唾液腺、脳に影響を与える臓器であると判明 唾液中の脳由来神経栄養因子が、抗不安作用を示すと発表

@Press / 2019年10月8日 16時30分

神奈川歯科大学大学院歯学研究科口腔科学講座環境病理学 槻木恵一教授、鶴見大学歯学部口腔病理学講座 斎藤一郎教授、東京医科大学低侵襲医療開発総合センター 杉本昌弘教授の共同研究により、唾液腺で産生される脳由来神経栄養因子(BDNF)が、海馬でグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD1)を増加させGABAの産生を増加することを示し、オープンフィールドテストと高架式十字迷路でマウスに行動変容が生じ、抗不安作用が亢進していることを発見しました。この報告は、International Journal of Molecular Science 2017 Sep 5;18(9). pii: E1902. doi: 10.3390/ijms18091902.で公表しました。
また、第61回歯科基礎医学会学術大会( http://www.kokuhoken.jp/jaob61/ )学術シンポジウム「臓器間ネットワークの基礎的研究と健康寿命の延伸」2019年10月13日東京で、神奈川歯科大学大学院歯学研究科口腔科学講座唾液腺健康医学 猿田樹理准教授が発表します。


【研究の背景】
唾液腺は、様々な物質を産生し唾液として分泌し、口腔の機能維持に重要なことが知られています。また、分泌された唾液は飲み込まれますが、その前にお皿状になった舌下部に溜まります。舌下部は、粘膜が薄く、毛細血管の豊富な部位であり、舌下錠の投与部位でもあり、舌下部は、薬剤を含め様々な物質を吸収し全身に送ることができます。特に肝臓での代謝を受けない経路なので、薬物の効果性や即効性が高いという特徴があります。神奈川歯科大学大学院歯学研究科口腔科学講座環境病理学 槻木恵一教授らは、島津製作所製のin vivo 光イメージング装置 Clairvivo OPT plusを用いて、舌下部より脳由来神経栄養因子(BDNF)を投与したところ、BDNFが脳全体に移行することを画像で明らかにしました。
しかし、唾液腺で産生したBDNFの機能的意義については、充分明らかではありませんでした。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/195601/LL_img_195601_1.jpg
in vivo imaging

【これまでの研究の経緯】
近年、唾液腺が外分泌器官として唾液を口腔に分泌する役割以外に、他臓器との関連を示す報告が増えてきています。この様に唾液腺は他臓器との関連で新たな生理的役割や病態との関連などこれまで以上に学問的問いを提供する臓器となっています。特に、唾液腺は、上皮成長因子や神経栄養因子の発見となった臓器であり、多数の成長因子が産生される臓器です(表1)。しかし、唾液腺由来の成長因子が、口腔だけに機能性を発揮しているとするには、あまりに数が多く、全てを説明できません。唾液腺が産生する成長因子の全身への役割を臓器間ネットワークの視点から科学的解明することは非常に興味深い研究課題です。
神奈川歯科大学大学院歯学研究科口腔科学講座環境病理学 槻木恵一教授の研究グループは、これまで、唾液腺でBDNFが、ストレス時に増加し、血中BDNF濃度を増加させる重要な臓器である事を報告してきました。


【今回の研究成果】
唾液腺にBDNFを高発現するトランスジェニックマウスを開発し特徴を解析しました。興味深いことに、このトランスジェニックマウスは、血中BDNFと海馬での総BDNF量の軽度増加が認められ、高架式十字迷路およびオープンフィールドテストにおいて、抗不安行動を示しました。すなわち、唾液腺BDNFは、血液に移行後、海馬でのBDNF量を増加させ、BDNFレセプターであるTrkBのリン酸化が亢進しグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD1)を増加することで、グルタミン酸からGABAの産生が増加し、抗不安的な行動変容を起こすことを突き止め、世界で初めて唾液BDNFの機能的意義を明らかにしました。この成果は、International Journal of Molecular Science 2017 Sep 5;18(9). pii: E1902. doi: 10.3390/ijms18091902.で公表しました。
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/195601/img_195601_2.jpg
唾液腺-脳臓器間ネットワークの概要

【研究成果の意義】
唾液腺産生物質は、肝臓の代謝を受けず唾液が出続ける限り機能性の高い状態で脳に移行して、脳神経細胞に作用できることが明らかになりました。唾液腺は脳とは近接しており、唾液腺は脳に影響を与える臓器であるという、これまでにない新しい概念を示した研究といえます。唾液には様々な機能性の高い物質が多数含まれることから、唾液は脳へのアンチエイジング効果が期待できます。
今後、唾液腺-脳臓器間ネットワークの詳細なメカニズムを解明し、その破綻が脳機能へどの程度影響するかや精神疾患の発症など病態形成との関連についての検討を行う予定です。


【用語説明】
<BDNF Brain-derived neurotrophic factor 脳由来神経栄養因子>
NGFファミリーの一つ。海馬に特に多く、記憶に関与し、神経細胞の機能の維持などに重要な物質である。BDNFの減少は、統合失調症、認知症、うつ病などで認められる。

<GAD1 Glutamic acid decarboxylase 1 グルタミン酸脱炭酸酵素>
グルタミン酸の代謝酵素で、抑制性神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)を合成する酵素として発見された。

<GABA gamma-Aminobutyric acid γ-アミノ酪酸>
抑制性の神経伝達物質。GABAの量を増加させる薬は、主として鎮静、抗痙攣、抗不安作用を有している。


【表1 唾液腺に認める成長因子】
EGF :Kaibogaku Zasshi. 2001 Apr;76(2):201-12.
NGF :Microsc Res Tech. 1994 Jan 1;27(1):1-24.
BDNF:Histol Histopathol. 2010 Oct;25(10):1317-30. doi:
10.14670/HH-25.1317.
NT-3:Yonsei Med J. 2012 Nov 1;53(6):1085-92. doi:
10.3349/ymj.2012.53.6.1085.
HGF :Pathol Int. 2003 Dec;53(12):815-22.
FGF :J Mol Histol. 2015 Oct;46(4-5):421-9. doi:
10.1007/s10735-015-9631-6. Epub 2015 Jul 15.
VEGF:J Oral Rehabil. 2002 Jan;29(1):105-7.
TGF :J Immunoassay. 1995 Nov;16(4):379-94
IGF :Histochemistry. 1988;89(4):403-10.


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