【短評】「シートは素晴らしい!それ以外の車内は最悪!」 フォード「マスタングGT」

Autoblog JP(オートブログ) / 2013年8月24日 17時0分

【短評】「シートは素晴らしい!それ以外の車内は最悪!」 フォード「マスタングGT」

Gallery: 2014 Ford Mustang GT: Quick Spin Photos



先日、筆者の家に魅力的な「マスタングGT」の2014年型モデルが届けられた。もちろん、試乗用なのだが、ほぼ1年ぶりに5.0リッターV型8気筒エンジンを搭載したマスタングGTのハンドルを握れるのは、筆者にとってはこの上なくうれしいことだ。早速、試乗のスケジュールを立てて、久しぶりにこの保守的と言われているモデルのドライバーズシートに身を沈めることにした。天候にも恵まれ、1週間で走行した距離は400マイル(約640km)に及んだ。長距離をクルマで通勤している人たちにとっては、たいした距離ではないのだろうが、自宅で仕事をしているライターの筆者にとっては、かなりの走行距離だ。
この2014年型の5.0リッター車は、2013年型から基本的なスペックは変わっていない。フォードは2013年型からマスタングGTに大幅な変更が加え、フレッシュ感を演出した。しかし、次世代のマスタングGTが2015年にデビューする予定であるため、この第5世代のポニーカー(2ドアの4シーター)には、数えられるほどの変更しか施されていない。新色を追加(オックスフォードホワイトとルビーレッドメタリック)したこととトリムとホイールの見直しをしただけだ。ただし、残念な変更もあった。フォードはマスタングのラインアップからハイパフォーマンスモデルであるBoss 302を削るという決定をしたのだ。2014年型でレーストラックでの記録を狙いたい人には、試乗車に装備されていたGT トラックパッケージ(オプション)を選択する必要があるだろう。なお、2015年に第6世代がデビューする際には、限定発売でBossが復活するとのことだ。 フォードの5リッターV型8気筒エンジンは決して時代遅れになることはない。最高出力420hp、最大トルク53.92kgmの"コヨーテ"(エンジンの愛称)は、この排気量からは想像できないほど、素早くレッドゾーンまで吹き上がる。そのリッチな音色は、エンジンの回転数が5000rpmを超えるとわずかに乗るエッジといい、アイドリング中のけだるいうなり声といい、どのスピードでも走る喜びを感じさせてくれるサウンドだ。また、試乗初日に今さらながら思い知らされたことがある。5.0リッターのマスタングは、すさまじくスピードが出る車だということだ。ありふれた車のように見えるが騙されてはいけない。本格的なパフォーマンスを発揮するマシンなのだ。

6速マニュアルのトランスミッションのシフトノブはかなり大きい。シフトチェンジの度にカチっというメタリックな、いい音がする。ゲートの間隔はちょうどよく、ストロークも短い。このがっちりとしたギアボックスを操作することは概ね楽しかったが、クイックなシフトチェンジをしたいとき、特にシフトダウンする時には不満が残った。軽く、より正確なシフトチェンジができるようになると、なお素晴らしいと言えるだろう。クラッチは全然重くなくて現代的。大きなトルクのおかげでGTを、紳士的に動かすことも、あるいはタイヤからスモークを上げることも、好みや状況に応じて簡単にできる。

このコラムの冒頭にも書いたように、著者が試乗したマスタングには、優れもののGT トラックパッケージが装備されていた。ベース価格に2450ドル(約23万8000円)を上乗せすることになるが、この価格は週末にサーキットでマスタングGTを走らせたいオーナーや将来的にGTを大幅にアップグレードしたいという人にはとっては、十分な価値があるだろう。2014年モデルのラインアップにはBossがないために、このパッケージにはBoss302の魅力が少しだけ詰まっている。自動車専門サイトの編集者が筆者に「Bossの"子分"にしては上出来だ」と話していたのだが、あながち間違いではない。しかし、このパッケージで最も注目すべき点は、大きなブレンボ製ブレーキと、ヘリカルギアを使用し、よりアグレッシブなトルクバイアス比3.73:1のトルセンLSDが含まれていることだろう。1週間の試乗期間中、コーナーを何度も速いスピードで走ったり、田舎まで足を伸ばしてみたが、GTトラックパッケージを装備すると、ベースカーよりスポーツカーらしさが増すと確信した。実際にトラックを走る際には、このパッケージに含まれる高性能ラジエター(Boss 302と同じ物)やエンジンオイルクーラーがより高い冷却性能を発揮するはずだ。

