被災地「偽ボランティア」の巧み話術

アサ芸プラス / 2012年11月1日 10時58分

 岩手、宮城、福島の主要被災3県では、津波から生き延びた被災者が仮設住宅などで暮らしながら生活再建を模索している。今、その被災者を狙う“墓石詐欺事件”がひそかに起きている。被害者の一人が匿名を条件に被害実態を語ってくれた。

「震災以来、さまざまな人の思いもかけない善意に助けられたせいか、自分も人を疑うことを忘れてしまっていました‥‥」

 そう悔恨の念を漏らすのは、宮城県沿岸部の自治体に住む60代後半の女性Aさんだ。

 5年前に夫を亡くし、1人娘は結婚して県外在住。震災発生当時は1人暮らしだった。自宅は津波により、基礎以外はなくなり、もちろん家財は一つも残らなかった。今は仮設住宅で暮らす。

 彼女が詐欺被害にあったのは昨年秋のことだった。関東地方から来たボランティアグループが仮設住宅で炊き出しをしていた時のこと。炊き出しの豚汁を持って1人の青年が訪ねてきたことがきっかけだった。

 ボランティアグループのメンバーだと思って仮設住宅に招き入れたAさんは、東京から来たという物腰柔らかな青年に好感を持ち、発災時からそれまでのことを問わず語りのように話した。真剣そうに耳を傾けた青年は話を聞き終えると、

「とにかくお体に気をつけてください。また来ますから」

 と言って、Aさん宅をあとにした。

 ここまではよくある話だが、その青年は約半月後に再びAさんを訪ねてやって来た。

「前回、一方的に自分のことばかり話したので、悪かったという気持ちもありました。それに『また来ます』と言う人は多いけど、本当に再訪する人は少ないので妙にうれしくて。でもそれが運の尽きだったんでしょうね」(Aさん)

 県内の別の場所にボランティアに来た帰りだといった青年は、開口一番に、

「この間お話ししていたお墓の件ですけど‥‥」

 と切り出した。

 Aさんは震災で近くの寺院にあった先祖代々の墓も津波で墓石が倒されて、地中にあった納骨堂内の遺骨の一部も流出。震災後、納骨堂内に入り込んだ泥を自力でかき出し、拾い集めた遺骨を親戚宅に預けていた。寺院も全壊し、お墓の再建の見通しはなかった。前回、青年に会った時、そんな話もしていたのだ。

 青年いわく、北関東にAさん宅の菩提寺と同じ宗派で自分が知り合いの寺院があり、お墓がない東北の被災者が抱えている遺骨をお墓の再建まで最大5年預かっているという。無償ではないが、費用は供養料も含め年間10万円ほど。

 たまたま、青年が話す寺院の場所が娘の嫁ぎ先に近く、菩提寺再建の見込みもなかったことから、Aさんは、

「とりあえず1年でもいいから預かってほしい」

 と、反射的に話に飛びついた。

 すると青年は、その日の東京に帰る途中、寺院に立ち寄り、Aさんの先祖代々の遺骨を預かる申し込みを行うと言いだした。しかも、1年分の費用はとりあえず自分がいったん立て替えようとまで申し出てくれた。

「まさか立て替えまでさせるわけにはいかないので慌てて10万円を渡しました」

 青年はメモ用紙に寺院名と住所、自分の名前と携帯番号を書いてAさんに手渡し、Aさんの携帯番号を尋ねてメモすると、

「明日にでもこちらからご連絡します」

 と言って帰っていった。

 ところが、1週間たっても音さたもない。不審に思ってメモに書かれた青年の携帯番号に電話をかけると、女性が応答に出た。青年の名前を出しても知らないの一点張り。さらに娘の協力も得て調べたところ、青年が言っていた北関東のお寺そのものが存在しないこともわかった。

 ちなみに仮設住宅の自治会関係者に炊き出しに来たボランティアグループに連絡を取ってもらったが、Aさんが会った青年らしき該当者はいなかったという。どうやら被災者を装って炊き出しをもらい、それを持って今度はボランティアを装ってAさん宅を訪ねたらしい。Aさんの住む町の役場職員はこう語る。

「同じ境遇の人が仮設住宅にまとまって住んでいるというわかりやすい構図のせいか、怪しいセールスマンが訪ねて来るという話はよく耳にします。ただ、被害者がいたとしても皆、周囲を気にして黙っているようで、噂話以上のことは表に出てこない」

 かくいうAさんも、娘以外には被害のことは話していないが、被害は紛れもない事実。その意味では、被災したうえに詐欺被害にあうという「泣きっ面に蜂」状態のAさんのケースは「氷山の一角」に過ぎないのかもしれない。

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