死んでも「アイツ」に勝ちたかった⑤ 陳健一(3)
アサ芸プラス / 2012年7月11日 10時54分
手の内を隠さない坂井さん
今、振り返ってみても、メチャクチャおもしろい番組だったな。だって、料理の原価計算をしなくていいんだよ。何でも材料がそろっていて(通算の食材費が約8億4000万円)、あのテンションの中で好きなもんを作れるんだぞ。料理人として、ぜいたくな番組だったね。
そんな中でも、特に大御所の神田川さんやその軍団の刺客と戦う時は、バラエティ番組だとわかっていても、「負けたくねえな」と燃えたね。ある意味、ライバルだったからな。こちらも鉄人軍団って感じで、道場(六三郎)のオヤジさんと坂井の兄貴と3人で作戦会議をしたよ。2人とも負けず嫌いでね。オヤジの迫力はすごいし、兄貴も一代で「ラ・ロシェル」を築いた人だからスピリッツがハンパじゃない。調理場で、「この素材ならこっちだろう」「こんな料理もいいよね」なんて調子で、俺のために講習会みたいなことまでしてくれた(笑)。こっちも自然と闘志が湧いてきたよね。
番組の中では「関西料理界のドン」と紹介された神田川俊郎。「味は心や!」などのパフォーマンスで有名だが、キッチンスタジアムに5回登場し、5戦3勝2敗。和の鉄人・道場六三郎にこそ勝利はないが、坂井と1勝1敗、陳と中村孔明を下している。
神田川さんと対戦した時、そのテンションの高さに「すげぇーオヤジさんだな」とビックリしたよ。でもね、神田川さんが番組のファンで弟子たちを次々に刺客として送り込んでくれたからこそ、番組が盛り上がったよね。
ところで、最初は番組の構成に興味を持ったことで、「鉄人」としての出演オファーを受けたと言われている陳だが、1度は断っていたという。
実は断ったあとに、大ベテラン料理記者の岸朝子さんから「アンタ、バカか」って怒られたんだよ。岸さんはオヤジの料理を取材に来ていたんで、助手だった俺のことも知っていた。だから、「もっといろいろなシェフたちと交流しなさい。大きくなれないわよ。建一さん、半年間なんだからやりなさい!」と、言ってくれたんだよね。
そのおかげで今ではうちの代表メニューの一つ、「フォアグラの茶碗蒸し」が生まれたようなものだね。
素材が何でもそろっているキッチンスタジアムでよく新作を試していたんだけど、坂井さんからフレンチの食材について教えてもらって完成したんだよ。フォアグラと一緒にカニのミソと卵を入れ、そこにフカヒレのとろみを加える。これを一緒に食べるとおいしいんだな(笑)。
本当に道場のオヤジや坂井の兄貴からはいろいろと教わったよ。イベントに一緒に行けば、そこの調理場でさ、自分で仕込みをするわけ。俺の目の前で自分の手の内を見せてくれるんだ。勉強になったよね。
鉄人として「負けられない」というプレッシャーの中で、斬新な新作メニューを完成させるなど、料理人として確実にステップアップを遂げた陳だったが、ただ一度だけ辞めることを考えたという。
番組開始から3年目ぐらいで、(鉄人として連勝記録は続くも)まだ迷える時代の頃だったね。坂井さんの説得で思いとどまったという記述があるみたいだけど、それはちょっと違うかな(笑)。確か、先に坂井さんが降板を言いだしてね、「辞める時は一緒に引退しよう」って決めたんだよ。
だから2人して思いとどまることができた。
あの頃は、番組の影響もあって本当にお客さんがたくさん来てくれ、本業も大変だった。番組出演を決めた時、俺は店のスタッフに「みんなの協力が必要ですから」と頼んだんだけど、もう一度、集まってもらって、「売り上げが上がったと喜んでいる場面じゃないし、これは実力じゃない。ここで腕を磨こう」と話したんです。
メディアの力は怖いからね。お客さんは「絶対においしくてサービスがいい」と思って来店してくれ、「次はもっと」と期待する。もし、あそこで有頂天になっていたら、うちの店はないと言い切れますよ。道場さんから「平常心」、坂井さんからは「集中力」「蓄積」の大切さを学びました。そして父の「料理は愛情」という教えを忘れず、お客さんへの心配りが伝われば幸せ。ダメなら何が足りなかったのか、常にお客さんを審査員だと思ってこれからも頑張っていきますよ(笑)。
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