「喫煙者は採用しません」長崎大が宣言、「喫煙者差別」は憲法違反になる?

弁護士ドットコムニュース / 2019年4月24日 13時21分

一方、喫煙者を中心に「差別だ」という声も根強い。長崎大学の方針にも、「タバコを吸う、吸わないは個人の嗜好であり、大学が踏み込む問題ではない」という反論がネットには上がった。では、憲法の立場からはどう考えればよいのだろうか。多くの憲法訴訟に携わってきた作花知志弁護士に聞いた。

「これは、とても難しい問題だと思います。喫煙の自由を問う問題が、司法試験の論文式試験の憲法の問題として出題されたこともあるほどです」としながらも、「客観的な立場から、実際に裁判になった場合を念頭に考えると、『憲法違反だ』という判決を獲得することは、なかなか難しいように感じています」と語る。

その理由とは?

「まず、『喫煙権』は人権なのか、という問題があります。憲法13条が保障している幸福追求権から派生する人権だ、と言えなくもないとは思いますが、その場合でも、当然に全ての場で『喫煙権』が保障されるわけでないと思います。

と申しますのは、タバコの煙から周囲の方が害を受ける受動喫煙の問題もあると同時に、喫煙後、服やカーテンなどに何らかの形で残ったタバコ残留物から有害物質を吸い込んでしまう『三次喫煙(サードハンドスモーク)』の問題も指摘されているからです。

つまり、タバコの問題は、単純に『分煙すればいい』ということにはならない、ということです。自宅で父親だけが喫煙者の家がある場合、父親がベランダでタバコを吸って部屋の中に戻って来た時も、その『第三次喫煙』の問題が生じることになります。その点が、『単なる嗜好の問題』とは言えないところの難しさです」

●大学側には「安全配慮義務」も

大学ともなれば、教職員の他にも未成年の学生も含まれる。

「大学側には、教職員や学生、全ての方に健康なキャンパス生活を保障する責任があるわけです(大学の安全配慮義務)。その責任からすると、喫煙者を採用しないことが、憲法13条に違反する、という判決は出にくいのではないかな、と思います。同様に、憲法14条1項が保障する法の下の平等の問題についても、同様な思考から、憲法違反の判決は出にくいように思っています」

また、今回は国立大学の話だ。国立大学法人法第19条では「みなし公務員」とされている。民間企業とはどう違うのか。

「この問題は解釈問題であり、私が以前、公立の福岡女子大から願書を受理されなかった男性の訴訟を担当した際にも問題になったのですが、現在の国立大学法人における学生や教職員と大学の関係は、基本的には私立大学と同じ契約関係とされている、という資料が訴訟で証拠として提出されていました。国立大学法人法19条は罰則の適用の規定なので、それから当然に採用について公務員と同様、ということにはならないのではないか、と思います」

さらに、作花弁護士は、こうも指摘する。

「私個人としては、喫煙権の問題は、人権そのものというよりも、個人的な嗜好であり、個人生活上の利益として存在しているように思います。そうなると、喫煙者を採用しない、という問題も、憲法問題ではなく、大学や企業の裁量権の問題であり、裁量権の逸脱や濫用がなければ違法にならないのではないか、と思います。

ただ、個人的には、『喫煙権は人権であり、それを制限することは憲法違反だ』という主張を行う憲法訴訟の御依頼があれば、依頼者の方とご一緒に挑戦してみたい気持ちはありますね」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
作花 知志(さっか・ともし)弁護士
岡山弁護士会、日弁連国際人権問題委員会、国際人権法学会、日本航空宇宙学会などに所属。
事務所名:作花法律事務所
事務所URL:http://sakka-law-office.jp/

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