親からの虐待とネグレクト…児童養護施設で育った青年が、保育士を目指すまで

弁護士ドットコムニュース / 2019年9月4日 12時5分

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日本には、生みの親と離れ、児童養護施設に暮らす2歳〜18歳の子どもたちが約2万5000人いる。また、里親家庭や乳児院などのその他の社会的養護下に置かれている子どもたちを含めると、その数は約4万5000人に上るとみられる。

目下製作中の映画『ぼくのこわれないコンパス』は、そんな児童養護施設で育った一人の青年トモヤ(20)の14歳〜20歳まで、合計6年間の成長を追ったドキュメンタリーだ。本作に出演することを決めたのはなぜか。トモヤに話を聞いた。(エッセイスト・紫原明子)

指揮を執るのは本作が初監督作品となるアメリカ人映像作家、マット・ミラー氏。二人の出会いは6年前、トモヤが施設を通じて参加したNPO主催のキャンプに、マットがスタッフとして参加したことだった。

通常、18歳以下の児童養護施設の子ども達は、親権をもつ親の同意書が必要となることもあり、こういったドキュメンタリーに出演することは難しい。しかし成人したトモヤは、児童養護施設の子ども達を代表し、被写体となることに同意した。

「知り合った人に、自分が児童養護施設で暮らしていると言うと、“どんな悪いことをしたの?”と聞かれることがあるんです。施設がどんなところか知られていないとずっと思っていました。でも、中にいる子どもたちが声をあげることはできません。誤解を解いて、実態を知られるようになるためにも、誰かが声を上げることが必要だと思い、出演を決めました」

●震災で祖母と家を失う

トモヤは2歳の頃から、福島県で漁師の祖父母と暮らしていた。しかし2011年3月に起きた東日本大震災で、祖母と住んでいた家を一度に失った。

震災から3週間が経った頃、数回しか会ったことのなかった母親がトモヤを迎えにやってきて、以来トモヤは、右も左も分からない東京の母親の家で、母親と、母親の新しい夫、その子ども2人と一緒に5人で暮らすこととなった。

ところがほどなくして、両親からのネグレクトと虐待が始まった。その異変に学校の教員が気づき、2012年9月から、トモヤは東京の児童養護施設で暮らすようになった。

「もともと東京は人が多くてあんまり好きになれなくて。新しい中学にも馴染めず、不登校ぎみでした。そんな中で児童養護施設は、ようやく見つけた、心から安心できる居場所でした。中には厳しい職員さんもいたけど、施設の人たちはみんな優しい、家族みたいな存在でした」

昨今、悲痛な虐待事件がメディアで多く取り沙汰される中で、どうしても児童相談所や一時保護所が救えなかった命ばかりがフォーカスされてしまう。しかしプライバシーの観点から表に出ないだけで、影ではトモヤのように、児童相談所のはたらきによって安心できる居場所を得られた子どもたちが数多く存在する。

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