池上彰「アベノミクス“成長戦略”の盲点」(4)格差がますます広がる社会に

アサ芸プラス / 2013年8月28日 9時58分

──参院選では自民党公認でワタミ元会長の渡邉美樹氏が当選しました。雇用改革でブラック企業が増える?

 おっと、いわゆる正社員とパートの間の「限定正社員」の話でしょうか。確かに、企業がブラック的なことをやりやすくなる環境になる可能性はあります。ですが、限定社員を作り雇用を流動化させようという方法は、例えばフランスでも行われています。企業は、正社員のクビを切りにくいため、新規の採用を手控えるわけです。結果的に若い人の失業率が高くなっている。だから逆説的だけど正社員を簡単に解雇できるようにすると企業としては安心して若い人を採用し、結果的に失業率を減らすことができるわけです。

──考え方による?

 そう。むしろ雇用が増えるという新自由主義的な経済学の発想としてあるんですね。でも、正社員の中から限定社員を作ると、その人たちの給料を下げたり、あるいは解雇をしやすくしたりする可能性ができるわけで、そうなるとまた一段と格差が拡大する可能性がありますね。

──こうしてうかがっていると、安倍政権でも小泉政権の時のような格差社会が広がっていくことになる?

 そう。だって第一次安倍政権って小泉政権を引き継いだ政権だったでしょ。一回失敗しましたが、もう一度小泉政権を引き継いだことをやろうということです。今後、何が起きるか予測するためには小泉政権の時にどうだったのかを考えてみるといいでしょう。

 ですから、今はアベノミクスにより何となく経済は動きだした。一部のお金持ちはどうも恩恵を受けているらしい。それが庶民まで降りてくるかどうか、とりあえずみんなが期待してるから、選挙で自民党は勝ったわけです。今後はまだ見えませんが、物価はどんどん上がり、消費税も恐らく上がるでしょう。庶民はまさにハラハラ、ドキドキといった心境でしょう。

──何か庶民が浮かばれるいい話はないでしょうか?

 今だってデパートで宝飾品や高級腕時計は飛ぶように売れてるそうですよ。

──それは、うらやましいです‥‥。

 だから逆に言うと、これまで物価は下がり続けたわけです。でも、デフレは日本経済にとって決していいことではないわけです。確かに牛丼が200円台で食べられるのはうれしいけど、あまりに安すぎるのもちょっと考えものでしょ。

──確かに、ほどほどがいいんですが。

 ほら、最近マクドナルドが500円バーガーとか1000円バーガーって試験的に発売したらアッという間に売れたでしょ。もちろん期間限定だから売れたんでしょうが、これはこれまでひたすら安い物ばかり売ってたけど、「高い物でも内容がよければ売れるのかな」って実験したわけですね。この試みはすでに一部の回転寿司チェーンでも始まっていますし、今後、牛丼チェーン各社もやるかもしれませんね。

──企業にとってはビジネスチャンスになるわけですね。

 そもそもアベノミクスは2年間で消費者物価指数を2%上げると言っていた。その公約どおりに消費者物価が上がり始めた。つまり、アベノミクスは着々と成果を上げていると言えます。ただ、物価が上がった次に皆さんの給料も上がる、その効果を実感できるまでもうしばらくお待ちくださいということなんですが、今のところひょっとするとうまくいくかもしれないし、いつまで待っても来ないかもしれない。そこがわからないということなんです。

──一刻も早く給料が上がらないと干上がってしまう‥‥。

 確かにそのとおりですが、とりあえずは、期待しながら、そして警戒しながら様子を見ましょう。

──わかりました。ありがとうございます。

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