池上彰 そうだったのか「10年後ニッポン」(前)(1)

アサ芸プラス / 2012年8月21日 10時58分

 3・11の大災害から復興への道を歩み始めた日本。太平洋戦争後の奇跡的な復活を今再びといきたいところだが、デフレ不況、金融危機、異常気象‥‥と、世界は混迷を極める。そんな時代を生き抜く知恵を授けるのは「ミスターニュース」池上彰氏だ。合併号名物企画は「10年後のニッポン」をテーマに前後編でお届けする

 

復興景気に沸く東北地方

─10年後の私たちの暮らしは大丈夫でしょうか?

 おっと、いきなりきましたね。まぁ、そう焦りなさんな。まずは当面の課題である震災復興問題から見ていきましょう。

 今ね、東北地方は非常に景気がいいんですね。先日も日銀の経済報告で、東北がおしなべて景気がよくなっていると報告されているんです。例えばね、仙台では今、美容院が増えているんですが、なぜだかわかりますか?

─復興が一段落したから?

 残念! 今はまさに復興真っ盛りで、ガレキ処理のために建設作業員などが全国から大量にやって来ていますよね。で、作業員たちは夜の街に繰り出すでしょ。だから飲み屋さんが次々に増えるんですよ。さらに、飲み屋のママさんだって全国から出稼ぎに集まってきます。ですからママさんたちが出勤前に行く美容院が足りなくなって、美容院が次々とできる、とこういうわけなんですね。

─風が吹けば桶屋が儲かる方式ですね。

 ええ、さらに被災地に行くと、大阪や九州ナンバーのダンプカーがいっぱい走り回っているんですね。つまり、東日本だけでは建設業者の車が手当てできないということなんです。特に関西の建設業者は東日本の震災によって倒産寸前だったところが「一息ついた」というケースもあるんです。

─まさに東北では復興バブルが起きているわけですね。

 そう、ビジネスホテルなんか予約が取れないですよ。実は消費増税法案の裏で、民主党は法案に賛成してもらうために自民党が打ち出している「日本列島強靭化計画」を受け入れる方向になっている。これは何かと言うと、災害に強い国づくり、つまり消費税で増えた税収で公共事業を増やしますよということで、これが強力な景気の下支えになるんです。

 そういう意味で言えば、昨年の震災はたいへん不幸な出来事でしたが、この震災復興にものすごく引っ張られる形で日本の景気が今よくなりつつあるわけなんです。これを10年先もつなげていけばいいんですね。でもね、被災地はただ復興すればいいというわけじゃない。

─えっ、それはなぜ?

 津波の被害を受けた宮城から岩手の海岸を北上していくと、「ああひどい被害だな」と思ってしまうんです。ところが実は、そもそも過疎化で人が住んでいなかったり、地域社会が崩壊しちゃっているところに津波が来たところがいっぱいあるんです。そこに多額の公共事業を施すのは‥‥。

─それはムダですよね。

 ですよね。岩手の大槌町に行くと、仮設住宅があるでしょ、さらにプレハブで作った仮設商店街ってあるんですよ。その結果、以前はあっちこっちに買いに行かなければいけなかったものが、そこに行くと全部そろうんですよ。つまり非常に町がコンパクトになって暮らしやすくなったという側面もあるんですね。

─なるほど、それは考えてもみませんでした。

 つまり、東北の復興というのは単に復旧するのではなく、コミュニティを再生し、新しい町を作っていくことをしなければいけない。それは結局、災害に強い街にもなってくるんです。

 10年後、それがうまくいっているといいなぁーというのが願いです。

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