ネットの誹謗中傷、「迅速な被害回復」と「匿名表現の自由」をどう両立すべきか 丸橋透教授に聞く

弁護士ドットコムニュース / 2020年8月4日 9時54分

請求者側が筋悪なものは、だいたい肌感覚で分かります。例えば、ブラック企業やオーナー企業が、内部告発に関して発信者情報開示請求をすることは一定数あります。

そうしたケースでは、発信者側に意見があることが多いので、それをきちんと吸い上げ裁判をしていましたが、主張立証活動に発信者の意見が反映されるには手続法上の限界があります。

まず、発信者の意見について、裁判所が信じてくれません。つまり立証したことにならない、という問題です。

ニフティとしては、インハウスの弁護士による電話録取をして、「酷い仕打ちを受けた」経緯など意見書をそのままでは出せない部分をカバーしていました。しかし、法廷では発信者の名前を伏せますから、裁判所から「本人がいったかどうかわからないではないか」と指摘されます。

また、「これは証拠になる」というものがあっても、出すと発信者が特定できてしまうものもあります。例えば「偽装請負で、従業員であるかのように指図を受けて仕事をしていた」という発言に対し、証拠として請負契約書を出すと、作業場所などが書かれているため本人が特定されてしまうのです。

発信者側が代理人弁護士をつけ、代理人が意見を取りまとめて出してくれる場合もありましたが、名前を秘密にしたまま証拠を審査するイン・カメラ制度がないため、うまく工夫しながらなるべく発信者の意見を伝えなければなりません。

●プラットフォーム事業者の社会的責任

――誹謗中傷を巡っては、プラットフォーム事業者に対応を求める声もあります。個人の投稿内容について、プラットフォーム事業者はどこまで社会的責任を負うと考えますか。

今のアメリカは、トランプ大統領が自身のツイートに関する表現の自由を声高にとなえ、ツイッターがそれに抵抗するという図式になっています。政府が表現の自由に介入するのは問題ですが、トランプ大統領の言い分は、表面的なロジックとしては当たっている部分もあります。

SNS事業者が個人の表現に対して介入することは、従来型のメディアとしての役割を果たすということになります。なんのために、プロバイダ責任制限法を作り、ユーザーの責任で行う情報発信について、最終的にはユーザーに責任を取ってもらう方法で法律を組み立てているのか。間に入っているプロバイダに責任を取らせる仕組みではありません。そこの大前提が崩れてしまいます。

もちろん、国民や議会が、プロバイダに責任を取らせようということになれば、それはプロバイダ責任制限法も捨てるという話につながると思います。

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