自律神経失調症とは?気になる症状や治療方法を専門家に聞きました!
美人百花デジタル / 2021年8月18日 20時0分
聞いたことはあるけど、どのような症状なのかいまいちつかめない「自律神経失調症」。どのような状態を指すのか、どうしたら改善するのかetc.詳しい話を「犬山堂代表兼院長」の三輪考司先生に伺いました。
自律神経失調症とは何なのか教えてください。
「自律神経失調症」とは医学的に正式な病気の名前ではなく、交感神経と副交感神経という2つの神経からなる自律神経のバランスが崩れた状態を表す総称で、慣用句です。また、不定愁訴症、不定愁訴症候群とも言います。なお、ICD(国際疾病分類)-10による分類では、F45身体表現性障害の下位分類であるF45.3身体表現性自律神経機能不全に該当します。また、自律神経失調症と間違えやすい病気として挙げられるのが、「心身症」や「仮面うつ病」。
心身症とはストレスなどの精神的な問題によって、カラダに異常が現れる状態のことです。各種の検査をしても、カラダに異常が「みつからない」自律神経失調症と異なり、胃潰瘍や気管支喘息といった明らかな異常を「みつける」ことができます。仮面うつ病とは、うつ病の一種で精神的な症状はほとんど認められませんが、不眠、食欲不振、倦怠感などの症状が現れる病気です。
自律神経失調症の症状はさまざまで、身体的な症状としてはだるい、眠れない、便秘や下痢などの全身症状と、頭痛、肩こり、めまい、動悸、息切れ、ほてりなどの部分的な症状が、精神的な症状としては情緒不安定、イライラ、不安感などがあります。これらの症状があるにもかかわらず、カラダに医学的な異常がなく、明らかな精神的な病気もない場合に、自律神経失調症と暫定的に診断されることがあります。正式な病気の名前ではないのに、多用されるのは、暫定的に自律神経失調症と診断して、適切にストレスを管理し、対症的治療をすれば、症状が軽快することが多いからです。
また、患者さんも医師などに「自律神経失調症ですね。大きな病気ではありませんよ」などと言われると安心できる、という面もあるからです。
自律神経失調症の原因を教えてください。
自律神経のバランスが崩れる直接的な原因は特定できませんが、間接的には、生活習慣の乱れやストレスなどにより、交感神経と副交感神経のバランスが崩れることが原因となります。
なぜストレスや生活習慣の乱れにより、バランスが崩れるのかというと、通常は、交感神経と副交感神経がバランスを取りながら、カラダを正常な状態を保つことができますが、ストレスやホルモンバランスの乱れなどによって、どちらかの神経が過剰に働いた状態が続くと、さまざまな症状が現れるようになると言われています。
自律神経失調症の治療方法を教えてください。
自律神経失調症は、薬物療法のみで治すことはできないです。なぜなら、自律神経のバランスが崩れる原因となるストレスを軽減したり、ホルモンバランスの乱れなどを改善しない限り、根本的な解決にはならないためです。したがって、自律神経失調症では薬物療法と併せて、行動療法や精神療法、鍼灸治療、生活習慣の改善やストレスのコントロールなど総合的な治療を継続して行ないます。
・薬物療法
症状、それぞれに対する対症療法として、自律神経調整薬や抗不安薬、抗うつ薬、睡眠薬などが、また、カラダ全体の状態を改善すること期待して、ホルモン剤や漢方薬などが用いられます。
・行動療法・精神療法など
行動療法では、主に睡眠のバランスなどを整え、質のよい充分な睡眠が取れるようになることを目標とし、精神療法では、情緒不安定などの精神的な症状が強い人などに対し、カウンセリングを行います。また、自律訓練法やマインドフルネスなどが有効であることも少なくありません。
・鍼灸治療
自律神経失調症に対する、鍼治療は医学的にも効果が認められています。鍼でなぜ、自律神経失調症が改善するのか? 詳しいメカニズムはまだ研究中ですが、鍼によって、脳に変化が起きることが、最新の研究でわかりつつあります。鍼治療の前後で、脳の血流量を見たところ、特に、前頭葉(左前頭前野)で大きく改善が認められました。脳活動が活発になり、炎症物質を減らしたことが、神経細胞の活動を活性化し、自律神経失調症が改善したのではないか? と考えられております。また、自律神経そのものを調整する(交感神経の緊張を緩和し、副交感神経の働きを高める)効果もあります。ですので、自律神経失調症のためのセルフケアとして、ツボ押しも効果があると思われます。
まず、効果的と思われるツボは、
合谷(ごうこく)
手の親指と人差し指の間くらいにあります。
百会(ひゃくえ)
