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過労死の認定ハードル、変化の兆し 労働弁護士に聞く「労災基準」20年ぶり見直し論議

弁護士ドットコムニュース / 2021年9月8日 10時4分

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仕事が原因で脳や心臓の病気になった人の労災認定は「狭き門」です。過去10年の平均では、労災の請求が1年につき約830件あり、実際に労災認定された件数は年間約260件でした。労災を請求しても認めてもらえないケースがかなりあることが分かります。

脳・心臓の病気ですから死に至ることも珍しくありません。しかし、亡くなっているケースに限定しても、仕事が原因の労災だとは認められないことの方が多いのが実態です。

脳・心臓疾患の労災認定基準をつくるのは厚生労働省です。昨夏から医師ら有識者を集めた「専門検討会」を開いてきました。今年7月に専門検討会の「報告書」がまとまったため、この報告書を元に厚労省が9月中に新しい認定基準をつくり、全国の労働基準監督署で使用する予定です。労災は認められやすくなるのでしょうか。(牧内昇平)  

●ポイント①「過労死ラインは引き下げない」

20年ぶりとなる認定基準の見直しは、「過労死ラインを引き下げるか」が大きなポイントでした。2001年にできた認定基準は、疲労の蓄積について以下のように示しています。

<(病気の)発症前1か月間におおむね100時間、または発症前の2~6か月間にわたって、1か月あたりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強い>

ここに出てくる「1か月で100時間、複数月の平均で80時間」という数字が、いわゆる「過労死ライン」です。2020年度の統計を見てみると、労災が認められた事案のうち、時間外労働が80時間未満だったケースは1割を下回っていました(病気になった方が存命の場合を含みます)。過労死ラインが労災認定の現場でいかに重視されているかを物語っています。

一方、近年になって過労死ラインを下回っていても健康リスクはあることが指摘されるようになっています。代表的な例として、WHO(世界保健機関)などは今年5月に次のように発表しています。

<週55時間以上働くと、週35~40時間働く場合に比べて脳卒中のリスクが約35%、虚血性心疾患で死亡するリスクが約17%高くなる>

「週55時間」労働とは、1カ月の時間外労働で考えると「おおむね60~65時間」です。

こうした指摘をもとに過労死ラインを引き下げるかどうかが、今回の基準見直しの最大のポイントでした。しかし、専門検討会は疫学調査の論文を比較・検討した結果、過労死ラインを引き下げない判断を示しました。

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