【試乗記】BMW i3 可愛い姿にぎゅっとBMWらしい毒が盛り込まれたパッケージ:今井優杏

Autoblog JP(オートブログ) / 2017年2月6日 17時0分

【試乗記】BMW i3 可愛い姿にぎゅっとBMWらしい毒が盛り込まれたパッケージ:今井優杏


 自動車に未来はあるのか。
 要塞のような巨大な工場で、膨大な数の部品を組み上げる自動車は、永きにわたって化石燃料を着実に消費してきた。
 ・・・なんつって、そんなことはエコロジストがヒッピーコミューンに原点回帰して(また静かに流行ってるんですって!)オーガニック野菜を片手に「自動車は敵だ!」なんてデモ行進してるのを見ずとも明らかなことであって、エコカー減税やら免税やらとかいう2次的な消費のメリット以前に当の自動車製造メーカーこそが長期的なスパンで心血を注いでいる問題だ。

 現状、世界で最も厳しいCO2排出規制を敷くEUでは、2020年以降にさらに規制値が強化されるため、2019年までにさらに企業を挙げて排出量を低減させていく必要がある。で、またこれが由々しき問題なのだけど、目の肥えた現代人は、もうすでに知ってしまっているのだ。

『自動車の運転は楽しくなくてはいけない』ってことをね。

 果たして、その相反するように思われるふたつの課題をクリアするために、自動車メーカーは様々な方法でアプローチを進めている。


 なかでも今回ご紹介するi3や、またPHVスポーツカーi8を擁するBMWは、早くから『サスティナビリティー』=『持続可能性』というテーマを掲げてこの「iシリーズ」を打ち出して来た。
振り返れば、CO2排出量を極端に低減させられるこの2つのモデルを世に出すために、クルマそのものだけでなく生産工程までもを見直している点が改めて興味深い。


 iシリーズの生産拠点であるドイツ・ライプツィヒの工場の電力は100%風力発電で賄われ、排水となる水の使用量も70%低減する。米・モーゼスレイクのカーボン・ファイバー工場は電力を豊かな水資源に依る水力発電で賄う。


 内外装にもリサイクル可能な素材を多用し、クルマが生産されて廃車になるまで、生涯にわたる炭酸ガス排出を低減することがロードマップとして描かれているのだから徹底している。
 それらの経緯を経て、2014年から日本にもこのiシリーズが導入されてはや3年。その後新モデルが追加されないことを思えばなかなかの苦戦も垣間見えるのだが、昨年i3に待望のマイナーチェンジが加えられた。
そのキモがバッテリー容量の拡大である。


 成熟しきった内燃機関のタフな航続距離にスポイルされきった現代人にとって、比較してみればEVの航続距離の圧倒的な頼りなさは心配のタネでしかない。それをいかに軽減するかが今後EVの抱える大きな課題だ。


 今回はこれまでの60Ahから94Ahに、実に50%のバッテリー容量のアップがなされた。これにより航続距離を欧州モード値で190kmから300kmに延長している。エアコンが電費を激しく圧迫するというのはすでに電気自動車の定説になっているのだが、今回の拡大によりエアコン使用時でも実に200km以上は走行可能だとアナウンスされているのだから日常使いには魅力的だ。i3にはレンジエクステンダーという航続延長用のガソリンエンジン付きモデルも存在するが、こちらも94Ahにアップされている。
 今回はそのバッテリーを使い切るほどの試乗時間を取れなかったのだが、改めてi3の商品力とコンセプトの力強さを再確認した結果となった。


 まず、やはり何度見てもアイコニックなルックスである。発売から3年を経た今でも決して色褪せることはないし、今でもちゃんと「ちょっと先に進んでる」雰囲気を醸し出しているから、街角で出会うたびにはっとしちゃうのだ。


 このかつてないデザインを可能にした要因こそ、iシリーズのユニークなコンセプトに由来する。バッテリーを床下に敷き詰め、モーターをリアタイヤに挟んだ構造を持つi3、メカニカルだけで言えばボンネットを必要としない。だからこそ叶えられた極端な鼻ぺちゃフェイスは歩行者と乗員の安全保護のために必要なクラッシャブルゾーンを確保するためのものだ。


