1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. プレスリリース

武田科学振興財団、「2013年度 武田医学賞」受賞者を発表

@Press / 2013年9月27日 10時30分

 公益財団法人 武田科学振興財団(理事長 横山巖:所在地 大阪市中央区)では、このほど「2013年度 武田医学賞」を下記の2氏に贈呈することを決定しました。
 受賞者には、賞状、賞牌・盾のほか一件につき1,500万円の副賞が贈呈されます。
 なお、贈呈式は、11月12日(火)午後6時よりホテルオークラ(東京)において行います。
 「武田医学賞」は、医学界で顕著な業績を挙げ、医学ならびに医療に優れた貢献を果たされた学者・研究者に贈呈されるもので、1954年、武田薬品工業株式会社の創業170周年記念事業の一つとして設けられ、1963年、当財団の設立と同時に継承され今日に至っています。
 今年で57回目を迎える「武田医学賞」の受賞者総数は、本年度を含めて117名となります。


<坂野 仁 博士(さかの ひとし)>
東京大学 名誉教授(65歳)
 受賞テーマ:「嗅覚系における神経地図形成の基本原理の解明」

<米田 悦啓 博士(よねだ よしひろ)>
独立行政法人医薬基盤研究所 理事長(58歳)
 受賞テーマ:「核―細胞質間分子輸送機構解明に基づく高次生命機能の理解
        に関する研究」


■坂野 仁 博士 略歴
<学歴・職歴>
1971年3月 京都大学理学部卒業
1976年3月 京都大学大学院理学研究科生物物理学専攻 博士課程修了
1976年3月 学位取得
1976年4月 京都大学化学研究所 日本学術振興会特別研究員
1976年9月 カリフォルニア大学サンディエゴ校 化学部博士研究員
1978年1月 スイスバーゼル免疫学研究所 研究員
1982年7月 カリフォルニア大学バークレー校免疫学部 助教授
1987年7月 同 准教授
1992年7月 同 教授
1994年7月 東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻 教授
2012年4月 同 特任研究員、名誉教授
2013年4月 福井大学医学部高次脳機能 特命教授

<賞罰>
1993年8月 MERIT Award(NIH, USA)
1997年3月 日産科学賞(日産財団)
2013年3月 東レ科学技術賞(東レ科学振興会)


■坂野 仁 博士の研究業績

受賞テーマ:「嗅覚系における神経地図形成の基本原理の解明」

 坂野 仁博士は長年、免疫系に於ける抗原受容体遺伝子の再構成と多様化の研究に携わってきたが、多様性の識別という観点から高等動物の嗅覚系の研究を開始し、ここ10年余りの間に数々の目覚ましい発見を行なった。嗅覚系が多様な匂い情報を識別するからくりは、リガンドである匂い分子とそれを検出する嗅覚受容体との結合情報が、脳の前方部にある嗅球に於いて二次元画像に変換される事にある。高等動物では鼻腔にある数百万個の嗅神経細胞の各々が、約一千種類ある嗅覚受容体の内から一種類を発現し(1神経・1受容体ルール)、発現する受容体の種類に従って軸索を嗅球表面の特定の場所に糸球体を形成して投射する(1糸球体・1受容体ルール)。従って嗅上皮で受容された匂い情報は、嗅球で形成されるいわば一千画素からなる糸球地図というデジタル画面に糸球の発火パターンとして画像展開され、これをもとに脳の中枢がその質感を判断していると考えられている。坂野博士はこの情報変換の基盤となる2つの基本ルールの分子基盤を世界に先駆けて解明し、更に最近では、嗅覚情報がどのように情動や行動の判断に結びつくかについても重要な発見を行なった。
 「1神経・1受容体」ルールに関しては、免疫系の抗体遺伝子に見られる対立形質排除の例をもとに、発現される嗅覚受容体分子によって負に制御されるネガティブフィードバックの考え方を導入する事によって、長年懸案であったこの嗅覚系の難問を解決した。一方、「1糸球体・1受容体」ルール、即ち、発現する受容体に従って軸索投射が制御される問題については、ノーベル生理学・医学賞を受賞したコロンビア大学のRichard Axel博士などが、嗅覚受容体は匂い分子のみならず、軸索末端にも発現して投射先をも嗅ぎ分けると提唱し広く受け入れられていた。坂野博士は遺伝子操作マウスを駆使した実験によって、Axel博士等のsmelling-outモデルに異議をとなえ、発現する嗅覚受容体に固有なレベル産生されるcAMPによって軸索投射分子の発現量が決定され、投射位置が制御されている事を示した。坂野博士は最近、この軸索投位置を決定するcAMPの量が、実は個々の嗅覚受容体がリガンドのない状態で、活性化状態と不活性化状態を自律的に行き来する、分子ゆらぎの平衡点によって固有に決められているという驚くべき発見を行った。これは神経個性を決めるdeterminantが、高等動物の中枢神経系において実体として解明された最初の例であり、脳における神経配線がどの様にして組み上げられていくのかという神経科学研究の中心課題の解明に大きく貢献するものである。


■米田 悦啓 博士 略歴

<学歴・職歴>
1981年 3月 大阪大学医学部医学科 卒業
1985年 3月 大阪大学大学院医学研究科 修了
      大阪大学 医学博士
1986年 1月 大阪大学細胞工学センター 助手
1991年 9月 大阪大学細胞工学センター 助教授
1992年12月 大阪大学細胞生体工学センター 教授
1993年 2月 大阪大学医学部 教授
1999年 4月 大阪大学大学院医学系研究科 教授(配置換)
2002年 4月 大阪大学大学院生命機能研究科 教授
      大阪大学大学院医学系研究科 教授(兼任)
2011年 4月 大阪大学大学院医学系研究科 研究科長・医学部長
2013年 4月 独立行政法人 医薬基盤研究所 理事長・所長
2013年 7月 大阪大学 名誉教授

