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ハヤカワ五味です。ご相談は?

ASCII.jp / 2023年7月12日 7時0分

 27歳、経営10年目、会社員2年目のハヤカワ五味が、皆様のお悩みに答えたり、答えなかったりする連載です。最初は最近同世代で悩んでいる人も多い「働き方」がテーマ。今回はTwitterで募集した際に集まった質問をお題にしました。

(ご相談はこちらのフォームからお送りください)

妊娠出産でキャリアはどうする?

 大卒で就職すると、仕事が一番やりがいあって楽しい時期に結婚出産の適齢期が来るんだなあというのを今まさに実感しています。私は女性ですが、もしかしたら男女問わず、そうなのかもしれません。仕事が好きで、でも結婚も出産も経験したくて、人生の岐路に立たされています。(PN.えむらさん)

 自分大卒社会人2年目、恋人高卒社会人9年目のカップルです。  自分はまだまだ仕事でスキルや経験を増やしたいが、彼は早く結婚をしたい様子です。  結婚したとしても、キャリア形成を考えると早期の妊娠出産に不安を感じてしまいます。  社会人経験が短いうちに母となっても仕事復帰後劣らないようにするために必要な力や、今できることはなにかあるでしょうか。(PN.貫禄あると言わないでさん)

妊娠出産はコントロールできない

 キャリア形成と妊娠・出産のタイミングの話、とにかくよく相談されます。正直、自分自身が仕事にあまり困ったことがない特殊なキャリアで参考にならないので、これまで相談されてきたことや周囲の人に聞いた中での話を中心に考えてみます。

 まず、大前提として大切なのが、多くの場合「妊娠・出産は1人の意志ではできない」ということです。国内の場合、第三者による精子提供は原則難しいので、基本的には誰かとの合意の上で妊娠し出産することになると思います。自分だけのことであればある程度コントロールできますが、良い相手と出会えるかやそのタイミング、ましてや妊娠の時期なんてものは選ぼうとして選べるものではありません。

 先日のトークイベントで、産婦人科医の高橋怜奈先生も「これくらいの年齢で産んで、と色々プランニングしてたけど、結局相手がいなくて遅くなった」という話をされてました。産婦人科医の先生でもそこはどうしようもない!

 私たちはこれまでの人生で、自分の進路や在り方をたくさん考え、選択してきて今があると思うのですが、妊娠・出産はそうコントロールできないという気持ちを持っておくといいのかもしれません(少なくとも私はそう思うことにしました)。  その上でキャリアの話ですが、産休・育休でブランクがあっても働き続けられる人材であるためには大きく2つの方法があるかなと思います。

地頭がいいか、専門性があれば働き続けられる

 まず第1に地頭がよく素直で未経験でも採りたい人であるパターン、第2に何かしらのスペシャリティー(専門)があるパターン。正直、前者は後天的にどうこうできない部分も多いので端折りますが、後者は働き方を考える上でとても大切だと思います。  これは私の経験などではなくあくまで想像、仮説の話ですが、同じ年齢で同じスペックの人が沢山いた場合、フルタイムで働ける人と時短や途中抜けがある人のどちらを採用するかと言えば前者になってしまうのはある程度想像できます。会社の採用コストや教育コストも限りがあるので、それであれば同じコストで長時間働ける人の方がコスパがいいということになりますしね。

 ですが、例えば同じ年齢で同じスペックの人が少ない場合、そもそも市場に対してレアな人材の場合はどうなるでしょうか?その場合、そもそも各社が求めている人数と同等もしくは少ない場合、働ける時間なんかは関係なく取らざるを得なかったり、欲しい人材ということになると思います。  本当は、そんな頑張らなくてもいい社会の方がいいなと思いつつ、今を生きる私たちの生存戦略としては「何かにおいてスペシャリティがあり、採用したい、一緒に仕事したい人になる」というのが暫定解なのではないかと思います。

時間はかかるが、働き続ければ道は拓ける

 でも、そうなると、スペシャリティ(専門)がない人はどうしたらいいんでしょうか。これについては、実際に妊娠出産をきっかけにキャリアが大きく変わったという女性からもDMをもらいました。少し長くなりますが、いい内容なので紹介させてください。

 女性は1988年生まれ。新卒で出版社に入った後、3年間編集者として活動。会社員を辞めて大学院(メディア学専攻)に進学し、卒業前に妊娠したそうです。

 その後、卒業後に就職しようと考えていたメディア企業にインターン枠で仕事を開始。「出産後に正社員で雇うよ」と口約束をしていたものの、産後半年のタイミングで連絡をしたら「ポストが埋まったから採用できない」と言われて絶望したということ。

