村上春樹さん、高校時代の図書室「貸出記録」が公開ーープライバシー侵害ではないか?

弁護士ドットコムニュース / 2015年10月14日 12時5分

「今回のケースは、ケッセルの著作の帯出者カードから、村上氏がケッセルの作品を読んでいたことが明らかになったわけですが、たとえば、図書館における個人の借り出し履歴が丸ごと明らかになったような場合ですと、話が変わってきます。

その場合、個人の趣味嗜好や思想傾向が根こそぎ明らかになる可能性があり、『公表されない法的利益』も大きくなると思われます。そうなりますと、『公表する理由』よりも『公表されない法的利益』のほうが優って、違法なプライバシー侵害になる可能性があるといえます」

ところで、プライバシー侵害にあたるか否かの評価基準について、存命中と死後で違いがあるのだろうか。

「違いはあります。死後の場合、開示された人は既に亡くなっているので、その人に対するプライバシー侵害の問題が生じる余地はありません。問題となり得るのは、遺族の権利です。故人に対する遺族の『敬愛追慕の情』が侵害されたかどうかが問題となります。

これは、平たく言えば、『身内のことをそんなに暴かないでくれ』という心情をどこまで法的に保護すべきかという問題であり、保護される範囲は、本人が存命中にプライバシーとして保護される範囲よりも限定されると思われます。

さらに、歴史の探究という社会的要請から、故人のことを調査して『公表する理由』というものが積極的に評価される場合も多いと思われます。

こうした観点から、かれこれ総合すると、故人の場合は、図書館の借り出し履歴が丸ごと明らかになったような場合であっても、遺族の敬愛追慕の情の侵害が認められないということが、かなりの確率で想定されると思います」

佃弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
佃 克彦(つくだ・かつひこ)弁護士
1964年東京生まれ 早稲田大学法学部卒業。1993年弁護士登録(東京弁護士会)
著書に「名誉毀損の法律実務〔第2版〕」、「プライバシー権・肖像権の法律実務〔第2版〕」。日本弁護士連合会人権擁護委員会副委員長、東京弁護士会綱紀委員会委員長、最高裁判所司法研修所教官を歴任

事務所名:恵古・佃法律事務所


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