【試乗記】YAMAHA SR400 「A memory on a far day is revived」:今井優杏

Autoblog JP(オートブログ) / 2016年7月14日 13時0分

【試乗記】YAMAHA SR400 「A memory on a far day is revived」:今井優杏


 かつて、燃えるような恋をした。
 若さゆえの、なにもかもを吸収するような、欲望も我儘も嫉妬もいっしょくたに寸胴鍋でじっくりコトコト煮込みました!みたいな、幼いからこそ激しくも集中した恋である。
共に過ごした時間、逢えないもどかしさ、思い通りにならないコミュニケーション。だからこそ、余計に相手が愛おしかった、あの日々。
そしてある日、大人になった私は、風の便りで彼のことを聞いた。

「ずいぶん変わってしまったらしいよ」

 その落胆と動揺を、どう表せばいいのか。
 彼だけは、変わらないでいてほしかった、いや、変わらないと心のどこかで信じていた。嘘であってほしいと思ったけれど、私だってこんなに変わってしまったのだ、仕方がないのかもしれない。時間というものはときに、残酷なものだ。
 しかし、そんな落胆をよそに10年以上の時を越えてふと再会した彼は、ああ、まごうかたなき彼そのものだった。そう、時代の流れとともにしなやかな進化を遂げてはいたのだけど、どこまでも彼らしさを留めたままでいてくれたのだ。あの頃みたいに。むしろ大人びた感じで、どこか余裕すら漂わせて、もっと魅力的になって。


ヤマハSR400である。
 今でこそ自動車評論家という仕事に就いている私であるが、女子大生時代に親のスネかじりで普通自動車免許を取ったその真意は、なんとバイクの免許(普通自動二輪免許)を安く取るための策略的口実であった。


 そしてそのバチあたりな衝動を起こさせたツミな彼、それがSR400だったんである。
なんともいえない、バッタみたいなシンプルな外見。必要なもののなにも装備されていない潔さ。ビッグシングルの楚楚とした佇まいは、硬派であると同時にアートのように華やかでもある。
参っちゃった。一目惚れだった。
 免許を取った私はSR400を2台乗り継いだ。一台目はいわゆる"大八(ダイハチ)"と呼ばれるキャストホイールの79年型。2台目は第二世代のドラムブレーキを装備したヤツ。
パンクスやハードロックに傾倒していた当時の私のライフスタイルに、SR400はファッションとしても移動手段としても、完全に寄り添ってくれた。だから、どこにでも一緒に出掛けた。特に2台目のアイツとは、北は北海道から南は九州、本州はもちろんのこと日本中を旅して回った。それが私の、"移動出来る歓び"の原点、哲学的思想の原点、モビリティへの目覚めに繋がったっていう、カッコつけて言うとそんな感じ。

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