“買い物上手"日本ハムの深慮遠謀

ベースボールキング / 2018年12月10日 19時30分

◆ 白球つれづれ2018~第41回・意外!?な積極補強

 12月に入って日本ハム球団からの発表が相次いだ。4日にオリックスを自由契約になった金子弌大、翌5日にはメジャーの150キロ腕であるJ・ハンコックと、さらに7日には台湾球界の至宝と呼ばれる王柏融との契約が明らかになった。

 年俸6億円から5億のダウンを宣告された金子には推定(以下同じ)1億5000万円プラス出来高で獲得。王の契約詳細は明らかにされていないが、チームの主砲・中田翔が2億8000万円で更改したとあれば、それ以上の額は考えにくい。だとすれば、2億円プラス出来高あたりが有力視される。

 今オフの日本ハムでは外国人選手との契約交渉が難航中。中でも一昨年の本塁打王であるB・レアードや今季先発ローテーションの一角を担ったN・マルティネスには、このまま退団の情報まで流れている。チームの骨格さえ揺るがしかねないピンチを鮮やかな大物補強でカバーしてしまうのも、このチームらしい。

 さらに付け加えるなら今オフのFA戦線で巨人が前広島の丸佳浩に5年30億円超、前西武の炭谷銀仁朗に3年6億円に加えて自由契約の前オリックス・中島宏之と前マリナーズの岩隈久志までを獲得。その総額はゆうに40億を超えている。楽天は前西武の浅村栄斗に4年25億超など大枚が乱れ飛ぶ中、日本ハムの人件費は前年比減?レアードらの退団に伴う代替え外国人選手を獲得しても大きな損失にはならない。FAのマネーゲームには参加せずに独自の路線を貫いた。「買い物上手」と称される所以だろう。


◆ 垣間見える“したたか”な戦略

 もっとも、この球団では大物選手を他球団から獲得すること自体が珍しい。北海道に本拠地を移転した直後は阪神からメジャーに渡った新庄剛志を招き入れ、ヤクルトから稲葉篤紀(現侍ジャパン監督)らを中心に戦力補強したが、それ以降は若手の育成重視にシフトしてきた。そればかりか、糸井嘉男(現阪神)、小谷野栄一(今季限りでオリックス現役引退)らの高額選手を手放し、ダルビッシュ有、大谷翔平らのエースがメジャー志向なら門戸を開放、それでもこの10年間で3度のリーグ優勝、1度の日本一に上り詰めているのだから大したものだ。

 育成重視から大物補強へ。一見、球団の方針変更にも映る今回の補強策だがそこには大きな施策も見て取れる。日本ハムでは先月、「北海道ボールパーク(仮称)」建設が正式発表された。これまでの本拠地である札幌ドームから北広島市に移転、2020年から着工して3年後の3月に完成予定だ。もちろん、この間にもチーム強化は進められるが、2023年に黄金期を迎えるための長期的な展望も見据えている。その核となるスター候補が清宮幸太郎と今年のドラフト1位・吉田輝星だ。

 清宮の場合は今季7本塁打ながら大器の片鱗はのぞかせている。しかし、シーズン中に右ひじ痛を発症するなどまだ課題も残る。過去の高卒スラッガーである中田翔や筒香嘉智(DeNA)らの例を見ても本格的にチームの主軸に成長するにはもう2~3年が必要と見られる。今夏の甲子園で一躍スターの階段を駆け上がった吉田にしても、快速球を生かすためには鋭い変化球の習得が必須でこちらも2~3年の時間は欲しい。

 現実のチームを直視してみる。マルティネスが退団した場合の投手陣は伸び盛りの上沢直之にかつての新人王である有原航平くらいしか計算できる先発投手はいない。ここに金子が加われば大幅な戦力アップとなる。同じくレアードが抜けた場合でも王がクリーンアップに座れば問題ない。外野陣が近藤健介、西川遥輝、大田泰示で盤石なら指名打者を清宮と競る場合もあり得る。

 王の日本球界参戦には巨人、阪神、西武らの激しい争奪戦が予想された。その中で下馬評にも上がらず隠密作戦を徹底して獲得。金子の場合も他球団が検討を加える矢先に電光石火のプロポーズで手中に収めている。フロントの手腕は賞賛されていい。素早く動き、手頃な値段で獲得にこぎつける。しかも5年後の新球場移転までを視野に入れた戦略だ。日本ハムの来季以降の戦い次第では各チームのFA動向まで影響を及ぼすかもしれない。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)


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※お詫びと訂正(2018年12月10日21時15分)
初出時、選手名の表記に誤りがありました。大変失礼致しました。

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