スペシャル対談・田中京×大下英治「今の日本には“田中角栄”が必要だ」(3)田中角栄はなぜ特別なのか

アサ芸プラス / 2016年8月18日 5時55分

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田中 最近、雑誌などで「人間・田中角栄」というタイトルをよく見ますけれど、確かに身内から見ても、特に話し方からくる人情味というのが、高学歴の人とか、学者とは全く違った印象があります。

大下 まさに、角さんは「情の人」でしたからね。しかも並大抵のものではなかったですよ。派閥の者だけでなく、敵である社会党にまで金を工面したこともあるくらいだから。

田中 すごい話ですね。そういえば、親父は「学者と弁護士みたいな人たちを、政治の世界に入れてはいかんよ。お前たち、それはよく覚えておけ」と、いつも言っていました。

大下 角さんはたくさんの名言を遺しているけど、私が1番好きなのは、「人間はやっぱり出来損ないだ。みんな失敗をする。その出来損ないの人間そのままを愛せるかどうかなんだ」。

田中 それは、高学歴のエリートには言えない言葉ですね。

大下 今の若手政治家は高学歴かもしれないけど、だいたい温もりがないよね。俺は他の者とは違う、という目線の高さがある。一方で角さんは、自分もまだまだ未熟の部分があると認めていて、叩き上げの苦労人だったことから目線が低い。それがやっぱり、庶民出身の宰相ならではのものだし、これこそが政治に最も必要な部分です。

田中 親父は若くして会社も経営していましたから、その目線も大きく働いたんじゃないでしょうか。

大下 そう。角さんは自分で金を集めて、部下に配るという姿勢を崩さなかった。それも、今の政治家にはない部分だね。あとは何と言っても、角さんの大胆な「決断力」。これはそういう経営者マインドに拠るところが大きいでしょうね。

田中 「決断力」か、そこはまさに今の政治家に期待できないところですよ。

大下 今、新たに大きな田中角栄ブームが起きているじゃないですか。理由は簡単なことで、今の政治に対する不満ですよ。

田中 確かに、精神面では生意気なのに、責任はとらない政治家さんが多すぎる。「もっと大胆に政治を進められないのか」「責任を持って取り組む人間はいないのか」と、誰もが思っていますから。

大下 ロッキード事件で刑事被告人になりながら、これだけ国民に愛される政治家も本当に珍しいでしょう。世界中が大混乱している今こそ、新しい田中角栄が現れてくれなきゃ。角さんを歴史の中に閉じ込めるのではなくて、その偉業を受け継いでいかなくてはいけない。このブームは、そういった政治家たちに対する“警告”であると私は思います。

田中 今の政治家は2代目、3代目が多いでしょう。親の築いてきた地盤を、何の苦労もなくそのまま受け継いでいるから、民衆への目線もないし、考えることも地に足がつかないことばかりだ、と言われる各界の諸先輩方も多いです。

大下 だから、3.11 や熊本の大地震みたいな事態が起こった時、「角さんがいてくれたらな」みたいな話はよく出ますけど、他の政治家の名前はまず出てこない。そういう時にエリートの官僚が頼りにならないことを、みんな知っているからなんですよ。

田中 改めて大下さんとお話させていただいて、親父は深い情と実行力を持った人だったんだな、と感じましたね。国民に対する愛情、具体的な国のグランドデザインを持って政策を進め、しかも人間味もある。まさにスーパーヒューマンみたいな存在で、そんな親父を持ってしまった子供は、ただただ重いだけなんですけどね(笑)。

大下 とにかく先見性、記憶力、頭脳、情、全てが規格外の人物でしたよ。僕は角さんに関することを書いていると、何だか戦国武将を書いているような気持ちになって、いまだに血がたぎってくるんですよ(笑)。

田中 かなりの数の著作で親父を書いていただいているのに、いまだにそう感じてくださるのはうれしい限りです。

大下 うん。男性から見てもセクシーでチャーミングですよね。そんな政治家は本当に少なくなってきました。それだけに、“国家の大経営者”田中角栄の魅力を、これからも伝えていきたいです。

田中 京:1951年東京都生まれ。父は田中角栄、母は辻和子。CBSソニー勤務、飲食店経営を経て、現在は執筆活動を中心にテレビ・ラジオなどに出演。また日中の架け橋として民間で十数年仕事に携わっている。著書に「絆 父・田中角栄の熱い手」(扶桑社)、「男の中の男 我が父、田中角栄」(青林堂)がある。

大下英治:1944年広島県生まれ。政治・経済・芸能と幅広いジャンルで執筆活動を続ける一方、テレビのコメンテーターとしても活躍中。「田中角栄巨魁伝」(朝日文庫)、「田中角栄の酒」(たる出版)、「田中角栄の新日本列島改造論」(双葉社)など、田中角栄に関する書籍も数多く手がけている。

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