富士フイルム 再生医療ベンチャーのリジェネフロ社へ出資
@Press / 2020年6月5日 9時0分
富士フイルム株式会社(社長:助野 健児)は、iPS細胞を用いて腎疾患の治療法の実用化を目指す再生医療ベンチャーのリジェネフロ株式会社(以下、リジェネフロ社)の第三者割当増資を引き受け、同社に1億円を出資しました。また、今回の出資にあたり、リジェネフロ社が研究開発を進めている再生医療製品の開発・製造受託と創薬支援用細胞の販売に関する業務提携契約も同社と締結しています。
◆詳細はWebページでご覧ください。
⇒ https://www.fujifilm.com/jp/ja/news/list/4995?link=atp
腎臓は、血液をろ過し不要な老廃物などを尿として排出する機能を有しており、その機能が一度失われると回復せずに腎不全などの腎疾患に至ります。現在、腎疾患に対する根本的な治療法は確立されておらず、人工透析や腎臓移植による治療が行われていますが、患者の身体的・経済的負担が大きく、また移植のための臓器も不足しています。このような中、新たな治療手段として、腎臓の元となる細胞の一種で、腎臓の修復や再構築が期待できるネフロン前駆細胞*1の応用が注目されています。しかしながら、ネフロン前駆細胞は、ヒトでは出生前に消失するため、確保することが困難であるという課題があります。
リジェネフロ社は、京都大学発の再生医療ベンチャーで、iPS細胞を用いた腎疾患の治療法を確立することを目的に設立されました。リジェネフロ社は、京都大学の長船健二教授が開発した、iPS細胞からネフロン前駆細胞への高効率な分化誘導技術を用いてネフロン前駆細胞を安定的に作製することに成功。現在、本細胞を用いて、腎疾患の再生医療製品の研究開発を進めるほか、腎毒性のスクリーニングが可能な腎臓オルガノイド*2を作製し創薬への応用研究にも取り組んでいます。
今回、富士フイルムは、リジェネフロ社が有するiPS細胞由来ネフロン前駆細胞の作製技術・ノウハウへのアクセス、同社との連携強化によるビジネス拡大を図るため、同社に出資しました。また、出資にあたって締結した業務提携契約を通じて、リジェネフロ社が研究開発を進める再生医療製品の開発・製造受託と創薬支援用細胞の販売に関する優先交渉権を獲得しています。尚、本交渉権は、iPS細胞由来ネフロン前駆細胞を用いた再生医療製品のプロセス開発・製造を米国で受託する権利と、同細胞を創薬支援向けに国内で販売する権利などに関するものです。
今後、富士フイルムは、自社再生医療製品の研究開発を加速させるとともに、再生医療製品の受託ビジネスや創薬支援用細胞の販売などを通じて、さらなる事業拡大を図っていきます。
富士フイルムは、幅広い製品開発で培い、さらに進化させてきた高機能素材技術やエンジニアリング技術と、日本初の再生医療製品を開発・上市した子会社の株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングの治療用細胞の生産技術、iPS細胞の開発・製造・販売のリーディングカンパニーである米国子会社FUJIFILM Cellular Dynamics, Inc.のiPS細胞関連技術・ノウハウ、細胞培養に必要な培地の開発・製造・販売を担う富士フイルム和光純薬やFUJIFILM Irvine Scientific, Inc.の培地技術などを活用して、事業成長を図るとともに、再生医療の産業化に貢献していきます。
*1 腎臓前駆細胞の一種で、胎児期の腎臓に存在する。尿の濾過機能をもつ糸球体や、尿の再吸収を行う尿細管へと分化し、ヒトでは出生前に消失する。
*2 試験管内で分化誘導した、腎機能をもつ組織のこと。
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