夏のヘッドフォン祭 mini 2023で見つけた新製品と注目ブランド
ASCII.jp / 2023年7月17日 9時0分
恒例のヘッドフォンイベント「夏のヘッドフォン祭 mini 2023」が7月15日に開催された。会場をこれまでの中野サンプラザから東京駅に隣接するステーションコンファレンス東京に移している。入場については引き続き事前登録制となっていた。miniとは言っても、59ブランドが出展する規模。気になったものをいくつか取り上げる。
finalのX8000
finalは、ミュンヘンのハイエンド(High End Munich)に出展して注目を集めた「X8000」を参考展示した。触ることができない展示だけではあったが、その形は印象的なものだった。finalの8000シリーズは革新性を表す意味があるが、X8000においては軽量性・高音質・装着感におけるユーザーの新体験だという。新素材と新製法を大幅に導入しており、特殊チタンのハウジングや発泡純フロンのケーブル、3Dプリンタによる開放型のイヤーパッドなど全てが斬新だ。試聴することはできなかったが、空間から音が飛び出すようなものになるということだ。
Lake People Seaside
タイムロードのブースでは、スタジオ向けの機材メーカーLake Peopleの新ブランド「Seaside」のヘッドホンが展示されていた。これは平面磁界型のヘッドホンで、ULTRASONEの元CEOマイケル・ジルケル氏が手がけたものだという。価格は未定だが30万円強ほどで、9月以降に発売ということだ。音を聴いてみたが整ったスタジオメーカーらしい音で、伸びやかで音の歯切れが良いところは平面型らしい。細かな音の再現力にも優れているようだった。
FitEar TG224s
FitEarブースでは、カスタムイヤフォン「FitEar 224」のユニバーサル版「TG224s」が展示されていた。価格は未定だが10万円前後のようだ。ユニットはBAドライバー2基で一方をフルレンジで使用してツイーターと組み合わせる構成だ。試してみて小さくて装着感がいいという印象を持った。音は歯切れ良くスピード感があり、低音もパンチが効いている。同社「Silver」にも通じるような、新設計者の堀田氏らしい若々しいサウンドではないかと感じた。
Lafic ToneのThe Industrial Wired
新ブランドのLayfic Tone(レイフィックトーン)は「The Industrial Wired」というダイナミック型の有線ヘッドホンを展示。母体は組み込み系の電子回路の会社ということで、OEMなどで築いた人脈をもとにオーディオ製品を始めたという変わった来歴を持っている。形もユニークなのだが、音も大変にユニークなものだった。DJサウンドを聴くと低音が鳴り響くように聴こえ、ジャズトリオを聴くと端正に鳴らす。測定上の特性はフラットだという。新規参入らしい新しいサウンドだと感じた。価格は未定だが10万円を超えるくらいで、2024年初頭にリリースできそうだという。
Truthear HEAX
初展示となるスターズフュージョンのブースでは「Truthear」ブランドの「HEAX」というイヤホンが展示されていた。これは1万円をちょっと超えるくらいの価格でダイナミック型が1基、BA型が3基のハイブリッド型イヤホンだ。音もこの価格ではクリアーでシャープ。かつハイブリッド形式らしい低音のパンチも合わせ持っている。音の広がりも良く、エントリークラスでは要注目のブランドだろう。
HIFIMAN ANANDA NANO
老舗のHIFIMANはトップラインの「ANANDA」の新型となる「ANANDA NANO」が展示されていた。価格は未定だが9万円ほどだという。5年ほどラインナップしていたANANDAにNEO "スーバーナノ振動板"技術を採用して刷新した製品のようだ。音質は透明感が高く解像力が高いという印象だ。ハイクラスのヘッドホンらしく空間表現力にも優れているのが特徴だ。
ポタフェスと趣向を変えた展示
アユートは新規展示はなかったが、ラインアップをケーブルやイヤーパッドの違いで並べて比べてみるというユニークな展示をしていた。本イベントの前身はポタ研というマニア度が強いものだったのだが、それを意識した形だ。例えばマエストローディオ「MA910SR」にバランスケーブル(未発売)を装着したものと、元々バランス用に設計された「MA910B」を比較試聴して、一般製品とバランス向け製品のチューニングの違いを聞いてもらうという内容。前週にポタフェスがあったので、ひと工夫して違う角度で見てもらうというアプローチは面白いと思う。
注目のデスクトップ向けブランドFerrum Audio
エミライは、Ferrum Audioを中心にしたオーディオシステムを展示した。システムはFiiO「R7」をソースとして、新D/Aコンバーター「WANDLA」、ヘッドホンアンプ「OOR」、DCパワーサプライ「HYPSOS」で構成されたものだ。筆者はFiiO「FT3」で試聴した。聴いてみると、驚くほど透明感が高く、鮮明なサウンドだった。また、WANDLAが特徴とするSignalystのデジタルフィルターの効きが良いのも印象的だった。ESS Technologyの内蔵デジタルフィルターと比べても濃い音で、豊かなサウンドとなる。まさにHQ Playerを内蔵したかのような音質と言えるかもしれない。
Meze AudioのCEOも来日
ヘッドフォン祭には世界から人々が集まってくるのも特徴だ。Meze AudioのCEO兼開発者であるアントニオ・メーゼ(Antonio Meze)氏も来日。イベントでは新製品はないのだが、話を伺ってみると、精力的に開発を続けているようだった。Meze Audioファンの方々は期待していても良いだろう。
全体を通してみると、完全ワイヤレスイヤホンより有線のイヤホンやヘッドホンの展示が目立っていたように思う。注目すべき新ブランドもいくつか見かけた。前週のポタフェスに比べると、よりマニアックな側面を感じられたのも面白い。この業界もまた活気付いてきたように感じられたイベントであった。
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