羽生善治VS渡辺明、将棋界「新ライバル戦記」(9)執念のラバーマッチで復位

アサ芸プラス / 2013年3月26日 9時54分

 王将を奪取し再び二冠に返り咲いた渡辺竜王は、棋王の座にも王手をかけている。取れば羽生三冠に並ぶことになり、2強の実力と名声はますます輝きを増していくのだ。そんなライバルの歴史に残る「17時間の激闘」の舞台裏をクローズアップする。

 竜王を9連覇している渡辺明竜王(28)が一度だけタイトル防衛に失敗したことがある。昨年の2冠目の王座防衛戦だ。挑戦者はその前年、王座から引きずり下ろした羽生善治(42)だった。

 王座は羽生にとって特別なタイトル。92年に初戴冠して以来、19連覇。しかも、6年連続3連勝で防衛中だった。渡辺は前人未到、節目の20連覇を阻止していただけに、この対戦は注目された。将棋関係者が言う。

「王座は挑戦者決定リーグ戦がないタイトル。5番勝負の舞台に立つまでは一戦も負けられない。勝ち上がった羽生には執念さえ感じられました」

 王座は渡辺が03年に初挑戦したタイトルで、その時は奪取に王手をかけながら敗れている。2人にとってはまさに因縁のラバーマッチだったのだ。

 ハイライトは12年10月3日、羽生の2勝1敗で迎えた第4局だった。敗色濃厚だった羽生が妙手を繰り出す。歩の頭に銀を“ただ捨て”した、122手目の△6六銀がそれだ。

 この手は先手からの▲8三飛△同金▲同銀成△同玉▲8二飛△7四玉▲6六桂以下の詰みを消しているだけではない。△8八角成▲同玉△7七銀成以下、詰めろ逃れの詰めろになっている。まさに「羽生マジック」。“ただ捨て”という発想はそう簡単にできるものではなく、棋士がこぞって絶賛した一手だった。渡辺はこの銀を▲同歩と払ったあと、△8九金から千日手になる。観戦記者が言う。

「劣勢の羽生が指し直しへと誘導し、渡辺もしかたなく応じるしかない局面となったのです。千日手になった瞬間、渡辺の表情は曇ったといいます」

 先後入れ代わっての指し直し局は、息を吹き返した羽生が巧みな指し回しでリードを保ち、渡辺が投了した。3勝1敗で羽生が復位。まさに羽生にとっての名局だったと言える。

 戦いが終わったのは、日付が変わった翌日の午前2時2分。午前9時に始まってから、実に17時間が経過していた。

 渡辺は3月7日、挑戦中だった王将戦7番勝負で佐藤康光前王将(43)を4勝1敗で下して二冠に返り咲き、10日には郷田真隆棋王(42)との棋王戦5番勝負第3局を勝って2勝1敗。24日に行われる第4局を勝てば、羽生と並ぶ三冠になる。

 佐藤とは4度目のタイトル戦だった。竜王戦では06年(4勝3敗)、07年(4勝2敗)と2回挑戦を退け、07年の棋聖戦では奪取に失敗(1勝3敗)していた。対戦成績は渡辺の17勝19敗と、まだ負け越している。前出・将棋関係者によれば、

「渡辺が5連敗した直後に4連勝したことがあるように、勝ち負けが偏るのがこの2人の戦い。今回は際どい勝負が多かった。渡辺にとって羽生と佐藤はまさに前門の虎、後門の狼です」

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