スイカも積める!? 一見地味なホンダ「NC750S DCT」はナナハン界のスーパーカブと呼ぶにふさわしい実力派マシンだった
バイクのニュース / 2020年10月2日 11時0分
ホンダ「NC750S(DCT)」は、クラッチ操作不要な大型スポーツモデルです。排気量750ccの直列2気筒エンジンを搭載し、優れた燃費性能と使い勝手の良い収納スペースを確保しています。その実力をツーリング試乗で探ってみました。
■シフト操作不要+大きなラゲッジスペース、身軽さと実用性は抜群
ホンダのナナハン(排気量750ccクラスのバイク)に「NC」というシリーズがあります。エンジンや車体構造は共通で、クロスオーバー(アドベンチャー)タイプの「NC750X」、ネイキッドタイプの「NC750S」、スクータールックの「インテグラ」がラインナップし、どのタイプにもマニュアルミッションに加えて、「DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)」(※クラッチ操作が不要なセミオートマチック)仕様が用意されています。
今回はDCT仕様の「NC750S」で神奈川県の三浦半島をツーリングし、その魅力や実力を探ってみました。
ホンダ「NC750S DCT」に乗ってその魅力を再発掘する筆者(野岸“ねぎ”泰之)
走り出してすぐに分かるのが、車体の軽さです。都内など混雑、渋滞する道路で大型バイクを走らせるのは、機種によっては面倒に感じることもあります。ところが「NC750S」はナナハンなのにスリムで軽く、足つきも悪くないので全く気負うことなく乗れてしまいます。
気軽さに大きく貢献しているのが「DCT」です。ニュートラルからD(ドライブ)モードにスイッチを入れると、あとは速度に応じてバイクが勝手に、最適なギアにチェンジしてくれます。信号で止まっても、自動的に1速で待機してくれるので、アクセルをひねるだけで再発進できます。
首都高速から「横浜横須賀道路」を走り、三浦半島の先端部へ向かいます。高速道路でのNC750Sの印象は……「なかなかやるじゃん!」というもの。
当然ですが、排気量1000cc以上のバイクに比べたらパワー自体はそれほどでもありません。しかし80から100km/hくらいの速度域では、DCTにまかせっきりでも十分に余裕のある走りで、追い越し加速などで「今すぐパワーが欲しい」という時には、左手にあるパドルシフトを操作すれば好きなタイミングでシフトダウン(やシフトアップも)できるので、不満は全くありません。
ちなみに後日、別の高速道路で最高速度が120km/hに引き上げられた区間も走ってみましたが、十分に余裕をもって巡航できるパワーを持っている、と確認できました。
高速道路での100km/h巡航は楽勝の排気量。むしろ実力はそれ以上
横浜横須賀道路を「佐原IC」で下り、海沿いのR134へとハンドルを向けます。このあたりは砂浜のすぐ脇を道が通っていてとても気持ちが良いのですが、それだけに休日や観光シーズンは渋滞気味になります。そんな時でもDCTなら、左手の頻繁なクラッチ操作から解放されているので、とにかく楽です。そうすると、渋滞区間を早く抜けたくてつい「車の脇をすり抜けて……」と考えるよりも「ま、いいか」とのんびり構える気になるから不思議です。
「NC」シリーズでは、ハーフカウルを装備したアドベンチャータイプの「NC750X」がダントツ人気で、ネイキッドタイプの「NC750S」は教習車のベース車輌になるなど、スタンダードではあるものの、地味であまり脚光を浴びることのないキャラクターです。でも今回は「NC750Sで良かった~」と思えるシーンがありました。
三浦半島の、とくに先端に近いエリアは、県道だけを走っていると気になりませんが、それ以外の道は結構細いのです。
バイクだと「ちょっと景色のいい場所を探してみよう」とか「一面野菜畑の中で写真が撮れないかな?」なんて具合に、ふらりと細めの脇道に入りたくなることが多いのですが、走っているうちにUターンもままならないような場所や未舗装路に出くわすこともあります。
そんなシーンでは、大きなカウルを装備したアドベンチャータイプの「NC750X」だと躊躇してしまいますが、スリムで軽い「NC750S」だと「行ってみようかな」という気にさせてくれるのです。そして実際に、畑や漁港近くの細い道でも、取り回しの良さで難なくクリア、という場面が多くありました。
道路沿いにある直売所を見ていたら、バイクなのにどうしてもスイカを買って帰りたくなって思わず停車
ちょっと道端やお店の前に停める、なんて場面でも、スリムな車体は邪魔にならず、威圧感もありません。その意味では、路地裏探索みたいなツーリングが好きな人にもオススメできるマシンだと言えます。
派手さはないけど身軽でトコトコとどこでも入って行けて、しかも実用性があって頼りになるマシン……何かに似ているな、と思ったら、ホンダが世界に誇るミリオンセラー「スーパーカブ」が思い浮かびました。
そう、「NC750S」はナナハン界のスーパーカブと呼ぶにふさわしい実力を秘めたマシンなのかもしれないのです。
さらに、スーパーカブにもない大きな魅力を持っていました。それはガソリンタンクに見える部分が、じつはヘルメットも入るほどの容量を確保したラゲッジスペースになっている、という点です(NC750Xも同様)。
三浦半島には野菜や果物の直売所があちこちにありますが、訪れた時はまだスイカのシーズンでした。普通のバイクはもちろん、スーパーカブでも大きな球体の果物を積んで帰るのは至難のワザです。ところが「NC750S」なら大きめのスイカもスッポリと入るスペースがあるため、あっさり積むことができたのです。こんなバイク、他になかなかないですよね。
街乗りから高速まで楽にスイスイと走れて、大きなラゲッジスペースに加え、グリップヒーターやETC2.0車載器まで標準装備している「NC750S」は、腕利きの職人のような渋い魅力を持つ、隠れた実力派だと感じました。
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