リポソーム製剤の臨床開発の加速に向けて米メルク社と提携
@Press / 2020年5月27日 10時30分
富士フイルム株式会社(社長:助野 健児)は、薬剤を患部に届けるドラッグ・デリバリー・システム(DDS)技術を応用したリポソーム製剤の臨床開発を加速させるため、米国Merck&Co.,Inc.(以下 米メルク社)と提携します。5月25日、当社が開発中のリポソーム製剤「FF-10832」と米メルク社の抗PD-1抗体「キイトルーダ®」(免疫チェックポイント阻害剤*1、一般名:ペムブロリズマブ)の併用療法を評価する臨床試験の実施に関する契約を締結しました。本契約に基づき、進行性固形がんを対象に、「FF-10832」と「キイトルーダ®」の併用療法を評価する臨床試験を2020年度中に米国で開始する計画です。
◆詳細はWebページをご覧ください。
⇒ https://www.fujifilm.com/jp/ja/news/list/4978?link=atp
リポソーム製剤は、細胞膜や生体膜の構成成分である有機物のリン脂質などをカプセル状にした微粒子(リポソーム)の中に薬剤を内包した製剤で、有効成分を効率的に患部に届け薬効を高めることができると期待されています。
「FF-10832」は、膵臓がんなどを適応症とする抗がん剤「ゲムシタビン」*2を内包したもので、現在、米国で進行性固形がんを対象に臨床第Ⅰ相試験を実施しているリポソーム製剤です。すでに実施したマウス実験では、「FF-10832」と免疫チェックポイント阻害剤との併用投与*3で大幅に、がん細胞などを殺傷するCD8陽性キラーT細胞*4ががん組織内で増加し、単剤投与よりも生存期間が延びることが確認されています。
今回、富士フイルムは、「FF-10832」と「キイトルーダ®」との併用による臨床効果を確認するため、米メルク社と提携します。両剤の併用療法を評価する臨床試験を2020年度中に米国で開始し、忍容性や薬物の体内動態、初期の有効性を確認していきます。
富士フイルムは、独自の技術を活かして、アンメットメディカルニーズに応える新薬開発に取り組むとともに、新規のDDS技術を開発することで、新たな価値を創出し、社会課題の解決に貢献していきます。
*1 免疫細胞の働きを弱める機構(免疫チェックポイント)を阻害することで、活性化された免疫細胞が、がん細胞を攻撃して効果を示す薬剤の総称で、悪性黒色腫、肺がん、胃がん、腎がんなどに幅広く用いられる。現在、免疫チェックポイント阻害剤には、抗PD-1抗体や抗CTLA-4抗体などがある。
*2 米国イーライリリー社が開発した抗がん剤(一般名:ゲムシタビン、製品名:ジェムザール)。膵臓がんの第一選択薬として用いられ、その他にも幅広いがん(肺がんや卵巣がんなど)に用いられている。
*3 「FF-10832」と抗CTLA-4抗体との併用投与。
*4 免疫応答を行うT細胞の一種で、宿主にとって異物になる細胞を認識して破壊する。
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