「やっべ、数字間違えた…」発注ミスで大量納品 会社「全額負担しろ」はアリ?

弁護士ドットコムニュース / 2020年4月3日 10時2分

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働く上で、ミスはつきものだ。とはいえ、会社は社員の失敗をどこまで許容するべきなのだろうか。弁護士ドットコムに「自分の発注ミスで部品を大量に仕入れてしまったが、全額負担しなければならないのか」との質問が寄せられた。

相談者によれば、部品は返品できないものだった。そのため一部の負担は覚悟したが、上司から「全額負担しろ」と命じられたという。しかし、業務上の発注ミスであり、100%の負担指示に納得がいかないようだ。

社員が過失により会社に損害を発生させてしまった場合、社員が負担するべきなのか。あるいは、全額ではないとしても一部でも負担するべきなのだろうか。仮に金銭的な負担をしないとしても、懲戒処分はあり得るのだろうか。大山弘通弁護士に聞いた。

●いろんな事情を考慮し、賠償額は制限される

ーー労働者が負担しなければならないのでしょうか?

労働者にミスがあれば、必ず損害を負担しなければならないというものではありません。ミスの程度によりますが、一般的には、労働者が損害を負担しなければならない場合であっても負担額は制限されます。

そもそも人間である以上ミスはありえますし、一方で企業はそのようなミスをしうる労働者を雇って事業を拡大して利益を得ています。

労働者に損害を押し付けて利益だけ得るというのでは、企業は何のリスクもなく、労働者の犠牲のうえで事業ができることになってしまいます。

ーーでは、負担の有無や金額はどのように決まりますか?

最高裁は、損害の公平な分担という見地から、企業の労働者に対する損害賠償の請求を制限しています。判断にあたっては、事業の性格、規模、施設の状況、業務内容、労働条件、勤務態度、加害の態様、加害行為の予防・損失の分散についての使用者の配慮の程度、その他諸般の事情が考慮されます(昭和51年7月8日判決)。

つまり、労働者が損害賠償しなければいけない場合があるとしても、いろんな事情を考慮して賠償額は制限されるということです。

実際の裁判では、故意であれば100%労働者に責任があり、過失が重い場合にはある程度の責任があり、過失が軽い場合には責任を負っても一部か全く責任を負わないとされるケースが多いようです。全く責任を負わない場合とは、事業において通常織り込まれている損失の場合です。

●「発注ミス」はどう?

ーー相談者の場合はどう考えられますか?

相談者の方の発注ミスの程度がどれくらいのものか、通常ありうることなのかが不明ですが、感覚的には負担すべき金額は、損害の0~25%といったところになると思います。

また、懲戒処分があり得るかについてですが、一般にはまずは注意などをしたうえで、それでも見過ごせない場合には懲戒処分もありえますが、戒告や譴責(けんせき)といった程度の軽いものから始めるということになります。

なお、今回のような企業から労働者への損害賠償が問題となった事案について深掘りしたいなら、実際の裁判例を詳しく分析した裁判官の論文(判例タイムズ1468号5頁)が最近でていますので、参考になると思います。  

【取材協力弁護士】
大山 弘通(おおやま・ひろみつ)弁護士
労働者側の労働事件を特に重点的に取り扱っている。労働組合を通じての依頼も、個人からの相談も多い。労働事件は、早期の処理が大事であり、早い段階からの相談が特に望まれる。大阪労働者弁護団に所属。
事務所名:大山・中島法律事務所
事務所URL:http://on-law.jp/

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