<賞罰>
2009年11月 日本医師会医学賞


■米田 悦啓 博士の研究業績

受賞テーマ:「核―細胞質間分子輸送機構解明に基づく高次生命機能の理解に
       関する研究」

 ヒトの細胞をはじめ、真核細胞の最も大きな特徴の1つは、細胞核(以下 核と呼ぶ)、ミトコンドリア、小胞体など、細胞内小器官(オルガネラ)という機能的コンパートメントを持ち、それぞれが独自の機能を果たしながら、細胞全体として調和のとれた生命機能を営んでいることです。核は、細胞全体からの情報を収集するとともに、核内の遺伝子発現などの情報を細胞全体に送り出す必要があり、細胞の「司令塔」として働きます。核は、核膜という膜によって細胞質と隔てられていますので、細胞が機能するために、核膜に存在する核膜孔を通して、核と細胞質の間を様々な分子が輸送されています。その輸送の分子メカニズムを解明することは、細胞内シグナル伝達の問題をはじめ、様々な生命機能を理解する上で極めて重要と言えます。米田博士は、1985年に大阪大学大学院医学研究科博士課程を、細胞融合現象発見で有名な岡田 善雄教授の指導の下で修了した後、核-細胞質間分子輸送メカニズムの分子基盤を解明することを目的として研究を推進し、日本における核-細胞質間分子輸送研究の第一人者として、また、世界のトップランナーの一人として活躍しています。
 核で機能する蛋白質(核蛋白質)は、核へ移行するために働く核局在化シグナルと呼ぶ配列をその分子内に持っています。米田博士は、その配列を含む合成ペプチドを任意の蛋白質に化学結合させることにより、その人工的結合物が天然の核蛋白質と全く同じ細胞内挙動をとることを、哺乳動物培養細胞を利用して明らかにしました。さらに、この合成ペプチドを利用する方法を用いて、核蛋白質は、細胞質において安定な複合体を形成してから核膜孔にまで到達することを世界で初めて発見し、核膜孔ターゲティング複合体と名付けました。また、この複合体を構成する2つの必須因子(importin α, importin β)を世界の研究者と競うようにして発見しました。
 その後、サイトカインシグナル伝達・転写因子のSTAT1やSmad3、小胞体から核への情報伝達に関わる転写因子SREBP-2、あるいはβ-cateninといった細胞内情報伝達因子に焦点を当て、それぞれが異なる経路で輸送されることを明らかにしました。これらの新しい発見は、核-細胞質間分子輸送経路には多様性があることを明確に実証したものであり、このような幅広い解析は、世界の追随を許さない、突出した業績です。さらに、最近では、核輸送因子と細胞分化に着目した研究を、マウスES細胞を利用して進めました。その結果、マウスES細胞を神経細胞へと分化誘導を行った際に、大きく3つのサブタイプに分類されるimportin αの発現が、α1からα5へとスイッチすることを見出し、そのスイッチングが細胞分化に極めて重要な役割を果たすことを証明しました。これらの結果は、核輸送因子の発現変化が、細胞の運命決定に深く関わることを示した世界で最初の画期的発見です。
 一方、輸送因子importin βがどのようにして異なる多数の分子の核内輸送に関わることができるのかを理解するため、X線結晶構造解析を行いました。その結果、importin β/SREBP-2複合体のX線結晶構造解析に成功し、その構造は、importin βが“積荷分子”を直接認識する様式の原型であることがわかり、大きな注目を浴びました。また、マイクロRNA前駆体/exportin 5/RanGTP複合体のX線結晶構造解析にも世界で初めて成功しました。
 以上のように、米田悦啓博士は、細胞生物学、分子生物学、生化学、発生生物学、構造生物学といった幅広い研究分野を融合させ、核-細胞質間分子輸送メカニズム研究における世界の第一人者として、医学・生命科学における新しい研究分野を開拓してきました。


■FAQ
Q.武田医学賞は国際賞ですか?
A.武田医学賞は日本人研究者を対象に贈呈しております。国際賞ではありません。

Q.武田医学賞の選考方法は?
A.財団理事、評議員、名誉顧問、武田医学賞選考委員、武田医学賞受賞者、日本学士院会員(第7分科)、日本学士院賞受賞者(1999年以降医学関連)の89名からの推薦をもとに、9名からなる選考委員会で公正に決定いたします。
今回は12名からの選考でした。
選考委員長は岸本 忠三 先生(元 大阪大学 総長)にお願いしています。
その他8名の選考委員については公表を控えさせていただいております。

Q.武田医学賞の起源について教えてください。
A.1954年、武田薬品工業株式会社の創業170周年記念事業の一つとして和敬翁(五代武田長兵衞氏)の発意を受け、六代武田長兵衞氏により武田医学賞の褒賞事業が始まる。1963年、武田科学振興財団設立。武田医学賞を武田薬品工業株式会社から当財団に移管。

Q.武田科学振興財団の財源は?
A.1963年財団設立以来の武田薬品工業株式会社の寄附金、および1980年、武田 彰郎氏(当時武田薬品工業株式会社副社長)の遺志により寄贈を受けた同社株式の配当金が基盤になっています。
当財団は、同社株式の2.27%を保有する第4位の株主です(2013年3月末現在)。


詳細につきましては武田科学振興財団ホームページ( http://www.takeda-sci.or.jp/ )をご覧ください。

@Pressリリース詳細ページ
提供元:@Press

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください