妊娠を理由に帰国迫られ「流産」 元実習生が勝訴した「裁判のポイント」は?

弁護士ドットコムニュース / 2013年8月29日 19時34分

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外国人技能実習生として働いていた中国人女性が強制帰国を迫られたとして、会社と受け入れ団体に解雇無効などを求めた訴訟で、富山地裁は7月、女性側勝訴の判決を言い渡した。判決は8月に確定した。

女性は2010年12月に来日し、富山市の食品加工会社で働いていたが、11年6月に妊娠が判明。すると受け入れ団体は無理やり車で富山空港に連れて行き、強制帰国させようとした。その後、女性は流産。このことについて女性が記者会見を開いたところ、会社側は女性を解雇した。

報道によると、女性は来日前、中国側の送り出し機関との間で実習中の妊娠禁止の規定を含む書面に署名していた。だが、地裁はこれを「不適切な契約内容」「実習制度の趣旨と公序良俗に反する」と指摘、解雇を無効とした。さらに帰国の強制と流産の因果関係も認定し、会社と団体に損害賠償と未払い賃金の支払いを命じた。

女性の主張が全面的に認められた形だが、何がポイントになったのだろうか。中森俊久弁護士に解説してもらった。

●外国人実習生に対しても労働関係法令が適用されるようになった

「そもそも外国人研修・技能実習制度は、途上国への技術移転を通じた国際貢献が目的です。研修生・実習生は、受け入れ期限の3年間に様々な技術を身につけて、本国へ帰るというのが建前となっています。

しかし、それは名ばかりで、実際には、農業・漁業・縫製などに従事する人員不足の解消のため、『単純労働力』として利用されている実態があります」

――技術は伝えず、単に「安い労働力」と見なして、下働きをさせているということ?

「そのような側面は否定できません。本来あるべき目的との乖離の中で、外国人研修・技能実習生に対する様々な権利侵害の事実が浮き彫りとなっています。パスポートを取り上げ、時給300円で残業をさせるなどといった不当な人権侵害が、これまでも多数報告されています。

このため、2010年7月に改正入国管理法が施行され、これまで研修期間とされた1年目の実習生に対しても労働関係法令を適用する等の制度変更がなされました」

――現実への対処ということだろうが、それでは「外国人研修・実習生に単純労働をさせている」ことを、政府も事実上認めたように読めてしまうが……。その改正で事態は改善されたのだろうか?

「いいえ、残念ながら。同年10月に来日した中国人技能実習生に対して本事件が発生していることからも分かるように、受入先と技能実習生との支配従属的な関係等から生じる問題は後を絶ちません」

――そういった背景・経緯を考えると、今回の判決は当然?

「その通りですね。妊娠禁止の規定を含む契約が公序良俗に反することは明らかで、本判決は、当然のことを認定したものです。

こういった技能実習生の処遇は、早急に改善する必要があります。さらに、目的と実態が乖離した本制度を抜本的に見直し、外国人労働者の受け入れについて正面からの議論を行うことも必要でしょう」

(弁護士ドットコム トピックス)

【取材協力弁護士】
中森 俊久(なかもり・としひさ)弁護士
大阪弁護士会
事務所名:あべの総合法律事務所
事務所URL:http://www.abenolaw.jp/

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