JR北海道が運転士の「薬物検査」を拒否 「人権上の問題がある」との主張は妥当か?

弁護士ドットコムニュース / 2013年11月10日 15時55分

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運転士が覚せい剤取締法違反(使用)の疑いで逮捕されたJR北海道が、国土交通省から提案された運転士全員の薬物検査を拒否していたことが10月上旬に明らかになった。

報道によると、運転士の薬物事件を受けて、8月に北海道運輸局が同社の安全管理部門の担当者に対して、全運転士約1100人に薬物尿検査をすることを提案した。しかし、担当者は「人権上の問題がある」として応じなかったという。

公共交通機関の運転士への薬物検査は、2011年に大阪市交通局が市営地下鉄・バスの全運転士2837人を対象に実施。2人の地下鉄運転士から陽性反応が出た。バス運転士の覚せい剤使用事件があった西日本鉄道も、今年5月に全運転士への検査を行っている。

ここ最近、車両トラブルやレールの異常放置などの問題が続発しているJR北海道だが、たしかに潔白の運転士にとっては、薬物検査は心外だろう。そもそも企業などが従業員に薬物検査を実施することは人権上問題があるのだろうか。北海道で開業する中村憲昭弁護士に聞いた。

●会社に強制捜査権はない

「本人の同意がない場合、会社が従業員に対し、強制的に薬物検査を行うことは憲法上、人権侵害として許されない可能性が高いです」

中村弁護士はこのように切り出した、薬物検査と憲法との間に、どんな関係があるのだろうか。

「憲法は本来、国と国民とを規律するものですが、会社と従業員との関係にも間接的に憲法の趣旨が及びます。個人のプライバシー権は、そもそも憲法上保障されており、捜査機関でも、自己に不利益な供述を強要することは違憲ですし、現行犯の場合以外で捜索を行う場合には、裁判所の発布する令状が必要です。会社は捜査機関とは異なり、強制捜査権はありませんから、強制的に検査を行うことはできません」

たしかに、いくら「公共」交通機関と言っても、拒否する従業員の血液を強制的に採って調べる権限まではないだろう。

ただ、運転士になるための国家試験「動力車操縦者試験」の内容には身体検査も含まれ、検査項目の一つに《アルコール中毒、麻薬中毒その他動力車の操縦に支障を及ぼす中毒の症状がないこと》がある。

また、軌道法に基づく軌道運転規則(6条の2 2号)では、《車両を操縦する係員は、酒気を帯びた状態または薬物の影響により正常な操縦ができないおそれがある状態で乗務してはならない》とされている。

そうなると、運転士としては「薬物を使用しない義務」があると言えそうだが……。

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