いわゆる頭のてっぺんにあるツボで、押すとちょっと、ほかの場所よりやわらかく感じやすいところです。
内関(ないかん)
手首の内側にあり、手首から指3本分くらいのところにあります。
基本的なツボの押し方は、
(1)指で3秒~5秒押す
(2)指を離し、同じ時間休む
(3)5回ほど繰り返す
ポイントとして、ツボを押す強さはハンコを押す程度です。くれぐれも押しすぎには注意してください。
・ストレスのコントロール
人は、リラックスしたり、楽しいと感じたりして、心の充実感を得られるときにストレスが解消されると考えられています。散歩や体操、入浴やアロマセラピーなどの気軽にできる気分転換からはじめてみましょう。自分がリラックスできると思えるような時間を意識的につくったり、趣味を持ったりすることでストレスをコントロールできます。趣味として、ペットや植物を育てる、音楽鑑賞、カラオケなど……なんでもよいです。ただし、インターネットやゲームなどの脳などに緊張を伴うことに過度の時間を費やすことは、自律神経の乱れを誘発することがありますので、やめるようにしましょう。また、積極的に交友関係を広げ、交際することもよいでしょう。家族や友人と団欒を楽しむことはストレスの解消に有効です。さまざまな手段を用いて、うまくストレスと付き合うことを心がけるとよいでしょう。
・生活習慣の改善
自律神経を整えるためには、リズムの整った生活が重要です。不規則な生活は、人間が本来持っている体内リズムを乱すため、肉体の健康のみならず、心の健康を害しやすくなります。休日もある程度決まった時間に起き、生活のリズムを崩さないよう心掛けましょう。具体的には、夜はしっかりと睡眠をとって疲れをとる、昼は活発に活動するなど、メリハリのある生活をするようにするとよいでしょう。過ごす時間を一定にすることにより、自律神経が整いやすくなります。また、運動不足は、いわゆる血の巡りが悪くなり、自律神経やホルモンのバランスが乱れやすくなるため適度に運動をすることも重要です。運動はストレスの解消や質のよい睡眠、ホルモンバランスの向上にもつながるため、積極的に行なうとよいでしょう。このような生活習慣を心がけることで、肉体的にも精神的にも健康に近づき、多少のストレスであれば、柔軟に対応できるようになるといわれています。
精神科を受診する目安を教えてください。
「自律神経失調症」という病名は、精神科(心療内科)以外の医師が、精神科(心療内科)的な病気である場合に用いることがよくあります。精神科(心療内科)では、軽度のうつ病、不安症(不安障害)、神経症などと診断されるケースが少なくありません。放っておくと重度のうつ病や神経症などになってしまうこともありますので、まずは、重度にならない(症状が軽度の)うちは、かかりつけ医に相談して、適切な治療を受けるようにするとよいでしょう。
かかりつけ医のない方は、診療科目が細分化された大きな病院(総合病院など)を受診するより、まずは近所の気楽に通うことのできる内科がよいのではないでしょうか?
また、内科をまず受診することの利点として、自律神経失調症ではなく、重大な病気が隠れていたときに、対応してもらえる可能性が高いのでオススメです。もし、自律神経失調症で、重症化したときには精神科や心療内科への受診が勧めてもらえますので、勧められたら、受診すればよいでしょう。
その他にアドバイスがあれば教えてください。
症状があるときだけでなく、定期的に受診、または治療を受けることをすることをオススメします。
自律神経失調症の症状は、軽くなったり、ひどくなったりを繰り返すことがありますが、症状にかかわらず、定期的に通院することが大切です。なぜなら、そうすることで主治医や治療者は、患者さんのチョットした変化にもよく気づき、的確な治療を勧めてくれるはずです。
また、症状がひどいときにだけ受診するのでは、主治医や治療者とのよりよい人間関係や治療関係をなかなか築けません。1回の治療で治ることの少ない自律神経失調症のような病気は、主治医や治療者とのコミュニケーションがとても大切になります。
教えてくれたのは
鍼灸・接骨・漢方の犬山堂代表兼院長 三輪考司先生
医療系専門学校などでの教育経験や多数の講演・セミナー経験を経て、全国的にも稀な鍼灸治療と漢方治療を同時におこなうワンストップ型東洋医学治療院として、鍼灸・接骨・漢方の犬山堂を開院し、代表兼院長を務める。不定愁訴やメンタル(うつ)、変形性ひざ関節症、天気痛、不妊症、EDなど、現代の西洋医学では治療のむずかしい病気に対して、鍼灸および漢方を用いて、東洋医学での先進的な治療をおこなっている。
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