離婚から15年、子育てを終えて「旧姓を名乗りたい」と決意した女性【判例を読む】
弁護士ドットコムニュース / 2020年11月15日 9時19分

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結婚してパートナーと同じ苗字に改姓していた場合、離婚後は結婚前の姓(旧姓)に戻るか結婚時に名乗っていた姓(元パートナーの姓)を継続するかを選ぶことになる。
中には、旧姓に戻りたいと思いつつも、「苗字を変えたくない」という子どもの意思を尊重して結婚時の姓をそのまま継続する(婚氏続称)という選択をする人たちもいる。
この選択(届出)は離婚の日から3カ月以内にしなければならない。
しかし中には、後になって旧姓を戻したいと考える人もいる。今回は子どもが成人した後、夫の姓を捨てることを決断した女性の裁判例を紹介したい。(監修・澤井康生弁護士)
●氏の変更には「やむを得ない事由」が必要最近のケースとして離婚後15年以上婚氏(婚姻時の氏)を称してきた女性が婚姻前の氏に変更することの許可を求めたところ、原審で却下されたものの、抗告審でこれが認められた裁判例(平成26年10月2日東京高裁決定)がある。
女性は結婚し、夫の氏になったものの、その後夫と離婚した。そして、離婚の際に婚氏続称の届出をおこない、婚姻時の氏をそのまま15年称し続けた。
しかし、女性が婚姻前の氏に変更することの許可を求めたところ、「やむを得ない事由」があるとは認められないとして、家庭裁判所の審判で申し立てが却下された。そこで、女性は氏の変更の許可を求めて抗告した。
戸籍法107条1項は「やむを得ない事由」によって氏(姓)を変更しようとするときは、「家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない」と規定している。
氏は個人の識別手段であると考えられている。そのため、名の変更のように「正当な事由」がある場合(同法107条の2)ではなく、「やむを得ない事由」という厳しい要件が必要とされている。
ただし、離婚後、婚氏続称していた者が婚姻前の氏への変更を求める場合には、全然関係のない氏(たとえば、縁もゆかりもない氏など)への変更を求める場合ほど厳格に解する必要はないとした裁判例もある(大阪高裁平成3年9月4日判決)。
なぜ、女性のケースで高裁は「やむを得ない事由」があると判断したのだろうか。
●婚氏続称を必要とする事情がなくなった裁判所は、女性が離婚後15年以上、婚姻中の氏を称してきたことから「その氏は社会的に定着しているものと認められる」とした。
このように、氏が社会的に定着したといえる場合は「やむを得ない事由」の判断が厳しくなることも考えられる。
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