GTトラックパッケージには含まれていないが、試乗車にはレカロ製の布張りのレーシングシートがオプションで装備されていた。お値段は1595ドル(約15万5000円)。メディアに提供されるマスタングには、座り心地の良い革張りのシートが装備されていることが多いのでレカロ製のシートはイマイチというイメージだったが、乗っているうちにすっかり気に入ってしまった。縫製はシンプルだが、安っぽく見えることはない。ドライバーはシートボルスターでしっかりと固定されるが、腰のあたりが締めつけられるような感覚はなかった。著者はXLサイズの服を着用するほど大柄なのだが、問題なくフィットしていた。ただし、150マイル(約241km)以上の距離を乗り回していると、腿のあたりにシートのフレームが食い込んでくる(筆者だからかもしれないが...)。レカロ製のシートは長距離ドライブに最適だとは言えないが、日常使いや峠道を攻めるときには最高だ。

遠出をした際に、燃費をチェックしてみた。アメリカ環境保護庁(EPA)が試算した高速走行で26mpg(約11.1km/ℓ)はなんなくクリア。ただし、時速70マイル(約113km)前後のクルーズ走行をしていた場合である。著者が普段、高速道路で出しているスピード、75mph(約121km)から80mph(約129km)で走行すると、21mpg(約8.9 km/ℓ)まで落ちた。市街地走行では、ほぼ11mpg(約4.7km/ℓ)だったが、これはエキゾースト音を聞きたいばかりに、何度も低いギアのまま高回転にして走らせていた影響もあるだろう。市街地走行の17mpg(約7.2 km/ℓ)は、頻繁に4速までシフトアップしていれば、可能な数字だと思う。走りは退屈だろうが。

シートの素晴らしさについては、すでに述べたとおりだが、インテリアはかなり流行遅れだ。特にナビのスクリーンがないために、グレーとブラックのパネルだけが目の前に広がっている。フォードの音声コントロールシステム「SYNC」が搭載されているのだが、フォードが最近復活させた物理的なボタンやノブを使って、iPodなどにダウンロードした音楽を車内で聞くことさえ、かなり難しかった。また、音声コントロールシステムそのものが、最新型のキャデラックのインターフェイス、CUE(iPadのようにスクリーンを指先で操作)に比べると、恰好が悪いとしか言いようがない。『Autoblog』の執筆陣や米消費者情報誌『Comsumer Report』は、CUEを評価していないようだが、タッチスクリーンを採用していないチープなSYNCを1週間利用してみると、CUEの先見性がいい意味で素晴らしいと感じられた。ちなみにiPhoneもiPodも認識されたり、されなかったりとばらつきがあったことも記しておきたい。どうにか音楽を再生できても、サウンドシステムのパワー不足と音質の悪さが気になる。V型8気筒エンジンのサウンドが古びていると感じなかったことが本当に救いだった。

【基本情報】
エンジン: 5.0リッターV型8気筒エンジン
パワー: 最高出力420hp/最大トルク53.92kgm
トランスミッション: 6速マニュアル
駆動方式: 後輪駆動
車両重量: 1,641kg
座席数:2+2
荷室容量:379ℓ
燃費:市街地 17mpg(約7.2km/ℓ)、高速道路 26mpg(約11.1km/ℓ)
ベース価格:3万750ドル(約300万円)
試乗車価格:3万7525ドル(約366万円)

By Seyth Miersma
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
監修:日下部 博一

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