警察が捜査を忘れて「時効」に・・・告訴した人は警察に「賠償」を請求できる?
弁護士ドットコムニュース / 2015年7月27日 11時5分

関連画像
捜査を忘れているうちに時効が成立してしまった――。ある男性が脅迫や威力業務妨害を受けたとして告訴していた事件で、警察が捜査を失念していたため、公訴時効が成立してしまっていたことがわかった。
報道によると、ネット上で脅迫めいた書き込みをされたとして、被害者の男性が2008年12月に仙台北署に告訴したにもかかわらず、同署は引き継ぎミスなどから事件を放置してしまった。長期間連絡がないことを不審に思った男性が、2014年5月ごろに問い合わせたところ、同署が事件を放置していたことを認め、「本当に申し訳ない」と謝罪したという。
脅迫罪と業務妨害罪の公訴時効はいずれも3年。事件が放置されている間に時効を迎えてしまい、もはや起訴ができない状態になってしまった。宮城県警は捜査関係者3人を注意処分にしたが、発表はしていなかった。
男性は「警察が捜査を忘れるなんてあり得ない」と憤っているが、告訴した事件を警察が放置した場合、法的にどんな問題があるだろうか。時効が完成してしまった場合、告訴した人は、警察に賠償を求めることができるだろうか。刑事手続きに詳しい小笠原基也弁護士に聞いた。
●告訴は、捜査のきっかけにすぎない「捜査をしないことで事件が時効になったからといって、告訴した人が警察に賠償を求めることは難しいと思います」
小笠原弁護士はこのように述べる。なぜだろうか。
「警察は、告訴を受けたことにより、当然に捜査の義務が生じるわけではなく、告訴を受けた警察官が『犯罪があると思科』した場合に、捜査権限が発生し、捜査ができるようになります。
告訴は、何らかの処分や利益を捜査機関に求めるものではありません。捜査官に捜査のきっかけを与え、捜査官の職権発動を促すものに過ぎないと考えられています」
●告訴した人の利益は「事実上の利益」にすぎない実際に、裁判で争われたケースはあるのだろうか。
「捜査中に証拠物を廃棄したというケースで、最高裁は、次のような理由で国家賠償請求を認めませんでした。
『犯罪の捜査および検察官による公訴権の行使は、国家および社会の秩序維持という公益を図るために行われるものであって、犯罪の被害者の被侵害利益ないし損害の回復を目的とするものではない』
『被害者または告訴人が捜査または公訴提起によって受ける利益は、公益上の見地に立って行われる捜査または公訴の提起によって反射的にもたらされる事実上の利益にすぎず、法律上保護された利益ではない』
-
-
- 1
- 2
-
この記事に関連するニュース
-
「社会派インフルエンサーモデル」ラブリの“強制わいせつ”を被害女性が告発
文春オンライン / 2021年1月20日 16時0分
-
「嫁のモノは、私のモノ」次々に転売する義母が止まらない! 罪に問える?
弁護士ドットコムニュース / 2021年1月13日 17時47分
-
深夜にドアを殴りつけ「出てこい!いるんだろ!」見知らぬ酔っ払い男の奇襲…恐怖で不安な日々
弁護士ドットコムニュース / 2021年1月11日 9時48分
-
「不同意性交等罪」導入で被害者の負担は増える? セカンドレイプの懸念、立命館・嘉門教授に聞く
弁護士ドットコムニュース / 2021年1月3日 9時39分
-
《世田谷一家殺害事件》DNA捜査に希望も、立ちはだかる「加害者の個人情報保護」の壁
週刊女性PRIME / 2020年12月30日 5時0分
ランキング
-
1五輪開催可否、ワクチン接種で安心は「夢物語」…東大医科学研究所・石井健教授が警鐘
スポーツ報知 / 2021年1月23日 6時0分
-
2国内死者、最多108人=東京感染2週前から半減―新型コロナ
時事通信 / 2021年1月22日 20時32分
-
3自民・石原伸晃氏がコロナ感染で入院…前日に会合出席、坂本1億総活躍相らと昼食
読売新聞 / 2021年1月23日 6時40分
-
4ワクチン接種で政府「迷走」…河野行革相と坂井学官房副長官、確保時期に食い違い
読売新聞 / 2021年1月22日 21時18分
-
5生まれた直後“あえて”捨て子に…池田大作が公明党を創設するきっかけになった幼少期の悲劇
文春オンライン / 2021年1月23日 6時0分