 その後、ようやく他社から内定が出たものの、年収は新卒時の600万円(残業代含む)から300万円へ半減。当時としては「キャリアにとって妊娠出産はマイナスでしかない」と感じたとしながらも、「あのスペックの私を正社員で雇ってくれた会社には今も感謝しかない」とつづっていました。

 その後、仕事で成果を出したり、転職したりと努力を続けた結果、出産から6年で年収600万(残業代なし)まで戻せたそうです。そのときの心境は「ようやくスタートラインに戻ってきた~、という感じ」と表現されていました。

 「私の超超超平凡なスペックでも、正社員キャリア3年しかなくても、自分のやりたいことを追求して行動し続ければ産後にキャリアを取り戻せます。時間はかかってしまいますが…。早期にスペシャリストになっておく、もっと戦略的に妊娠出産する、などもちろんもっと良い道はあると思います。それができないときは、産後とりあえず正社員の座につけば、その後キャリアを切り開いていける、というご紹介でした」(DMより)

できるだけ経験を積み、仕事を楽しむのが大事

 ここで冒頭の質問に戻りますが、「貫禄あると言わないで」さんは、

 “自分はまだまだ仕事でスキルや経験を増やしたいが、彼は早く結婚をしたい様子です。結婚したとしても、キャリア形成を考えると早期の妊娠出産に不安を感じてしまいます”

 ということで、質問者さんはある程度明確にやりたい仕事が見えていて、それに関連するスキルや経験を増やしたいということなのかなと思います。その場合、自分がある程度自信が持てるくらいには経験を積んでおくと後々楽なんじゃないかなと。

 しかも、この方の場合はパートナーさんが結婚や出産を強く希望されてるということで、そんな希望するならあなたもコミットしてくれるよねと強気に出ることが可能ですし、出産時期は検討するにしても今のうち育児へのコミットを強く約束してもらうのも手じゃないですかね。

 「えむら」さんからは、以下のようにいただいてました。

 “大卒で就職すると、仕事が一番やりがいあって楽しい時期に結婚出産の適齢期が来るんだなあというのを今まさに実感しています。私は女性ですが、もしかしたら男女問わず、そうなのかもしれません。仕事が好きで、でも結婚も出産も経験したくて、人生の岐路に立たされています”

 こちらに関しては社会人経験が一応10年ほど(大卒で実質32歳相当)ある身から言えば、別にいつだって仕事は楽しいししんどいと思います。

 いつか暇になると思いつつ10年やってきましたが、無理矢理休みを作らない限り休みなんて永遠に存在しませんし、それは私だけじゃなく会社で働く友人たちもよく言っています。そういった意味で言えば、出産を経験したとしてもその後も楽しく働けるような「一緒に働きたい!と思ってもらえる人」でさえあれば、年齢関係なくチャンスはありますし、楽しく仕事できると思います。そうあって欲しいという気持ちも含めてですが、少なくとも私の尊敬している先輩たちはそうです。

出産妊娠も「経験」としてとらえて

 また、Twitterで相互の採用経験者の方とお話ししていて思いましたが、そもそも出産や育児をブランクにしなければいいという話もあると思います。

 それはリスキリングみたいに、妊娠中・育児中に勉強しろ!という話ではなく、育児中に子供とこういう風にコミュニケーションを取ったら意思疎通ができたとか、授乳をこういう風に管理したらスムーズになったとか、そういう日々の試行錯誤はすごく価値があることですし、そこの試行錯誤を仕事に転用できれば間違いなく周囲に感謝されるはたらきになると思います。

 少なくとも、育児に関わったことがある人事の方や同僚の方はその大変さと凄さを理解してくれるはずで、だからこそ妊娠・育児をブランクと捉えず「ちょっと別の経験をしてきました!」と思いたいし、そう思える社会であって欲しいなと思います。

 

筆者紹介:ハヤカワ五味

1995年東京都生まれ。株式会社ユーグレナ ブランドマネージャー、株式会社feast 取締役。高校生の頃からアクセサリー類の製作を始め、プリントタイツのデザイン・販売を行う。多摩美術大学グラフィックデザイン学科入学後の2014年8月にランジェリーブランド「feast」を立ち上げ、Eコマースを主に販売を続ける。2019年からは生理から選択を考えるプロジェクト「ILLUMINATE」を立ち上げ、2022年よりユーグレナグループにジョイン。現在は、はたらく女性向けの妊娠・出産を考えるブランド「SOLUME」のブランドマネージャー。

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