萩本欽一「青島幸男さんから教えられた言葉の影響は、すごく大きかった」(2)

アサ芸プラス / 2013年7月26日 10時0分

ピラミッドより10センチ高い墓

 ちょうど、そんな頃です。「コント55号」がレギュラー出演していた「巨泉×前武ゲバゲバ90分!」(日本テレビ系・69年10月スタート)の放送作家だった河野洋さん(夫人は女優の藤田弓子さん)から、青島幸男さんを紹介されたのです。

 東京都知事や参議院議員を務め、06年に74歳で亡くなった青島さんですが、当時は有名な放送作家で、東京・中野のマンション住まいでした。

 河野さんが電話で連絡してくれると、「うちに遊びにおいでよ」と青島さん。

 さっそく、お邪魔しました。キンキラキンの衣装を着、ロレックスの腕時計をはめて。

 青島さんに会って感じたのは、

「人間ってこんなに楽しく、おかしく生きられるんだ」

 ということです。

「すばらしいなぁ!」

 と感動しました。

 青島さん、これまでの自分の失敗談の数々を話してくれるんですが、何の気負いもなく、最高におもしろいんです。

 それに、奥さんの前で平気で自分の浮気話とか、

「オレ、あの時はモテたよなぁ」

 なんて話もします。奥さんも「そうねぇ、あの時はすごかったわ」とか答えますし、ビックリしました。

 深夜まで楽しい話を聞き、さておいとましようかという時、青島さんが僕にポツリと言いました。

「でもさぁ、欽ちゃん。あれだぜ。何十億か稼いで、例えば20億円の豪邸を建てたって、歴史の本にも残らないぜ」

 僕の目を見ながら、青島さんは続けます。

「大きな家を建てて、豪勢に遊んでみたところで、『へぇ、すごい!』って言われるのはその時だけだぜ。男の夢っていうのはもっと違うと思うんだ。

 オレはね、欽ちゃん。20億円ためたら、富士山の麓に墳墓を建てるんだ。自分の墓をさ。そしてね、その墳墓は世界一のピラミッドより10センチ高いんだよ。

 おかしいよぉ、歴史が変わるからね。世界一高い墳墓はクフ王のピラミッドではなく、日本の青島墳墓になる。

 20億円の大豪邸より、男の夢としてはそのほうがずっといいとオレは思う。オレはそうするよ」

 青島さんの言葉に、僕は後頭部を思いっ切り殴りつけられたようなショックを受けました。

 キンキラキンの衣装とロレックスの自分が恥ずかしかった。青島さんの視線は僕の顔に向けられていましたが、僕には「首から下を見られてるんだ」としか思えませんでした。

「青島さん! 僕も建てます。青島さんのお墓の隣に、僕、青島さんのお墓より10センチ高い墓を建てます!」

 そう言って帰ってきました。

 キンキラキンの自分が悲しかった。

「お金の使い方ってこういうことじゃないんだ。こういうことで人間の価値が決まるんじゃない。稼いだお金をどう使うかで決まるんだ」

 そう思ったら、家とか車への興味がまったくなくなりました。

 青島さんから教えられた言葉の影響は、すごく大きいものでした。

「世界一高い墳墓を建てる」というのはたとえ話で、

「欽ちゃんができる有効なお金の使い方をしろ」

 ということだったのだと思います。

 僕は物に対してお金を使うのではなく、人に使うことにしました。

「テレビの世界にいるのだし、人間に投資して青島さんのようなすばらしい放送作家を何人も世に送り出そう」

 放送作家志望の連中を我が家に居候させ、やがて彼等は放送作家集団「パジャマ党」「サラダ党」として巣立っていきました。

 彼等は今、「笑っていいとも!」(フジテレビ系)や、「踊る!さんま御殿!!」(日本テレビ系)など、多くの番組で構成作家として活躍していますし、「踊る大捜査線」(フジテレビ系)の作家(スピンオフ映画では監督)、君塚良一くんも、あの時、居候していた一人です。

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