池上彰 そうだったのか「10年後ニッポン」(前)(2)

アサ芸プラス / 2012年8月22日 10時58分

日本円は最強通貨のひとつ

─国内は復興を足がかりに盛り上がっていくとして、世界的には日本の経済はどうなりますか?

 ユーロ危機がずーっと続いているところに、ギリシャの次はスペインが怪しい。一方でドルも不安だ。そうなると、やはりいちばん安全なのは円ということになるんです。何といっても世界の三大通貨はドル、ユーロ、円ですからね。

─ただ、今後は中国も脅威になってきます。

 確かに、10年後には人民元のパワーは大きくなってくるでしょう。でも、まだ人民元にはいろいろな規制があって、大量に買っても簡単に円やドルに替えられない。その点、円ならいつでも売り買いが成立するわけですよ。私たちが考えている以上に、円というのはものすごい巨大なマーケットなんです。

─日本人はもっと自信を持ってもいいんですね。

 そう、円高は世界中が円がいちばん安全だ、日本経済は大丈夫だと見ているから円にして持っておこうという動きなんです。それに、円高というとマイナスのニュースばかり出ますけど、実はいいことだっていっぱいあるんですよ。

─それはどんなことでしょう?

 はい、一時、石油価格がものすごく跳ね上がりましたよね。あの時に、「日本は円高なのになぜガソリン価格が上がったのか」とよく質問をされたんですが、私は「円高だからこの程度の値上がりで済んでるんです」と答えたんですよ。実は、世界に比べて値上がりは小さくて済んだということがあります。そして今はアメリカが大変な干ばつなんです。当然、トウモロコシなどアメリカの農作物がものすごい大打撃を受けています。

─コーンが高くなるんですね?

 そう、今後トウモロコシ価格が跳ね上がりますね。ただそれだけでは収まりません。トウモロコシは家畜の飼料ですから、これから牛肉、豚肉、鶏肉の値段が上がります。さらにトウモロコシが足りない分や干ばつの波及で、小麦の値段にも影響してきます。今度はパンにも跳ね返っていきます。ところがね、円高のおかげで日本はこの影響が相当に小さくて済むんです。世界的には大変な食糧危機だと大騒ぎなんですが、日本は穏やか。これも円高のおかげなんですよ。

─気づいてないところで、恩恵があったんですね。

 確かに円高で輸出産業は赤字かもしれないが、反対に商社は資源を安く手に入れられるわけですから、まさに濡れ手に粟あわ。今年の夏はビックリするくらいのボーナスが出てますよ。

─確かにボロ儲けしてウハウハだとは言わない。

 以前、円安だった時にほら、輸入業者が青息吐息で大変だという話がいっぱい出ていたでしょ。要するに円高でも円安でも必ず利益を得る人と損する人が出てくるわけで、それは表裏の関係なんです。

【関連記事】

アサ芸プラス

トピックスRSS

ランキング