退職前「競業避止の誓約書」サインしないとダメ? 職業選択の自由との兼ね合いは
弁護士ドットコムニュース / 2022年1月12日 9時59分

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退職前、会社から求められた競業避止の誓約書にサインしなければいけないのか? そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
相談者は退職後、自分の会社を設立する予定です。「退社前の有給休暇を消化中、会社から誓約書が届きました」といい、退職を目前とした時期だったことがわかります。
その内容は「秘密保持や営業妨害の禁止といった項目のほか、競業避止義務や引き抜き行為の禁止等気になる項目がありました」。相談者はこの誓約書を「拒否できるならしたい」と考えています。誓約書にサインする義務はあるのでしょうか。
山田智明弁護士に聞きました。
●誓約書にサインしなければいけない?ーー会社の求めに応じて、誓約書にサインしなければいけませんか
結論からいえば、退職の際に会社の求める誓約書に応じる法的義務はありません。そのため、誓約書にサインをせずに会社を退職することは可能です。サインをしないことのみを理由に会社側が法的措置を取ることも出来ません。
労働者は労働契約の存続中には競業避止義務を負っていますが、労働契約が終了した時点で、競業避止義務は消滅します。もっとも、就業規則や契約等による特別の定めがある場合には、その定めに基づいて、退職後も引き続き競業避止義務を負うことになります。
ーー「特別の定め」がある場合、その後の職業選択はかなり狭まりそうですが、仕方ないのでしょうか
特別の定めがある場合でも、その義務内容が「職業選択の自由」という憲法22条で保障された憲法上の権利を不当に制約するような場合には、民法90条により、公序良俗違反で無効となる場合もあります。
無効となるかどうかの考慮要素として、(1)就業制限の期間、(2)場所的範囲、(3)制限対象となる職種の範囲、(4)代償の有無等があり、それらの総合判断によって、特別の定めの有効性が判断されることになります。
そのため、就業制限の期間が長期間に亘る場合、場所的範囲や制限対象となる職種が過度に広範であるような場合、制限の代償となる措置(金銭的補償等)が皆無である場合等には、競業避止義務が無効とされる可能性が高いです。
事案によっては、制約の過剰な部分のみが一部無効とされる場合もあり得ます。
【取材協力弁護士】
山田 智明(やまだ・ともあき)弁護士
2008年弁護士登録。2013年、柏第一法律事務所を開設。一般民事を中心に業務をおこなっており、労働問題については労働者側の代理人として活動している。
事務所名:柏第一法律事務所
事務所URL:http://www.kashiwadaiichi-lawoffice.com/
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