植物のストレス応答を制御する化合物の開発に成功 ~ 乾燥などの環境ストレスによる作物生産性低下の克服に向けた新技術 ~

@Press / 2014年5月7日 9時30分

図1.ABAのシグナル伝達メカニズム
 国立大学法人 静岡大学(学長:伊東 幸宏)の轟 泰司教授および博士課程の竹内 純大学院生と国立大学法人 鳥取大学(学長:豐島 良太)の岡本 昌憲助教らは、植物のストレスホルモン(※1)として知られるアブシジン酸(ABA)受容体の立体構造(※2)を緻密に解析することで、ABA受容体の機能を阻害する新奇化合物の創出に成功しました。ABAの作用を打ち消す化合物は世界初であり、これまでにない全く新しいタイプの農薬開発へと展開できる可能性があります。本研究が発展することにより、乾燥などの環境ストレスによる作物生産性低下を緩和できることが期待されます。

 本研究は、静岡大学、鳥取大学、東京農業大学および理化学研究所を中心とした国際共同研究グループ(※3)による研究成果で、米国科学雑誌「Nature Chemical Biology」の掲載に先立ち、5月5日の週にオンライン版にて発表される予定です。


【ポイント】
・植物ストレスホルモン受容体の立体構造の情報を利用した新しい農薬開発法を提唱
・単純な化学合成法により、ストレス応答を抑制する化合物の創出に成功
・遺伝子組換え技術に頼らずに、乾燥などの環境ストレスによる作物の生産性低下を解決する新技術


■背景■
 植物ホルモンとして知られるアブシジン酸(ABA)は、植物自身が生産し、乾燥ストレス時には気孔を閉鎖して葉からの水の過剰蒸散を抑制し、ストレス耐性を誘導する重要なシグナル物質として知られています。

 しかし、ABAには良い面ばかりではなく、適切な量を超えた過剰なABAは農業における様々な負の問題をもたらします。例えば、乾燥や低温などのストレスによって蓄積される過剰なABAが花粉の形成を阻害し、イネやコムギなど穀物の収量低下をもたらすことが広く知られています。また、日本の北陸地域では、低温で誘導されるABAがイネのいもち病の罹病を促進していることが報告されています。

 このようなABAの負の作用を解決する技術が世界で待ち望まれていました。遺伝子組換え技術を用いてこれらの問題を解決する試みも世界的に広く研究されていますが、日本やヨーロッパ諸国では遺伝子組換え作物の利用が制限されていることや、実用品種には遺伝子組換え作物の作製が困難なものも多数存在するために、現段階ではその利用は限定的です。そこで研究チームは、遺伝子組換え技術に頼らない方法として、ABAの作用を抑制する化合物(農薬)の創出に挑みました。

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