韓国「セウォル号」船長を「殺人罪」で起訴――もし日本で裁判したらどうなる?

弁護士ドットコムニュース / 2014年6月5日 12時42分

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死者・行方不明者が300人を超える大惨事となった韓国の旅客船「セウォル号」の沈没事故。乗客をおいて避難したとして強く非難されていた船長ら4人が5月中旬、「殺人罪」で韓国検察に起訴された。

報道によると、船長らは、乗客の救護措置を取らないと溺死してしまうことを認識していたにも関わらず、乗客を船内にとどめ、先に脱出したことが「不作為」や「未必の故意」による殺人にあたると判断されたという。

聞き慣れない言葉だが、この「不作為」や「未必の故意」とはどういうことか。また、日本の法律でも、今回のようなケースで船長が「殺人罪」に問われることはあるのだろうか。荒木樹弁護士に聞いた。 

●不作為とは、行動を起こさないで放置すること

「今回の報道を見る限り、日本と韓国では、刑法やその解釈に相当な類似性があるように思われました」

こう荒木弁護士は切り出した。

「不作為とは、目の前で人が死にかかっているのに、なにもしないで放置するといった意味です。不作為犯とは、『ナイフで人を刺す』などといった積極的な行為がないにもかかわらず、犯罪として成立する場合のことです。日本の法律でも、一定の場合には、不作為犯として処罰をされる場合があります」

日本では、どんなときに成立するのだろう。

「殺人罪の不作為犯が成立するのは、次の3つの条件をすべて満たすときです。

(1)被害者の生命を救助すべき義務(作為義務)があること

(2)不作為が、積極的な殺人行為と同程度の危険性があること

(3)殺人の故意があること」

●日本でも「不作為の殺人罪」の可能性あり

今回の韓国の船舶事故のような事案を想定すると、日本でも、不作為の殺人罪になるのだろうか。

「旅客船の船長としては、当然、条件(1)の『事故時の旅客救助義務』がありますね。旅客を甲板に誘導するなどして、救命措置をとることも可能であったと言えるでしょう。

また、今回は沈没しつつある船舶内で、他者からの救命が想定できず、また、旅客自身が自主的に脱出することも極めて難しい状況でした。いわば、閉じ込められた状態です。

つまり、そのような乗客を放置して逃げ出すことは、積極的な殺人行為と同じように生命に対する危険が高い行為といえ、実際、多数の旅客が死亡しています。ですから、条件(2)にも合うでしょう」

条件(3)はどうだろうか。

「そこが問題です。『殺人の故意』がある場合とは、一般の方の場合、被害者が確実に死亡することを認識し、その死を欲していること、と考えがちです。しかし、『故意』とは、そのような場合に限定されません。

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