ですが、パナヒ監督の自宅が、高級マンションなんでしょうか、広いリビング、でかいテレビ、見晴らしの良いベランダと、80年代トレンディドラマに出てくるような部屋に暮らしていて、「監督、案外いい暮らしをしてんなぁ」と少し思いました。

そんな訳で、逆境の中であっても映画を作り続けるパナヒ監督に、10,500円の敬意を払いたいです。



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