遺族「労災で亡くなった家族の記録を見たい」 不開示にした国の敗訴確定

弁護士ドットコムニュース / 2019年6月22日 9時59分

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大阪地裁(三輪方大裁判長)は6月5日、アスベスト(石綿)関連疾患で亡くなった男性2人の遺族に対し、兵庫労働局が個人情報を理由として、2人の労災記録の開示を拒んだのは違法として、不開示決定処分を取り消す判決を下した。国は控訴せず、確定した。

遺族の代理人を務めた谷真介弁護士によると、遺族に対する労災記録の個人情報開示を争った初めての判決だという。

「これまでも遺族に労災記録が開示されないことはありました。その結果、損害賠償を求める裁判を諦めてしまう遺族もいます。アスベストに限らず、ほかの労災事案にも影響する判決だと思います」(谷弁護士)

●国「裁判起こして」…だけど情報は不開示

裁判のきっかけは2018年の春頃、原告となった遺族のもとに、「石綿(アスベスト)工場の元労働者やその遺族の方々へ」という案内が届いたことだった。

差出人は厚生労働省。内容を簡単にまとめると、条件を満たしていれば賠償金を払うから、裁判を起こしてくださいというものだ。

2014年10月の最高裁判決(大阪泉南アスベスト訴訟)以降、国はアスベスト被害者との和解を進めている。この案内も和解を進めるためのもので、労災の記録などを参考に、2017年10月から順次発送されている。

案内を受け取った遺族は、和解条件に合致しているかどうかを確かめるため、理由を示した書面や戸籍謄本などを添えて、兵庫労働局に亡くなった父親の労災記録の開示を求めた。しかし、兵庫労働局は「本人」ではないことから、開示を拒否した。

「どちらも亡くなったのは2000年代の初めでした。アスベスト関連疾患は発症まで数十年かかるため、国や企業の責任を追及しようにも、当時の勤務状況を示す証拠が集めるのが難しい傾向があります。労災情報があるのとないのとでは大きな違いがあるのです」(谷弁護士)

公的機関が権力を使って調査した労災の記録は、それだけで強い証拠となるし、新たな調査のとっかかりになることもある。それが開示されないとなると、遺族が裁判を起こすべきかどうかの判断が難しくなってしまう。

●「遺族の利益にはなっても、第三者の権利は侵害しない」

裁判では、労災記録は遺族(相続人)自身の個人情報と言えるかどうかが争点になった。「行政機関個人情報保護法」では、個人情報は「生存する個人の情報」とされている(2条2項)からだ。

国側は、死者に関する情報が遺族の個人情報になる場合もあることは認めつつ、その範囲は限定的であるべきとの立場をとった。

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