 その先に鎮座するキドニーグリルだってiシリーズ独自の解釈がなされて、こんなキュートな雰囲気を醸し出す有様なのだけど、このあたりの継ぎ目のない滑らかな造形に使用されているのがiシリーズに多用されたカーボン・ファイバー樹脂。金属にはできない細かなディテイルを再現できるから、リアライト周辺も、ボディに一体化されてつるりと鏡面のように輝いている。前後左右どこから眺めても五感を刺激するような近未来的な佇まいを実現させているのだ。


 さらに、サイドビューでは勇ましい大径タイヤがクルマとしての運動性能の高さを物語るように存在感を示しているのだけど、正面から見たらびっくりするほどに細いのも面白い。i3には専用設計されたタイヤが設定されているのだが、大径はルックス以外にも転がり抵抗低減に、幅狭は空気抵抗の削減に貢献する。つまり、すべてのデザインの方向性がしっかりとエコロジカルというアウトプットに向けられているということだ。


 今回のマイナーチェンジでは、i8に設定されていたプロトニック・ブルーのボディーカラーが追加され、また新たなインテリア・デザインパッケージが2種類追加されているのだが、基本的なデザインの完成度が高いので、逆にどこをどうイジってもオシャンティーな感じが破綻しない。何色がどう追加されたってやっぱりふんわりエエ感じに収まるのが見事だ。特にプレミアムブランドにおいて、こういうエッジィなコンセプトを掲げるモデルは、絶対的にオシャレでなくてはいけない。人を選ぶクルマだからこそ、フツウすぎても、街に馴染みすぎてもいけないのだなと感じる。


 さて、久しぶりにi3の観音開きのドアを開けて乗り込むと、そこにも様々なサプライズが用意されている。


 インテリアは美しくてシンプル、ウッドを多用したその雰囲気は北欧風っぽくも、アメリカ西海岸風っぽくもあり、観葉植物のひとつも置きたいくらいなのだが、それだけじゃない。腰高なヒップポイントに設定されたシートに座ると、窓が大きく視界が大きく開けていて開放的だ。


 操作系は実にコンパクト。ほかのどのBMWにもない、ステアリングの右側根元に備えられた小さなシフトレバーをチョンとDのポジションに押し入れてドライブをスタートさせる。


 クリープがほぼない状態での発進は、最初こそ戸惑うもののオーナーになりさえすれば簡単に慣れると思う。それよりもきっと乗るたびにドキドキさせられるのは、モーターから生まれる鮮烈な加速だと思う。それから、今やi3の代名詞ともなった、強めに設定された回生ブレーキの強さだ。


 ペダルやステアリングは欧州車らしく手応えをしっかりと持たせている。反力も強めなので、この辺は取り回しに軽快感を追求する国産EVと大きく性格を分ける部分だと思う。


 そのかっちりしたペダルを踏み込めばぎゅいん!と背中を蹴るような加速がいきなり始まるのだけど、うわ!と焦ってペダルから足を離せばこれまた再びぎゅいん!と減速Gがドライバーを襲う。あ、そうだったそうだった、i3ってこうなんだった、とじゃじゃ馬っぷりを思い出した。


 それがまたドライバーの攻略心をくすぐるポイントでもあって、今や日産のノートeパワーも謳う『ワンペダルドライブ』=『アクセルペダルひとつで加減速を行える』EVならではのドライブ、を最初に提案してきたのがこのi3だということを、その分野でのパイオニアらしくノートeパワーよりも数段ピーキーな味付けで提供してくれる。改めて試乗して、BMWだからこそできる、市場にスポイルされない孤高の味付けにニヤリとさせられる思いだった。


 もともとカタめだったアシも健在。可愛い姿にぎゅっとBMWらしい毒が盛り込まれたパッケージは、やっぱり何度乗っても鮮烈なものだった。


 あの、映画「プラダを着た悪魔」でその名を馳せた女優アン・ハサウェイはベジタリアンとして、そして熱心な環境保護運動家として知られているのだが、彼女はまだアメリカにi3が正規輸入される前からこのi3のコンセプトとデザインに惚れ込み、なんと個人輸入をしてまで自身の愛車としてガレージに迎えている。ステイタスシンボルとしても魅力的なシティコミューターが、さらに航続距離を伸ばしたとなると・・・ほら、欲しくなった人も多いのでは?

■BMW Japan 公式サイト
http://www.bmw.co.jp/ja/index.html

【ギャラリー】BMW i3 (53枚

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